第2話 先生?


先生?


ああ、こう手伝っていてもらっていて何ですがね


実はその呼ばれ方


あまりすかぬのですよ



何故?



本?



ああ、昔にね。


その頃も先生と呼ばせんかったのです



何せ若かったもので、学校の先生みたいな堅物と一緒にされるのが嫌だったのが一つ。



二つめは、プレッシャーにはほとほと弱い人間でしたから。



それに人類皆、平等。



優劣が大嫌いな世の逸れ者でしたから。



変わっている?



そう言ふ貴方も

こうして一緒に


訳もわからぬ物書きの

頭から吹っ飛んだネジを拾っている




大概はねぇ


変わっている奴って言ふのは


僕から見たら


良い奴しかおらんのですよ




ああ、あっちの月が……綺麗ですねぇ



えっ?どうされました?



ああ、夏目漱石先生の……



これは失礼致しました。



物書きが言ふと、浮気心にしか聞こえませんな。





貴方は見えぬ人ですが




例え月から見えようものならば




隠してしまいたくなる程




美しいその御心




…………



やはり先生だって?



いいや、本物は現役を維持する為に


誰よりもどんな物でも書き



誰よりも大人しく苦渋をのみ



今を見据えるものです



それが真に先生と呼ばれるに相応しい



僕が思いますにねぇ


どの業界におきましても、



言われたいのはまだ甘ったれなんですよ



真に周りから望まれた先生ってのは



その望まれた責務を全うする力があるものです



だから僕は如何様にもならんのです


特に先生には



責任感もなく




月を語るなんざ…………ねぇ。


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