第12話 エヴァ2 

「うぅん〜 ここは。。。? ベヒーモス!」起き上がろうとするが、身体が重く 


軽い頭痛を感じ、額に手を当てる


「&^%$#@*&;%$#$!!」 


すぐ横に片膝をついた男が、聞いた事のない言語で話し掛けてくる


「アランは?ルイにブルートは? わかりますか?」霞のかかった頭を振り 状況を把握するために半身を起こす


「&%^#$???」不思議そうな顔をして 顔を覗き込んでくる若い男


どうやら、ブルートの転送魔法で言語の異なる異国に飛ばされたという事か。。。


この人の着ている服、東方の島国の民族衣装によく似ている 


行ったことはないが、仕事で行った港町に交易のために来ていた彼らを見かけた事がある


黒髪、黒目と我が国と共通している容姿に親しみを覚えた事を思い出す


「とりあえず、翻訳を常時発動!」魔力もほとんど回復しているようで抵抗なく発動する


「気が付かれましたか? どこか具合の悪い所は、ありませんか?」


「あ はいっ 大丈夫なようです。。。ここはどこですか?」


「三方ヶ原 浜松城の近くです」話し方も優しく 誠実そうな印象を受ける


「えっと 貴方が助けてくれたという事でしょうか?」


「いえ 私の主 山県昌景が戦場で倒れた あなたを見つけ、ここまで運んで来ました


 安心してください 戦は、もう収束しています」


「戦場。。。? 私の服や杖は??」見覚えの無い、白い着物を自分が着ていることに気が付く


「何も持っていませんでしたし。。。着物も。。。ここには、女手が無いもので私が」


「。。。。。。。。はっ。。。。。」どうやら下着を着けていないようだ 


「あの 大丈夫です 見ていません目をつぶって着せましたので!」


何が大丈夫なのか、まったくわからないが 自分より年が若そうな彼を責めるわけにもいかない


「いえ ありがとうございました」うつむき消え入りそうな声で礼を言う


「あの。。。ルイ殿という方は、お仲間ですね? 我が主と共に浜松城へと向かったようです」


「はい! ルイは無事なのですね? 良かった」


「はい 陰陽師と聞いております たいそうお強いとか」


「陰陽師? まぁ 強いのは強いのですが」この国の言語に魔術師という単語は無いようだ


「とにかく、我が主に貴方をお守りするように命じられております これよりお館様の本陣と合流します


 馬を用意しますので少々お待ちください」




『とりあえず、状況を整理しなくては。。。


 ベヒーモスとの戦いの最中、ブルートの転送で飛ばされた


 念話でブルートに呼びかけるが、応答はなし


 ルイは、どうやら無事だと。。。アランは?


 どうやら ここは戦場で裸で放り出されて。。。山県昌景という方に助けられ今に至ると。。。


 わかっていることは、これだけ 心細いはね


 まずは、ルイに会う事が先決ね ルイの空間収納に着替えも、予備の杖も有るでしょうし』




馬に揺られること数十分 目的の本陣が見えてくる 兵や従者が慌ただしく出入りをし


戦のそれとは違った、不穏な空気に包まれた気配を感じる


手綱を引いてくれていた若い従者もここで待つように言い残し 本陣の中へと消えて行った


『こんな所にか弱い女の子を、置いていくのね ちょっと怖いんですけど』


エヴァは視覚、聴覚を強化して状況の把握に努める


本陣の立派な軍幕の裏手に簡素な幕で仕切られた場所に聴覚を集中させる


「うぅぅぅ。。。」 「痛い 痛いよ~」 「戦は終わったぞ もうすぐ帰れる! しっかりしろ!」


「オラの右腕。。。誰か血を止めてくれ」 「母ちゃん〜」


負傷者が集められているようだ この国の医療技術への興味と手伝える事はあるかもと


馬から降り、簡素な幕の中を覗く 50人以上の負傷者が茣蓙ゴザに横たえられている


清潔とは思えない布で傷口を拭く者 薬草のような物を患部に当てるだけの治療


『ここには、回復魔法を使える人は居ないの? あの人 死んじゃうよ しょうがない!』


「あの 手伝えると思うのですが いいですか?」水桶を持ち、忙しそうに駆け回る少年に声を掛ける


「えっと? 助かりますけど その綺麗な着物が汚れてしまいますよ?」


「構いません では失礼します」先ほど目を付けていた、もっとも傷の深そうな兵士に駆け寄る


太腿の肉が抉れ 間もなく失血死するであろう 杖が無いので 傷口に右手を翳す


すると傷口が塞がり始め 苦痛で歪んでいた兵士の表情が和らぐ 失った血を補うため


兵士の胸に握った拳を当て 心臓に直接 血を送り込むイメージをすると正常な鼓動を刻みだす


「これで、とりあえずは大丈夫! しばらくすると目を覚ますと思う」


少年は、きれいに塞がった傷口と 生気の戻った兵士の顔を見て 目を丸くして呆けている


「重症者は、まだ居るのよ」少年の額を軽くつつき 正気に戻すと


少年は、水桶をその場に置き 走り出す 「先生! 永田徳本先生!!」




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