第4話 本の虫、羽化す。
伝説の魔王と相対する、戦闘力スライム以下の私と宇宙人。
どう考えてもおかしいよこの状況!夢なら覚めて‼︎
「ほう…貴様らが私の求める強者だというのか…。一人は女、片方は初めて見るが明らかなザコモンスター…。貴様ら、我を魔王と知ってなおハッタリを突き通すつもりか?どこまで私を愚弄すれば気が済むのだ…!!!」
「ハッタリかどうか試してみるか?」
「ちょっとてへぺろ君!挑発しちゃダメ!もう早く逃げよう!最初の予定とはだいぶ違ったから、もうここに用はないわ!違うダンジョンに…」
「嬉しい誤算だ。初心者ダンジョンなんて生温いと思ってたんだ。」
あ…呆れた。そんなに商品に自信があるのかもしれないけど、戦うのは引き篭もりの私だし、相手は勇者をも一撃で葬った魔王なんだよ⁉︎
「『魔王を倒した武器』!いやぁ〜良い宣伝文句になるな!」
「そんな呑気なこと言ってる場合か!早く逃げ…」
「また逃げるのか?」
「っ…」
「現実から逃げて自分の世界に閉じこもってたお前が、今やっと自分の意志で外へ出たんだ。そのまま前だけ見てりゃいい!」
「…!」
「それに引き篭もりなのは相手も同じだろ?お前はまだ本物の世界を知りたがってたが、アイツは世界に勝手に絶望して、ただ死ぬのを待ってるだけの廃人だ。胸を張れ、お前の方が強い。」
背中を押された気がした。あーもうどうでもいい!!やってやるぞ!!!!!
「妙だな。」
魔王は何か解せないといった口振りで呟く。
「貴様らからは全く魔力を感じん。どんな弱い人間でも魔物でも、微弱なものを感じるはずだが…」
そっか、この世界で魔力は誰にでもあるもの、彼は私が魔法を使えないことを知らないんだ。
「あいつ何言ってんだ?」
てへぺろ君が聞いてきたので、私は小声で答えた。
「魔導士は体内魔力を感じ取ることができるの。そこで相手の居場所を特定したり、生存確認ができたりする…はっ!」
「リイレ…?」
「てへぺろ君!武器貸して。」
「やる気になったか!どんなのが欲しい?」
「中〜遠距離用の!」
てへぺろ君は大きな銃のような物を渡してきた。だいたいこの世界の銃と仕組みは同じようだが、驚くべきことに、軽い。質量からは想像できない軽さだった。私は二丁拳銃の構えをとる。
「銃は撃ったことあるか?」
「あるわけないでしょ!でも本で読んだことはある。仕組みと使い方はだいたいわかるわ!」
魔王に銃口を向ける。
「フム、スナイパーか。武器を介して光線状の魔力を撃つ魔導士がいるのを聞いたことがある。初手は貴様に譲ってやる。よく狙えよ。」
引き金を引く。
一閃。
銃声は無音、レーザーガンだ。
発射された光線は魔王のすぐ隣に逸れた。
「せっかくのチャンスを無駄にしたな。では私も攻撃開始だ。」
「それはどうかな。」
魔王の顔に光線がかする。私はまだ二発目を撃ってない。
「反射かっ…!」
「跳弾にはご注意を。」
ダダダダダダダダダ!!!!
壁や地面を何度も反射し魔王を襲う光線。しかし魔王は全て紙一重でかわす。すかさず連射を試みるが、魔王には当たらない。宇宙の技術を持ってしても、やはり魔王には通じないのか…。
「おい、何処を狙っている‼︎血迷ったか小娘!」
だがこれでいい。まだその時じゃない。彼を撃つのは最後だ。
やがて光線は全て消え、ダンジョンの中は闇に包まれた。
「どこだ小娘っ!くそっ魔力も感知できぬ!
はっ!貴様最初から狙いは我でなく…あの光る鉱石かっ!!だが貴様の眼も利かぬはずだ…!」
てへぺろ君から暗視スコープを借りててよかった。闇の中でも本当によく見える。
「魔王…覚悟…!」
闇を貫く一筋の光。それは魔王をも貫いた。その光線は体内でも反射を繰り返し、彼の体を執拗に蝕んだ。アイツ…私になんて恐ろしい武器を渡すのよ…。
体中から血を噴き出し倒れる魔王。ふと我に帰って腰が抜ける。夢を見ていたような感覚だった。まさか今まで私を社会の底辺に追いやった「無魔力」という個性が、ここにきて役に立つなんて…。私…本当に魔王を…。
「油断した。貴様をみくびっていた。なぜ魔力を感知できないかは分からんが…。」
い、生きてた⁉︎ゆっくりと体を起こす魔王。かなりダメージを受けているようだが、まだ決着はついていないようだ。
「非礼を詫びよう、強き者よ。私も本気で貴様を殺す。」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
大地が揺れる。立っていられないほどの地響きだ。
「我が最大出力の魔法をもって貴様の息の根を止めてやる。感謝するぞ。こんなに心躍る闘いは、我が数百年の人生において初めてだ!」
魔王の掌が光り、巨大な光球が出現した。
「すげぇエネルギーだ…。ここら一帯…いや大陸一つ吹き飛ばすつもりだぞ。」
「そんなっ…。」
「さらば…最初で最後の
魔王は私を見て微笑んだ。
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