英雄伝説のある国を出て新しく人生始めようと思います。

@yunamikyo

第1話「記念日」

多種心性人者・妖怪と人間や、宇宙人と妖怪のハーフ、人間と人間の間から誕生した多くの赤ちゃん、子供や大人のことを表記する言葉。元は世間に受け入れられず避けられていた存在。

「妖怪や宇宙人は恐ろしいもの」、悪いイメージが定着していく中で国中でデモが起こり、多くの方が犠牲となった。

 僕の父さんと母さんが大学生だった頃、人種差別撲滅運動の過激化が社会問題となって以降、争いが起きて多くの方が亡くなった。

今から二十年も前に遡るけどね。その時僕は母さんのお腹の中にいて、守られていたんだ。父さんはデモに参加するため早朝に出かけていく。

 父さんは海外から移住して来た動物の妖怪・「バケダヌキ」皆からは「タヌキさん」と呼ばれ慕われていた。幻を見せる能力や人に化ける能力を使いデモの最中、父さんは第三部隊まである隊を率いて大活躍したのだけど、能力を最大まで使い過ぎて意識を失い、帰らぬ人となった。

 多くの人が血を流し倒れていく現状の中、非難されながらも一人の男がマイクを持って現れた。

「俺は九尾の狐・人の涙を笑顔に変えるラッパー!欺かずにな」

 一瞬だった。

 その男が歌い出すと争う人は皆足を止め、声をひそめ、皆男に注目する。

 

 「花火之月香」さんが新たな国のリーダーになり、多種心性人者が世間に受け入れられるようになったのも二十年前のこの日である。

 

 2


「あたしたちもついに成人かぁ、早いねぇ~、時間が過ぎるのは」

 腰まで長く伸ばした髪を一つに束ねながら、「轟」は溜息をつく。

「早いね本当」

 成人式が終わり僕と轟は電車で町に帰るため駅に来ている。待ち時間がもう一時間あるので、他愛もない話をしていたところだ。

「でも、これでやっと自由になれたんだ、あたしは世界の美味しい食べ物を探しに放浪するよ、アンタも来る?」

「大きな舌をべろんと伸ばして、僕の頬を撫でる。轟曰く愛情表現らしい。「世界の旅かぁ、行きたいかも」

「えへっ、それじゃあ決まりね!」

・・・

 考える間も与えず轟は笑う、

デモや差別がない今、轟のような満面の笑みを浮かべる人が多くなったという。

「かしゃ」

僕は轟の姿を念写し、「記念日」とタイトルをつけた。

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