心とろける炎となれ!デビル幼女ドエィム!
第17話 心とろける炎となれ!デビル幼女ドエィム!1
空は朝焼け、景色は霧深い山の大自然。
山越え森越え、今日も三人は旅をする。
黒髪さわやかなバカップルの彼氏の方、コイチロー。
くりくりの目と栗色の髪のバカップルの彼女の方、アイリ。
若草色の髪とピアスをしたヤンチャ系王国兵士、ツッコ。
バカップル二人の頭には、今日も今日とてアホ毛が揺れる。
防衛都市ツキガキレーで服を新調し、二人の服装は都会的だ。
ただしやっぱりペアルックである。
霧の風景を見渡しながら、アイリはくたびれた様子で尋ねた。
「ねーねーツッコくーんまだ次の街に着かないのー?
わたしもうドラゴン食べ飽きちゃったー」
「だから兵士十人がかりのドラゴンを食料感覚で倒すなっつーのに……
まあでも、国境を越えてだいぶ歩いたし、そろそろ見えてくるはずだぜ」
コイチローもツッコに顔を向けた。
「これから行く都市は、どんなところなんだい?」
「都市は……ってか国全体の話だけど、木と森を有効利用するのに
獣みたいにとがった耳が特徴なんだぜ」
「えーっファンタジーっぽーい! わたしたちの世界だと、物語でよく出てくる幻想的な特徴だよー!」
「幻想的なぁ、確かにアイラッビュ王国民の俺から見てもこのへんの文化は珍しい……お、見えてきた」
開けた場所、霧の向こうを、ツッコは指さした。
それは山かと見まがう、とんでもなく大きな一本の木。
見まがうというか、マジで隣の山と比べても同じくらいの大きさがある。一本の木が。
その広がる枝葉に、色とりどりの建物が
その様相は、さながらクリスマスツリーのようだった。
「
コイチローとアイリは、見上げて目をきらめかせた。
そして、都市内部。
門番のチェックを問題なく(愛の力で)通り抜けた三人は、大樹の中腹の足場に降り立った。
「うわぁ〜! すごいよすごいよコイチロー! きれいな景色ー!」
霧でかすんだひんやりとした空気。
地上二百メートル、雲の上を浮くゴンドラで街に入り、まずアイリが、そしてコイチローが感嘆の声を上げた。
「木の大きさが規格外だから枝も幹線道路みたいに太くて、建物も木造のようだけどカラフルに飾りつけられてて目に飽きないね。
縦方向にも街並みが伸びてるのもおもしろいし、何より一番の特色はこの水飴みたいにねばっこい雲か。
街全体を立体的にめぐってて、運河のような役目も果たしてるし、あっちには魚が泳いで……あっちは作物が植わってるみたいだよ。
木の枝も一部が根のような構造になって、雲から水を吸い上げてるみたいだ……」
「すげーよな? 大陸全体で見ても、ここの文化は独特だぜ」
横からツッコが口を挟んだ。
「木から一生降りなくても、この上だけで生活が成り立っちまうんだぜ。
まーだからミミ族は、昔はよそものに冷たい文化だったとも聞くんだけどな」
見渡すバカップルに、商売人が声をかけてきた。
「ボーッタクリクリクリ(笑い声)! 美人のねーちゃんイケメンのにーちゃんオミヤゲあるよボッタクリ!
メッチャスッキャネン来たらマストアイテム! 特産品のパラソルだよボッタクリ!」
「えーっコイチロー特産品だって!
買おうよ買おうよ! 一本買って相合傘しようよ!」
「うーんパラソルか……僕は正直、相合傘は気乗りしないんだよね」
「えっ? なんで? イヤなの?」
しょんぼりするアイリに、コイチローは手を取って、甘くささやいた。
「だって、相合傘をするには、傘をきみに近い方の手で持たないといけないだろう?
そうすると手がふさがって、アイリの美しい手を握れないじゃないか」
「コイチローっ♡♡♡ そうだよねっ相合傘より手をつなぐ方が大事だよねっ♡♡♡
どんなどしゃ降りでも手と手で触れ合ってれば心は晴れ晴れハレルヤだよ〜♡♡♡」
「二人で手をつないで、傘はそれぞれ反対側の手で持てばいいね。
というわけでパラソルふたつください」
「まいどありボッタクリ〜!」
「いや買うんかーい!!」
ツッコのツッコミをよそに、バカップルは鮮やかな模様のパラソルを開いてキャッキャした。
「ま、本人たちが納得してるならいいんだけどよぉ……ん?」
街並みに目をやったツッコ。
その先の建物の影、細い枝の道の先、何やら人が集まり、もめ事の気配がした。
――――――
・ラブバカ豆知識
メッチャスッキャネンの定番土産、パラソル。
これは街並みに慣れない観光客が木から落ちたとき、パラシュート代わりにするため。
失敗したというクレーム率はゼロパーセントだぞ!
(失敗したら死ぬので)
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