第9話 殲滅

日暮れまで、あとわずか 薄闇に包まれた浜松城城下を


風林火山の軍旗を襷に掛けたルイが疾走る


片手に敵より奪った十文字槍を握り


大手門までの坂道を駆け上がる




物見櫓の兵が半鐘を鳴らす


大手門に沿って、積まれた土塁の上から弓兵が弓を絞る


ルイは、右手だけに筋力強化を掛け 


速度を落とすことなく 暇を見て集めておいた小石を親指で弾いて飛ばす “指弾”と呼ばれる技である


筋力強化と風魔法を纏わせることにより


射程距離100メートル以上 風の影響も受けない


硬化魔法を掛けていない相手には、容易く致命傷を与えることが出来る 魔力をほとんど消費しない手軽な技である


空間収納には500を超える小石が収納されている


手のひらの小石が無くなると、念じることで空間収納から手のひらに小石が補充される それを親指で弾いて飛ばす 


土塁の上の弓兵は、その矢を射ることなく 眉間を穿たれて


絶命していく 機関銃のような連射が可能で、風魔法により


まさに針の穴を通す精密さを誇る “指弾“


打ち鳴らされていた鐘の音が止まる


櫓の上の兵も眉間に穴を開け 櫓から落下していく


大手門から発射音と煙が上がる 鉄砲による一斉射撃であるが


ルイは、足から滑り込むように大手門を潜る


竹で組んだ馬防柵の後ろに槍を持った数十名の兵士


その後方に置き盾が並び、鉄砲隊が、盾に身を隠し慌てて次弾を装填している


ルイが、馬防柵の上を軽々と飛び 空中で身を捻りながら 槍を払う


ある者は頭頂を、またある者は顔面を、延髄を、首を切られて倒れる 


着地と同時に身を低くして居並ぶ槍兵の腰から下を薙ぎ払う 


爆速の将棋倒しのように、居並ぶ槍兵の上半身が折り重なり倒れていく


槍の石突をブレーキにして立ち上がりざまに駆ける 左手に槍を持ち替え 突く!突く!突く!突く! 


右手の親指で小石を弾く!弾く!弾く!弾く! 一瞬にして静まり返る大手門


置き盾の後ろで身を低くしていた鉄砲隊が逃げようと腰を浮かすより早く


地を蹴り 美しい弧を描きながら 音も無く着地する 


置き盾とルイに挟まれる鉄砲隊 装備している短剣を抜く


「なっ なっ なんなんだ貴様は!?」 鉄砲隊隊長が叫ぶ


「俺か? どうやら俺は、陰陽師らしい すまないが葬らせてもらう」


その場を動かずに指弾を飛ばす 隊長以外30人以上いた隊員が崩れ落ちる


「あんた偉いんだろ? 一人だけ兜を被ってるものな あんた等の殿は、どこに居る?」


「教えると思うか? 舐めるな!!」短剣を構え、駆け出す


「そうか では、あんたの首級だけ貰っておく」言い終わるより早く 槍の穂先に乗った隊長の首級


高台に建つニの丸を見上げる 「順番に潰すしか無いか。。。」




丘を駆け上り、塀を飛び越え 拓けた庭に集結していた100名を超える兵に突っ込んで行く


まさに疾風怒濤 槍を適当に振り回し すれ違いざまに切伏せて行く


二の丸から飛び出す兵士を指弾で片付け 建物内に足を踏み入れる


“気配探知“を使い 人の居る部屋を開けていくが 女子供に武器を帯びていない老人のみである


「家康とやらは、30代と聞いているからな、ここには居ないようだ」


10分後 同じように本丸を制圧し 天守曲輪の門を飛び越える


「ここだな 警備の兵の練度が高い」薄く笑う


着地と同時に縮地術で密集した敵兵の中に切り込む


ルイが元いた場所に飛来する弓と鉄砲の弾 


風魔法“かまいたち”ルイを中心に風の刃が渦を巻き 敵兵を切り刻んでいく


山県と別れてから20分 目的の人物を追い詰めたことを確信する


「さて、片付けるか。。。」




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