パーティータイム2

「なんで黙ったの?」


「お、お礼なんて気にしなくていいですよ!父も食べて貰えたら助かるとおっしゃってましたし」


「そう?でも毎回貰うのも悪いし」


「ユイもそう言ってるんだし、シオンは気にしなくてもいいんじゃない?それに、ユイのお父さんも忙しいのはシオンも知ってるでしょ」


確かに、ユイのお父さんは、有名企業の社長であり、それは知らない人がいないくらいの規模だ。


愛娘が探索者というのもあり、積極的に探索者を支援しているため、探索者達からも一目置かれた会社だ。


そんな社長さんのとこに急にお邪魔しても伝えれるものも伝えれない……。



「気にすんなシオン。それよりデザートはないのか?」


「ああ、あるよ。ちょっと待ってね」



なんかはぐらかされた気もするけど、みんなが気にしなくていいって言うなら、言及は出来ないな。




この時の僕は知らなかった。



持ってくる野菜や肉は、ダンジョンから産まれた食材で、ダンジョン産の野菜や肉はどれも新鮮で美味しく、高級店でしか取り扱いがされていない貴重なものであること、しかもダンジョン産の食材を食すことでも強くなることに……。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「そういえば、シオンのYouTubeの調子はどうだい?」


食後のデザートとして作ったフルーツポンチを食べながら、ナツが聞いてきた。


「ありがたいことに昨日登録者が1000人を超えたんだ」


「少なっ!」


「てい!」


「いてっ!何すんだレオナ!」


「私たちと一緒にしない!シオンはシオンなりに頑張ってるのよ!」


「ううっ、すまんなシオン」


「いいよ。レオナが言った通り、ボチボチやってくつもりだから」


「タケルは次回のシオンの料理禁止にしようかな」


「そりゃないぜナツ!!」


「そうだ、なにか1曲弾いていただけませんか?久しぶりに生で演奏をお聞きしたいです!」


「お、いいわね。動画投稿だけだと物足りないのよね」



「わかったよ。ダンジョン攻略も祝って、なにか弾くよ。ちょっと準備するから待ってて」



みんなに了解をもらい、僕は演奏の準備を行う。


実は僕は、YouTubeで動画投稿を行っている。

中学に入学してから楽器を演奏することが趣味となって、高校に入学して演奏する様子を動画投稿するようになった。


ギターに始まり、今ではピアノや管楽器も弾いたり吹いたりすることができるようになった。


意外と4人には好評で、自信が持てたこともあって動画投稿するはこびとなった。



今は登録者1000人だけど、すごく満足してる。



「今日はピアノを弾くよ。何弾く?」


「ゆったり寝れる曲がいいな」


「ええ?楽しい曲が良くない?」


「テンションが跳ね上がる曲だな」


「私はシオンさんの演奏なら何でも……」


「じゃあダンジョン攻略して疲れてると思うから、寝れる曲だね」


リクエストは大体気分で選んでいる。


動画投稿した時のコメント欄もそうだけど、「『〇〇』を弾いてください!」


じゃなくて、大雑把にリクエストしてくれるから、僕も助かっている。



ゆったりとしたテンポで僕は演奏を始める。



伴奏はゆったりと、メロディも短く切るような音じゃなくて、長めの四分音符とかを中心に……



演奏を初めて5分。


タケルを始め、他の3人もウトウトと眠り始めた。






幸せそうに眠る4人を見ているこの時間が、僕の1番好きな瞬間だった。



「【白夜】でシオンのアカウントを宣伝しようか?結構登録者も増えると思うけど?」


眠ってるみんなに掛け布団をかぶせ、食器を片付けながら、僕は前にナツに言われたことを思い出す。



【白夜】のYouTubeアカウント、Twitterアカウント合わせて500万人の登録者がいる。


確かに【白夜】として僕のアカウントを宣伝されると、登録者も増えるのは間違いないと思う。


でも、無理だ。

今でも僕は、【白夜】のメンバーとは親友であって、リーダーではないと思っている。


多分視聴者さんも、いきなり出てきた強そうに見えない高校生が


「この人がリーダーなんです!普段はダンジョン探索ではなく、YouTubeの動画投稿してます!」


っていきなり現れたら混乱するだろう。


僕だって多分混乱するわ。


せめて僕だけの力でアカウントを有名にして、晴れて世界に認められるようになったら……



その時は僕が【白夜】のリーダーを名乗っても…………いや、無理か。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る