第15話 料理長の恩恵は突然に
俺とサトルくん、エータとミヤコで隠れ潜み僅かながらの休息を取る。
そこに鼻歌を楽しみハンモックに身体を預ける、先程まで剣を交えた少年がいた。
「なんでいるんだよ!」
『そうにゃ!次はなんとかとかカッコつけてた癖ににゃー!』
二人の空気を破るツッコミなのだが、渦中の少年はどこ吹く風である。
「だってさー、結局のところ、その二人って監視必須な危険人物でさー。お偉いさんから詰められちゃって今に至る。ってワケ。」
そんな少年の愚痴っぽい呟きを聞いていると
【この状況に遊びという名のアクセントを。少年を笑わせる。少年にシャレを云わせる。少年にチョップでツッコミ。などなど、遊びをお楽しみ下さい。】
という不思議なアナウンスさんの登場である。
まぁ俺はそれをするメリットが感じられないので、無視したのだが、後程無駄にビッグチャンスが生まれる事となる。
「だからって君程の使い手が言いなりとは、実力があるのになー。そうか、所詮は神国も縦社会か。」
『世知辛いにゃ。』
サトルの意見に完全同意である。
そして、エータとミヤコが目を覚ますのだが、エータは洗礼の儀式時の記憶がなくミヤコに抱き付かれ泣き止むまで事情が説明出来なかった。
「あ、あの方ってもしかして、剣士を極めし者と呼ばれる、
エータにしては、珍しい敬語である。
「おぉー!やっと僕を知ってる人がいたよ。そう考えると、もしかしておじさんは他国の密入国者かな?そうなのかなー?いけないなー?」
そう言ってチラリとこちらを覗く目が怪しく輝く。
「エータ、この少年ってば一体?」
「おじさん、知らないのかよ!この方はこの若さで剣士のジョブランク30を越える天性の才を持った武人で、将来の英雄と呼ばれているよ!」
「30?90とかカンストしてるとかじゃなくて?それって凄いのか?」
頭を傾け疑問を呈するとサトルくんもピンと来てなかったようで、猫ながら腕を組みつつも『はて?』と呟く始末である。
「凄いってもんじゃないよ。一般的にジョブランク8が最大と言われてるのにも関わらず、才能があり過ぎて20以上も限界値を越えてるんだよ。」
俺としては限界値イコール99とかな訳なのだが。と考えつつもジョブシステムの仕様は初見であったのを思い出す。そうか8が最大とかなのか。8なら割と極めるの楽かもしれぬ。となるとジョブチェンジしまくりな神国、労働力搾取の秘密有りなのかな?と安直な想像を行う。
「とりあえず、物凄く才能があるって事だな。凄いじゃないか?少年。」
確かに姿を見失うってたもんな。今思うと人間の動きじゃなかったかもしれぬ。
「うーん、なんだか適当っぷりが感じられてやだなぁ。まぁエータくん説明ありがとね。それでさ、今の体調はどうだい?無理矢理かわからないけど、ジョブがアサシンになった気分は。」
アサシン?これまた初耳である。それならミヤコもジョブが書き換わってるのか?
「え?僕がアサシン?ですか?そんな上級ジョブだなんて。そ、そうだ、そう言えばミヤコのジョブは一体?」
「ミヤコちゃんはトレジャーハンターというジョブだね。どっちも上級だ。まるで無理矢理そのジョブにしたのか?ってくらい不思議な状況だねぇ。」
まるでわかってるよと言いたげにサトルくんを流し目で見る剣客。
「そして、おじさんも意味がわからないけど、遊び人になってるね。洗礼の儀式前はレアなジョブなしだったのに。」
どうやらあの会場で目を付けられてたみたいだなぁ。先手を打たれてなくて良かったよ。
「まぁまぁ、皆も腹が減ったよな?サトルくん、日本食マスターの料理長から受け取った料理を出してくれるかな?」
『了解にゃ!』
そう言うとサトルくんはテーブルの上に陣を組み日本食、所謂定番定食を並べていった。
「ま、まさか。嘘だ。おじさん、これってもしかして!?に、にほんしょく?おこめ?ショウガヤキ?」
剣客が異様な反応を見せるとなんとなく察した俺は
「あぁ、生姜焼き定食だな。マスターが作る定食は絶品でなー。でも、剣客、貴様はシャレを言ったら食べても良いとする。」
「え?なんでシャレ??」
動揺する剣客をそのままにテーブルにつく俺は生姜焼き定食を手に取り剣客に勝ち誇った顔を見せる。
【少年(剣客)の洒落が面白ければ獲得ボーナスが入ります。】
というアナウンスで内心期待と無理感を共存させたのであった。
「とりあえず、生姜焼きが食べたかったらシャレを言って笑わせてみろ!」
剣客に対する初めての優位性を味わうのだった。
ヒキニートな俺は異世界転移した勇者こと幼馴染に異世界召喚される。 @hayaneosooki
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