第8話 浜松城城下
「馬場殿、大手門が開け放たれており門番も居りませぬな」
「大篝火まで焚かれておるぞ。。。」
浜松城城下に集う武田軍は1000人を超えているが、誰もが目の前の敵城の異様さに眉を顰めている
「罠だろ?。。。」 「いや気が触れただけでは?。。。」 「突撃じゃ!」 様々な憶測が飛び交う
「父上、馬場様、 徳川家家臣、大久保康高らが三方ヶ原の残存兵を集めて、こちらに進軍しているとの事
その数およそ800 あと1時間ほどで到着するでしょう」山県昌景の子 昌満が斥候をまとめている
「昌満 お館様は、あとどのくらいで到着される?」
「本陣ですが、出立迄もう暫くかかる見込みです」
「そうか、城内にどのくらいの戦力が残っているかじゃな」
「事前の調べでは、500にも満たないはずですが。。。大手門まで開け放たれているのが、腑に落ちません」
「後ろから迫る大久保の軍と挟撃されては、面倒だな 山県よ、ここは退くか?」
「馬場殿、もし本当に城内が500であれば 家康の首を取る千載一遇の好機」
「ここに今居るだけで、我が方は1500だぞ これを見て500やそこらで門を開けておくか?」
「山県様 ちょっといいか?」ルイの声が山県の耳元で囁くように聞こえる
しかしルイは、山県に背を向けて6メートルほど離れた場所で立っている
「風の流れを操作して、山県様だけに聞こえるように話している」こちらに振り向きニタッっと笑う
山県も軽く頷き、話の続きを促す
「城内は、確かに兵士は500人ほどだな 北から来る800ほどは、ここに居るみんなで迎撃して
俺は城内の兵士を一掃してくるが いいか?」
山県は、一瞬呆けた顔をしてルイに近づいてくる
「何を言っている?? なぜ500だと断言できる? いや500だとしても一人で何ができる??」
「あそこに飛んでいるトンビが見えるか? さっきからあのトンビを操って視界も共有してる
まぁ 30分もあれば殲滅できるぞ」
「はぁ? 何を馬鹿なことを。。。陰陽師ってのは、そんな事も出来るのか??」
「女子供が居なければ、もっと早く終わるんだけどな。。。魔法で」
「いや それを信じろと?」口では、そう言いながら 目の前のルイなら本当に出来そうな気がしている
「元々 ここに居ない俺が一人で突っ込んで、勝手に死んでも 誰にも迷惑はかけないだろ?
死なないけどな こんなところで死んだらエヴァに殺される」楽しそうに笑うルイ
「死んでも、また殺されるのか」山県もつられて笑う
「ただ一つだけ約束してくれ 山県様は絶対に前線に出ないと、弓の届かないところで指揮に徹してくれ
まぁ 奴らが到着する前に戻るつもりだが」
「では、ルイも一つ約束してくれ 危なくなったら すぐに退くと」
この国に来て、戦場を見て、この国の兵士の実力は見極めていた。
魔法がない、武器も防具も魔力が乗っていない 命を懸けた戦いで魔法があるのなら使わない理由がない
つまりこの国には、魔法が無いということになる
大気中には、ルイがいた国より濃厚な魔素が充満しているのに。。。
使う者が居ないから 魔素が濃いのか? 通常より魔力の回復が早いのは確かである
難しいことはわからないが。。。この国の兵士や武器ではルイに傷一つ負わせる事は出来ないだろうと
ルイの戦士としての本能で理解していた
『一応 鉄砲もあるからな 硬化と加速を掛け直しておくか』
「ルイよ 馬は要るか?」
「いや 必要ない 走ったほうが早い」
「驚くのにも疲れた 無事に戻ってこいよ」
「すまないが、みんなの気を逸らしておいてくれると助かる その隙に抜け出す」
山県は、馬場のもとに戻り一言二言声を掛け 号令を出す
「よいか ここで大久保を迎え撃つ!! 陣を張れ!!!」
みんなの視線が、未だ見えぬ大久保の来る方向に向いているすきに
ルイは一人 浜松城へと向かう
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます