第4話
「揺るがなき精霊よ、全ての祖たる精霊よ、どうかどうか我らに祝福を」
「言の葉が届かずともどうかどうか、この祈りを」
「お受け取りください」
"精霊"この世のあらゆるモノに宿るといわれており少なくとも”表向き”はすべての人種およびエルフが信仰している存在に対して祈りを捧げる、とはいっては祈りの中で言っているように言葉を交わすことは基本的にできないが変化はすぐに訪れた
しゅるりと小さな衣擦れの音が聞こえ1つの皿に乗った食事の一部が”欠ける”
まるで誰かに、見えないナニかに食べられたかのように1つ1つ順番に欠けていく
そして最後に、小さく本当に小さく鈴の音が聞こえ
眼を閉じる
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心の中で10と3つ数え眼を開ければ、食事の欠けはなくすべてが元に戻っていた
「・・・・今日も一日、我らを見守りくださり感謝いたします」
最後にそう呟けば
「ふぅ、さて食事にするとしよう」
「うん!」
ようやく食事を開始する最初は慣れなかったがさすがに10年以上続けていれば慣れたものだと、精霊への感謝を示し加護を願う儀式を終えながら思う
【精霊相思】と呼ばれるこの儀式は一日の始まりである朝食の時間に行いものであり用意した料理の一部を精霊へと捧げ”彼らの一部”を代わりに賜る儀式である、これを行うことで身の内に精霊を宿し怪我や病から守ってもらうことができる、ただし1日でも怠ればたちまち精霊の怒りを買い加護を失い病に倒れたり大きな怪我を負ってしまう”らしい”
そんな実際のところまでは分からぬがやっていては損はないと始めた習慣を終え料理に舌鼓を打ちながらいつものように今日一日の予定をリリアと話し始める
「のう、リリアや今日は森の日じゃが、どうやら村の方では今回は成人したばかりの若い連中を連れて試しをするらしいぞ」
「あー、そういえばもうそんな時期だったねー、私は爺ちゃんと一緒にちっちゃい頃からやってるから慣れてるけど初めてだと怖いだろうからねーアレ」
「うむうむ、それでな昨日実はノッジ坊が「リリア嬢ちゃんと爺さんがいてくれりゃぁ死ぬことはないだろうから来てくれねぇか」と急に言ってきおってな、断ろうとも思ったがどうにも必死な様子でなぁ、どうじゃ一緒にいかんか」
ぴたりと楽し気に食べていたリリアがノッジと言った瞬間に止まり、口をへの字に曲げて嫌そうな顔をする
「・・・・そっかー、でもさすがに前日だし私にいたっては今聞かされたからなー、断ろう爺ちゃん」
言葉は柔らかいがどこか刺々しい、というより最後にいたっては吐き捨てるかのように言ったリリアに「やはりこうなったか・・・」と内心ため息をつく、とある一件以降どうにもノッジのことが受け入れられんようで名前を出すだけでも眉を潜めるようになってしまったリリアを見ながらどうにか言葉を重ねていく
「それはまぁそうなんじゃが、どうにも若い衆のなかに素行の悪いのが混じっておるようでな流石に森で勝手に行動することはないと思うが念のためにどうしてもと言われてしまったなぁ、そこまで言われれば断るのも悪いしのぉ」
それに
「下手に森を刺激して結果的に村が滅ぶなんてことも、ありえん話ではない」
「それは、そうだけどさ・・・・」
そう儂とてリリアが嫌がることはできればさせたくはない、だがそうも言っていられない事情があるのだ
儂が家を置かせてもらっているゴルル村、そこからしばらく行った場所にある村の者がそのままゴルルの森と呼ぶそこは自然豊かな、そう自然が非常に豊すぎる場所である、普段であれば許可を得た者のみが森に立ち入り自然の恵みを頂戴するがそれでは豊すぎる森は”満足”しない、もっともっと恵みを受け取れと枝を根を村へと伸ばすそのため月に1~2回は森の日と称し動けるものは森へと赴き恵みを賜る必要があるのだが・・・・
「さすがに作法を忘れるほど、愚かではないとは思うが・・・・」
「・・・・・」
「万が一がある、儂とて心得はあるが、魔術を扱えるがお主が、リリアがいてくれればこんなに心強いことはない、だからどうか」
「儂と共に来てくれんか」
そう言って、ゆっくりとリリアに手を差し出す
我ながらずるいとは思う、こうすればリリアは
「ずるいなぁ、ずるいよ、爺ちゃん」
「断れるわけないじゃん・・・・そんなの!」
ぎゅっと手が握られそのまま胸まで引き寄せられ
「やるよもちろん、だって爺ちゃんの頼み事だもんそれに・・・・」
「一緒に、来て欲しいなんて一番うれしい言葉じゃん・・・!」
まるで花開いた花のように美しく、見惚れる程の笑顔でそう言った
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ずるい、ずるいと言いながらもとても嬉しそうにいそいそと準備を始めるリリアを見ながら心の内で謝罪し思う
立つ鳥跡を濁さず、懸念事項はキチンとキレイにしておかんとな、と
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