9 病室で
病室の中であれこれ考えていても仕方ない。まなつ、の正体が何であるにせよ、彼女に会えば、それははっきりするだろう。だとすれば、行動するしかない。ぼくは意を決し、病室を出ようとする。
そのとき――
「あの、入っても、いいかな?」
出入口代わりのアコーデオンカーテンの向こうから声がする。それは一時間ほど前に病院のエントランスで偶然出会った藤原早紀の声。
「ああ、構わないけど」
ぼくが答える。室外ではなく自分の病室で彼女と言葉を交えるのかと思うと緊張する。
「お邪魔します」
そう言い、カーテンの向こうから早紀の顔が覗く。
「……」
「さっきは悪かったよ。痛かったみたいだね。ごめん」
「……」
「なんか、ちょっと怖いことを思い出してさ」
「……」
「きみをどうこうしようなんて気持ちは全然なかったんだから」
「……」
「どうか気にしないで欲しい」
「……」
早紀は黙っている。黙って不安げにぼくを見つめるだけだ。その早紀の態度に、ぼくはなんだか苛立ちを感じる。心の奥の方から自然と悪意が浮かび上がってくるのがわかる。けれどもそれと同時に、ぼくは早紀を守らねばならないとも感じている。この早紀の沈黙は、もしかしたら仕組まれたものなのかもしれない。心の別の部分で、ぼくはそんなふうに考えている。すなわち早紀も誰かに――まなつ、にか?――操られており、ぼくに自分――早紀自身――を毀させるような電波を浴びせかけられているのかもしれない。
だとすれば、どうしたらいい? 早紀を闇の電波から解放するには、ぼくはどうしたら良いのだろうか?
けれども心配することはない。ぼくの身体はどうすればそれができるかを知っている。だから、ぼくは躊躇わず、早紀の身体を抱き寄せる。
「あっ……」
早紀が切なげに声を漏らす。
「菅谷くん、やめて、こんなところで」
けれどもぼくはそんな早紀の言葉を聞き入れず、さらに強く彼女を抱きしめる。身体は華奢だが、早紀のはっきりとした存在感がぼくの全身に伝わってくる。
「あ、はあん」
かすかな早紀の喘ぎ声が聞こえる。鼓動の高まりも感じる。
「大丈夫、ぼくがきみを守るから」
ぼくは早紀の胸の膨らみに手を伸ばす。
「んんん、だめよ」
ついで、ぼくは早紀のスカートをたくし上げ、彼女の下着の中に手を潜り込ませる。ヴィーナスの丘の下はすでに潤っている。それまでの彼女からは感じられなかったとろけるような甘い匂いが発散されている。ぼくの手はゆっくりゆっくりと愛撫を続ける。もう一方の手で下着を下ろす。
「や、やだ……」
口ではそう呟いているが、早紀の身体は正反対の動きを見せる。ぼくのシンボルは、はちきれんばかりに屹立している。ぼくは下着を脱ぎ捨て、優しく早紀をベッドに寝かせ、そこで彼女をくるりと剥いて全裸にする。早紀の身体の敏感な部分に舌を這わせる。
「ああああ……」
早紀が身を捩り、反応する。瑞々しい肌は弾力性に富んでいる。そうやって彼女の身体の表面を心行くまで味わってから、ぼくは彼女自身に舌を伸ばす。
「あっ、はあっ……」
天国にも昇るような匂いを発散させ、愛液がトロリと溢れ出す。ぼくはそろそろ頃合だろうと猛り切ったシンボルの先端で早紀の秘所を突付き、周囲を丁寧にこねくりまわす。
「ああっ、ああっ……」
早紀の様子を見計らい、しばらくしてから、
「そろそろ、いいかい?」
と問いかける。
「あん、うん。でも、ゆっくりとね、そうおっと……」
早紀の応えに首肯きながら、ぼくがシンボルの先端を彼女自身に宛がい、最初は言われた通りにゆっくりと、ついで一気にそれを突き刺す!
「あぐっ、ああっわわっああっ……」
暴れ牛のようなぼくのシンボルが柔らかな早紀の肢体の中に埋まってゆく。ヌルヌルヌルと、やがてぼくのモノが完全に早紀の秘所を埋め尽くす。
「あああああ……」
ぼくは今、柔らかく、暖かく、きつい、彼女の秘所に包まれている。
「ああ、入って……、入っているのね?」
「うん、奥までしっかりとだ!」
ぼくは大きく弧を描くように腰を動かし、早紀の天女の舞の手助けをする。彼女の肢体がなまめかしく動く。早紀の内部の突起が固く柔らかくぼくを擽り、ぼくのシンボルに快感を与える。横になり、後ろになり、裏になり、また表になり、めくるめく快楽が二人を襲う。
やがて――
「ああ、ダメ、ダメ! おかしくなっちゃう……」
早紀が天国に昇りはじめる。ぼくにも限界が近づいている。
「いくよ!」
「ええ、一緒に……」
ぼくの腰の動きが激しくなる。早紀の腰の動きも激しくなる。快感の電流が弾けるような勢いで身体の奥底から湧き上がり五感を満たし、すべての罪から自由になり……。
そして――
「早紀、行くよ!」
「あああああ、こわれちゃう!」
早紀の言葉と同時に、ぼくの脊椎をめくるめく快感が通り過ぎる。
やがて――
「あああ、わたしの中が……。あああああ……。熱い……」
ぼくの放出した白濁液に満たされた早紀が喘ぎ声でそう叫んでいる。
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