第5話
上機嫌な様子のリリアを連れ立って村の方へと歩いていく、ノッジ坊から聞いた集合時間にはまだまだ余裕があったが自分とリリアが一緒に住む家は村からは外れた場所にあるため念のためだ
「~♪」
周りにはなにもなく退屈な道行だが嬉しそうにしながら先を歩き、時折くるくると回ってスキップする家族の姿を見れば気も紛れてくるものでつい口元が緩んでしまう
ただ、何も知らない者が見れば少々恐ろしい光景だろうが
リリアの姿を一言で表せば完全武装、全身を覆う簡素な革鎧は全体的に暗い色合いであり急所にあたる部分に金属製の板がはめ込まれ最低限の防御能力を確保されている、関節部分は逆に動きを阻害せぬように最低限であり腰には大ぶりのナイフが下げられているが、更によく目を凝らせば腰には目立たぬようにベルトが巻かれ小さな刃物が幾つも吊るされているのが見えるおそらく初見であればナイフに目がいき気が付かぬほどに巧妙に隠されている
まるで暗殺者がごとき様相である、だがここまでならまだリリアの美貌をもってすればまだ恐ろしさよりも可愛らしさが勝つだろうが・・・・
「・・・・」
チラリとあまり見ないようにしていたリリアの顔を見れば
「~♪、アレ爺ちゃんどうかしたー?」
くるりと振り返った”八つの眼”と目が合う
「のう、リリアや・・・・」
「んー?」
首を傾げ最愛の家族の声を出す”ソレ”と話をしながら思う
「本当にそれ被っていくのかぉ?」
「うん!」
育てかたどこで間違えたかのぉ・・・・・
がくりと元気な返事をする最愛の家族の様子に肩を落とせば
「?」
不思議そうにリリア、もといリリアのような”大蜘蛛”は首を傾げた
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この世界における生物は5つに大別される
一つ目は人種、一番数が多くその名の通り人間がここに分類される他には獣の特徴を持つ東に住む獣憑きや地の底で多くを過ごす夜族に、変わり種では成長が子供で止まってしまう妖精など様々
二つ目はエルフ、頑丈な肉体を持ち寿命を持たず世界を見守る使命を課せられた精霊との直接的な交流を持つ唯一の種族である、一目でわかる横に伸びた長い耳を持ち眉目秀麗で知られる
三つ目は自然種、精霊より加護を受けるが知恵を持たぬ者たちの総称であり獣や蟲など多くがここに当たる
この三種が精霊に祝福される者たちであり、精霊より生まれたとされる者たちである
そして残りの2つは精霊より生まれずいつの間にかそこにいた者たち、それが異種そして植物族である
植物族は言うに及ばず、足元に生える雑草や森を形成する樹などがあたり、精霊と”対等”であるとされながらとてもフレンドリーに人種に絡んでくる者たちである森に入れば恵みを落とし、草原を歩けば休んで行けばかりに足に絡みつく
そして最後は異種と呼ばれる者ども怪物、化け物の総称であり
生きとし生けるもの天敵である
そして、その中にはトラウス・アラーニャと呼ばれる大型の人種すら喰らう蜘蛛がおり・・・・そんな化け物の頭が儂と一緒に歩いているのである
「やはり、それ被るのやめぬかリリア?、言ってしまうとかなり不気味で怖いぞ」
そういえば「うっ」と言いながら後ずさるトラウス・アラーニャもといリリア
「いやだってさぁ村の若い連中も来るんでしょ、絶対絡まれるじゃんだからアレだよ魔除け的な?」
「魔除けで払われそうな見た目でなにを言っておるんじゃ・・・・」
まぁ確かに異種の中でも上の方であるトラウス・アラーニャの頭なら弱い異種なら近づいてこないだろうが、異種どころか人種やエルフすら避けていくだろうそれはもはや呪いのアイテムである
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