【ナツ視点】僕らのリーダーは

ナツ視点


『5人で世界に名を轟かせる探索者になる!』



幼い頃に、シオンが言った夢だ。



キラキラとした目で語ったその夢に、僕はとても嬉しかった。


シオンはいつも僕や3人のことも一緒に考えてくれている。


決して自分一人で行動することが無かった。


そんな彼に僕や他の3人も付いていくことを決めた。



でも、ダンジョンに潜ってからのシオンは日に日に表情が暗くなっていった。


そんなある日。


「どうして僕は、スライムにも勝てないんだ!!」



タケルやユイ、レオナに隠れるようにトイレで1人で泣くシオンの姿を偶然目にしてしまった。



拳をガンガンと壁に叩きつけ、ボロボロと涙をこぼす姿に、僕は心が締め付けられた。


僕らはそれぞれ才能が開花したようで、レベル1のダンジョンは余裕で攻略することが出来るまでに至った。


でもシオンは違った。



来る日も来る日もモンスターに挑んでいた。



放課後、毎日のようにレベル1ダンジョンに潜る姿を僕は見ている。


諦めずに何度も何度も挑んでいった。




でも、無慈悲にも勝てたことは1度もない。





たしかにシオンには戦闘において才能は無い。


でも、シオンには僕らにない力があった。



それはダンジョンに潜らなくても僕らの力となっている。



そのことはシオンは気付いてないみたいだけど、他の3人は気づいてるみたいだ。



シオンには圧倒的なサポートとしての素質がある。


シオンの演奏には、僕らの力になっていった。



探索者としてはダンジョンに潜らなくていい。


最初は危険なダンジョンでシオンが怪我をして欲しくないためにそう提案しただけだったけど、シオンは演奏や料理に力を入れるようになった。


驚くことに、シオンの料理はとても上手く、それでいて疲れた体が一気に回復する。


さらに演奏を聞くと、曲調に応じて僕らの力も全く変わるようになった。



落ち着いた曲を演奏すると、たちまち眠くなるし、楽しい曲調の曲を聞くと、あっという間にモンスターを倒す。

もし、シオンの演奏をモンスターに流すとどうなるだろう……。


ダンジョン攻略せずとも、シオンは僕らに貢献していた。



だからこそ、シオンはパーティーになくてはならない存在だ。



勝手にパーティリーダーにシオンの名前を書いたけど、他のみんなも賛成してくれたため、シオンは僕らのリーダーになった。




今でもどうしてリーダーになったのか本人はわかっていないと思うけどね。

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