第14話 激戦は突然に

【この状況を遊びますか?】


その表示に心が昂ぶるのは以前の自分と違い過ぎて驚くのだが、身体強化ならぬ脳強化による賜物かもしれない。

まぁ、それに加えて格ゲーの筐体仕様やら万能キャラのサトルくんの助けが大きいと思われる。


さて、状況を遊ぶとは如何なるものか?現状はエータが悪魔っぽくなり、ミヤコが天使っぽくなってお互いに削り合う始末。

更には周りを重装備な騎士達が囲み、憲兵との話の兵隊、それに法衣を纏うお偉いさんまでいるのか。

なかなか厄介な状況である。


それなのに遊ぶとは。

『タダノ!周りの騎士が襲ってくるよ!ぼーっとしてないでよ!』


最早、絶体絶命ってやつですか。この逆境を遊び倒すつもりでもなきゃやってられない?のか?


「しゃあない、遊びますか!」

俺の両手に宿る力、それは魔力による刀。


そして、視界に現れる光輝く剣線。


剣線に対するは騎士の持つ両刃の剣。


「なるほど、剣線をなぞるリズムゲーム?的なやつか?」


視界に現れる剣線に沿って右手の太刀を振るい、衝突時に輝く刀は騎士の剣を軽々しく弾き返す。


「うひょー!なんだこれ、気持ち良いな!次はこっちか?」


と太刀筋に沿って振るう左手の太刀はエータがミヤコに向けて行う打撃をも退ける。


「攻略法が見えるなら、後はタイミングを合わせるだけ。」


『凄いにゃ!タダノ!でも、タダノらしくないよ!』


忘れていたと思われる猫のような話し方をし、軽口を叩けるくらいは可能性が見えた?のかな?


両手に持つ刀をクルクルと回し、剣線に沿って刀を合わせる。


面白いように騎士やら悪魔やら天使の同士討ちも阻止する。

調子が良いのもあり、剣線に合わせる精度が高くなるとまるで無双しているという錯覚を味わう。


しかしながら、阻止するだけなので戦況は芳しくない。あー、でも騎士達の腰が引けているので余裕は確かにあるね。


そんな時、現れるのは強敵か何かのイベントか。


騎士が引いた場所からエータ達と同世代と思われる少年が突然出現しこちらに歩いて向かってくる。


そちらに警戒度を上げると少年は騎士が落とした剣を拾い上げ、左手に乗せた後刃の傷がない事を確認するかのように熱心に覗き込む。


「おじさんさぁ、何が目的?その二人を闘わせたいの?それとも、何か待ってるのかな?」


その刹那、俺の首筋に剣線が光る。


「へぇ、凄いじゃん。獲ったと思ったのに。」


一瞬で背後を取られたのだが、少年はミヤコ達を向き、剣を下向きに構え両腕を伸ばす。


ミヤコとエータの首に剣線が現れ、急いで両手の刀を振るう。


「くっ!」

「あはは、さっきより弾きが弱いね。でも、防ぐってだけで凄いよ。えっとね、この国では天使も悪魔も悪いやつなのね。なんで守るの?」


「エータとミヤコは友達だからな、そりゃ守るだろ?」

少年の攻撃が速すぎて息が上がる俺はなんとか息を諌めつつ、刀を構える。


『にゃ!』

死角を突いてサトルくんが影から斬撃を飛ばすのだが、少年は難なく防ぎ切る。


「猫ちゃん、爪切りしないとじゃない?切ってあげようか?」

その直後サトルくんの腕を剣線が通り抜ける。のだが、格ゲーの能力によるのか、サトルくんの腕は繋がったままだった。


「あれ?おかしいなー。じゃもう一回。」

しかし、現れるのはサトルくんの首と脚への剣線。


なんとか防ぐ事に成功すると少年は怪しく笑い、サトルくんをバラバラにする程の剣線を見せる。


「おい、少年、猫狙い、なんて、動物虐待、だぞ?」


『ひ、酷いにゃ!』

いやいや、守ってるんだか、俺に反応するなら、逃げてくれよ。


「本当におじさんやるね!面白くなってきちゃった。僕の剣をここまで受けれる人はこの神国にもいないよ?」


窮地は続くが、ピンチはチャンスと良く言ったものである。


騎士が法衣を纏うお偉いさんの場所にて、何か儀式を受けているのが視界に入る。


「サトルくん、あれを!」

指を指し、サトルくんはそれを理解する。


『なるほどにゃー、あれがジョブチェンジね!あの神言ならば、にゃー!』

何故か静観していたエータとミヤコの額に肉球を押し当て、無理矢理


成功したのか、エータとミヤコから放たれていた魔力はなりを潜め、二人は気を失う。


「あれー?なんで二人がの?それじゃ僕の闘う意味ないじゃん。」


『タダノ!上手く出来たにゃ!』


「ないす、サトルくん!じゃお暇しますか。じゃーなー、少年!」

サトルは頷きつつも、少年を視界に入れエータとミヤコの側に立ち、魔力で足場を作って脱出を試みる。


「うん、おじさん、またね。今度は切るから。」

と異様な殺気を受けつつ、サトルくんとエータとミヤコを救出した。

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