パーティータイム
さっそく届いたものを使って、料理を作った。
肉はそのまま使うんじゃなくて、トンカツみたいに、衣をつけて揚げたり、1口大にして唐揚げにしたり、野菜はスティック状やちょっと煮て煮物風にしたり……、と、せっせと料理を作っていった。
そうこうしているうちに、リビングには、4人がいた。
「おーっす!来たぞ!!」
「いいにおーい!!」
「お邪魔します」
「僕も手伝うよシオン!」
朝にニュースに出ていた【白夜】の4人だ。
「やあみんなおかえり。料理も丁度出来たよ。ご飯にしよう!」
みんなから一人暮らしを勧められた最大の理由が、これだ。
【白夜】の名前は最早全世界に知られている。
そのため、4人の実家は報道陣とかファンが押しかける事態になってしまっている。
今は随分落ち着いてる方だけど、そうなった場合、気軽に僕の家にも来れなくなった。
一人暮らしをする前は、よく僕の実家に集まっていたけど、高校生になって、更に【白夜】の名前が広がると、見ず知らずの人まで【白夜】のメンバーを見ると、こっそりついて行ったりする人もいるみたいだ。
特に現在は、リーダーである僕のことを探ろうとしてる人もいるみたいで、1人でも実家に行くなら、直ぐに拡散され、迷惑がかかる。
それを防止するために、僕や4人で両親に頼んで了承してもらった。
レオナの転移魔法もあって、4人を移動させることは容易だから、こうやって何時でもここに来ることが出来るという訳だ。
料理を食べにみんなで集まるのは少なくても、集まること自体はほぼ毎日のように会ってる。
でも家賃は出そうと、バイトを始めようと思ったけど、
「金は溜まっていく一方だから」
とのことで、ここの家賃は出してもらっている。
ダンジョンの中に存在する未知なるものは高値で売れる。
特にレベルの高いダンジョンに潜れば潜るほど、価値も高くなる。
普段からダンジョンに潜っているみんなにとって、貯金額はとんでもないことになっている。
さらに、配信のスーパーチャットで得られる収入も凄いことになってるみたいで、家賃ぐらいなら全然問題ないとのことだ。
ここまでやってもらうと、流石に申し訳ないから、せめてみんなのやすらぎの場所になればいいなと思って、料理を習得した。
「また料理の腕が上がったかい?」
ナツがキッチンまで来てくれた。
「日々練習してるよ。あっ、できた料理は置いてるから運ぶの手伝ってくれない?」
「もちろんさ。僕らの楽しみだよ」
「これくらいしか出来ないからね」
「いいや、誰にもできることじゃないよ。流石リーダーだね」
「うーん……」
みんな僕をリーダーって言ってくれるけど、いつも思うけど、僕は親友であって、パーティーのリーダーじゃないと思う。
モヤモヤした気持ちになりつつ、最後の料理をみんなのいるリビングまで運んで行った。
「お疲れ様さまみんな!」
「久しぶりだな!シオン!」
「久しぶり!って1週間ぶりじゃないか!」
「ダンジョンに居たら時間感覚おかしくなるわよ」
「あはは、たしかに。シオンさんの料理が恋しくなりますよ」
「確かにだな!シオンの料理が食べたくて攻略を終わらせて来たぜ!」
「えっ、それは流石に嘘だよね」
「「「「いや、ほんとだけど?」」」」
えぇっ……。
「とりあえず冷めないうちに食べようか」
「そうだね。みんなコップは持った?」
「飲み物は注いでおいたぜ!」
「タケルくんは1本飲んでしまってたじゃないですか!」
「我慢できなくってよう……」
「とりあえず乾杯しよう。シオン、よろしく」
「え、えっと、【白夜】のレベル6ダンジョン攻略を祝って……乾杯!」
「「「「かんぱーーーーい!!!」」」」
食事が始まった。
「タケルなんか真っ先にモンスターに突っ込んでいくのよ!」
「はぁ?レオナが魔法をぶっぱなすから俺の出番がほとんどないんだろうが!自重しろや!」
「あんたが、怪我したら誰がモンスターの攻撃を引き受けないといけないのよ!」
「2人ともどうどう」
会話の内容はダンジョン攻略に関わることが多い。
配信はしているものの、配信中はナツが仕切っていて、モンスターと戦いながら、コメントへの返答を行っているため、あまり喋ることが出来ないらしい。
らしいというのは、配信しているところを僕は見たことがないからだ。
見たことない……じゃなくて、見れない。
みんなが強いことは知っているけど、モンスターの攻撃で怪我をする姿を見たくないからだ。
「相変わらずみんなは強いね」
「いやいや、僕らがこうやってダンジョン攻略できるのはシオンおかげでもあるんだよ」
「絶対そんなことないよね。リーダーなんてニュースで言ってたけど、リーダーらしいこと一つもやってなくない?」
「は?」
「え?」
「ん?」
「?」
4人とも驚いている。
えっ、なんで?
「確かにシオンははっきりいって弱いわ。運動オンチはいつもの事だし」
「うんうん。鬼ごっこはいつも狙われてたもんなぁ」
「でもねシオン。あなたはサポートに特化し過ぎてるのよ」
「サポートなんて1回もやったことないけど?」
「こうやっていつも料理を作ってくれるじゃないか!」
「いや、これは皆んな肉とか野菜とか持ってきてくれるし、家賃も払ってくれるからそのお礼だよ?」
そう言うと、レオナとナツは頭を抑える。
「うーん、そう来たか……」
「まあ、今はそれでいいんじゃない?シオンの力は内緒にするって決めてるわけだし」
「僕の力?」
「いや、こっちの話。あんたは気にしないでいいわ。早く食べないとタケルがさっきからバクバク食べてるみたいだし」
「すみません、止めるにも早すぎて……」
「いやぁ、ガチでうめぇわ。俺の箸は誰にも止められねぇ」
「とりゃあ!!」
「ぎゃあああ!!頭が割れる!!」
タケルの勢いをレオナのチョップが止めた。
何枚か焼いたステーキの6割くらいをタケルが平らげていた。
早すぎる……。
「ちゃんとシオンの分は残してるぞ」
「私たちの分も残しなさいよ」
「ユイ、この天ぷらめちゃくちゃ美味しいね」
「分かります!この大葉の天ぷらはお気に入りです」
自由すぎるいつもの会話に、ふと疑問に思ったことがある。
「いつもみんなが置いてくれるこの野菜とか肉とかって、ユイのお家から分けてくれるって話だけど、いつも4人がお礼を言ってるって言ってたし、今度僕もお礼に行きたいんだけど」
「「「「…………」」」」
4人とも黙った。
え?
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