第2話
小学校に上がったら、社会は一人でいる子供を作らないことに必死になった。
「では二人一組のペアになってください。」
「おともだち同士でグループになって下さい。」
「佐々木ちゃん一緒にやろ!」
「赤木も誘おうぜ」
「糸数もうペア組んでるわあと一人どうするー」
周りがどんどんペアを作っていって狼狽えているといつの間にか一人教室の隅に取り残されていた。
担任がうんざりしたような顔をする。
うちのクラスは31人だから5人グループを6つ作ると必ず一人余るのだけど普通の子だったらどこかしらのグループに誘われて6人グループが一つできてスムーズにグループ活動を始めることができるのだけど、残念ながらこのクラスでいつも余るのは私だ。
「佐藤さんと一緒に負ループ組んでくれる人ー」
気だるそうに担任が皆に向かって問う。
無論、誰も手をあげない。
「じゃあ、伊藤。お前のグループに入れたれ。」
「はぁーい」
露骨に嫌そうな間延びした返事が返ってくる。担任のたまたまそばにいたことでクラスの異分子を入れられて不服なんだろう。
申し訳ないなあ。と毎回思うのだけれど、どうしても口が開かない。ただ一言、「一緒にやろう」と言えばいいだけなのに声が出ない。すんでのところで止まってしまう。
どうして自分だけが皆が普通にできることができないんだろう。
一人でいることが苦しいわけではないけれど、社会は一人を許してくれないのだからそれに沿わないといけないのだけど、どうしてもできない。
どうにかしたくて、一度だけ勇気を振り絞って喋りかけたことがある。
「あ、ぅあの、いっしょ、にペア、組んでくれません、か」
泣きそう。
これぐらいのこともできない自分に辟易する。
「え、あ、あーうんいいよ。やろ。ね、みんなもさ、いいよね?」
「あー別にいいよ。」
あの時の皆の哀れむような笑みが忘れられない。
ここに私の居場所はないのだと悟ると同時にバカらしくなった。
初めから私を受け入れてくれる容器など存在しないのに。
突然地球に来訪した宇宙人を誰一人として受け入れてくれないのと同じように。
こんな状態を何年も続けていたら、発言することを躊躇するようになった。
何も発さなければ透明な壁越しに違う生物として見られることはない。
“どこのクラスにもいるような一人で端っこにいるクラスメイト”の称号で済む。
けれど、どんなに人間にそっくりな宇宙人になろうとしても、ボロは出てしまうものだ。
宇宙人の息の仕方 黎 @O10mchreto
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