第2話 バカップル参上!1

 ――ここは異世界!

 混沌はびこる魔法の大地、アイシテルノサ大陸!

 今この大地に生きる人間は、未曾有の危機にさらされていた!



「自由恋愛など言語道断! このウーマシーカー様が世界を支配した暁には、すべての自由恋愛を禁ずるのじゃっ!」



 そう宣言したのは闇の侵略者、暗黒の帝王ウーマシーカー!

 この未曾有の危機の中、大陸一の大国・アイラッビュ王国の国王は、あるひとつの神託を受けた!


「というわけで、この国王より命ずる! 王国兵士ツッコよ!」


「は! 兵士ツッコ! ここに!」


 王の前に、王国兵士の正装をした青年がひざまずいた。

 若草色の髪の二十歳。若く活力あふれるが、ピアスをつけていたりどことなくヤンチャな雰囲気がある。


「ツッコよ! 神のお告げによれば、この窮地を救う異世界からの救世主が、国のはずれの村のマガリカドデパン村に現れるという!

 至急向かい、救世主を手助けし、世界を救う旅に出るのだ!」


「は! 国王直々の命令、全身全霊でまい進します!

 ところで王様、なぜこの指令をわたくしに任せてくれたのでしょう?」


「それは王国兵士の中で現在恋人も結婚相手もいなくて長旅に出してもよさそうなのがツッコしかいないからだ!!

 この機会に想い人でも見つけてこーい!!」


「ありがとうございまァァァす!!

 この兵士ツッコ・ミヤーク、お心遣いが染み入って涙がちょちょ切れそうですチクショオオーー!!」


 兵士ツッコはヤケクソに敬礼した。


 こうしてツッコは、まだ見ぬ救世主のもとへ向かうのだった。

 心に熱意と勇気と、ほんのちょっとの涙をいだいて。




   ◆




 丘を越え、昼前。お日様がぽかぽか。

 住宅まばらなのどかな村。

 救世主が現れるという地、マガリカドデパン村である。


 ツッコはそこに到着し、襟元をゆるめながら見渡した。


「さてと、救世主が現れるってのはこの村だよな。

 どんな人間が現れるのか分かんねーけど、きちんとサポートしねーとな……あっ、あれは!」


 村の様子を見回したツッコの前には!


「ワールモッノッノ(笑い声)! ここにウーマシーカー様の計画をジャマする救世主がいるのはお見通しだワルモノ!

 我ら『自由恋愛禁止軍団』が連行するワルモノ! 隠さず連れてくるがいいワルモノ!」


「だ、だまれソンチョ! そんなのはここにはいないソンチョ!

 ここにいるのは村人とパン屋とバカップルくらいソンチョ!」


「そんなはずはないワルモノ! ウソつくとひどい目にあわせるワルモノ!

 反抗するなら、代わりに自由恋愛禁止のさまたげになりそうな村一番の美男子を連れて行くワルモノー!」


「いやーっやめるソンチョ! 村一番の美男子であるワシを誘拐するなんてやめるソンチョー!」


 悪の横暴!

 村長が悪者に襲われている!


「いや開幕カオスが過ぎねーか!?」


 兵士ツッコはツッコんだ。


「って言ってる場合じゃねぇ、助けねーと! 村長さんがピンチだ!

 自由恋愛禁止軍団っていや、暗黒の帝王ウーマシーカーが率いる悪の軍団! 救世主の情報がもうヤツらにも知られてるのか!」


 ツッコが槍を構えて助けようとした、そのとき!


「バーッカップルプルプル(笑い声)! そこまでだ悪党よ!」


「あれはいったい!?」


 すぐそばの家の屋根の上。

 突如現れた二人組は!?


――――――


・ラブバカ豆知識


王様は女王様と恋愛結婚しており、今でもラブラブ。

国王としてスピーチする際、原稿と間違えてラブレターを読み上げちゃうことが月一回くらいのペースである。

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