第13話 遊びは突然に

エータは光に包まれ藻掻き苦しみながらも咆哮を上げる。

印を組み祈りを捧げる無防備な若者の脇腹を抉るような右拳を横腹に叩き込み、次々とくの字となって倒れ込み苦しむ姿を目にする。

『いくらなんでも、タダノ、それはエゲツないにゃ。一週間は食べ物リバース地獄にゃよ?』

そう言われても、俺は単に格ゲーのキャラ特性を用いて、簡単に出せて悶絶する技を選んだだけである。しかしながら、効果音が派手で、実際にリバースしてる方がいるのが我ながら驚きである。

かなり痛い模様。


にゃんにゃん煩いサトルくんも、前足を地面に押し付けるだけで影から捕縛用の黒いのをニョキニョキ出してるのだからお互い様?なのか疑問だが良い勝負なのであろう。


そんな余裕が多少生まれ、気付くとミヤコがエータの元に辿り着き手を伸ばしていた。

その手を遮るはエータの魔力。


ミヤコがその魔力に触れるとバチバチと音が鳴り、悲痛な表情を見せる。

「えぃたぁ、えぃたぁぁ。」

彼女の目が潤み、その気持ちは届くのか息が詰まる。そんな二人を追い込むように会場外から鎧姿の騎士が取り囲み始めた。


ため息をつき、騎士の前に拾った剣で線を引く。

「その線を越えたら手加減しないからね。」

そんなカッコイイ台詞を放つも、サトルくんは猫顔ながら呆れ顔である。


『そんな何処かで見た事ある?カッコつけのタダノくんさ、君もジョブってミル?』

怪しく笑う猫は俺の魂を弄くりたいのか?そんな疑問が生まれるがそれを察して説明を始めるサトルくん。

『所謂、能力に良くも悪くも補正はかかるけど、何よりもスキルとかアビリティ要素が得られるカモヨー?にゃ。』

確かにエータは兎も角、ミヤコまでとなると荷が重いかもしれぬ。

「魂に何かされるのはチョット。」

流石に魂は重いと反論するとエータを取り巻く魔力から漆黒の騎士型の魔物が這い出てきた。


「カオスじゃー、憎きカオスの血の者め!あの小僧どもの命を奪うのじゃ!」

騎士に囲まれ安全な立ち位置の老人が叫ぶと憲兵達からの攻撃も激しくなる。


漆黒の騎士の登場で戦線は押し返したのだが、新たな問題が現れる。

『タダノ!ミヤコの右腕が!あ、にゃー!』

洗礼の儀式がまだだからかミヤコの腕はエータの魔力を吸収し黒い痣となってその身を焦がす。

それでも、手を伸ばすミヤコの元に走り倒れる彼女を抱きかかえた。

「えいた、えいた。」

そう繰り返す少女を蝕む黒の魔力。その痣はミヤコの身体を焼いていく。もしかしてと思い付く方法は、少女に魔力を宿らせる事。サトルを呼び説明する。


『ふむ、確かに彼女自身に魔力があれば、エータの魔力にも負けないかもしれないね。』

「ミヤコ、いいかい?これから君に洗礼の儀式を行うよ。」

サトルの声を聞いてすぐミヤコに話しかけると少女は小さくも精一杯に頷いて返してくれた。

「サトル、頼んだ!」

『頼まれたー!』

そして、洗礼の儀式とは少し違う儀式が行われるとミヤコの痣が浄化されていき、白い魔力が彼女から溢れる。


白と黒の魔力はぶつかり合い、激しい反響音を響かせる。


目を覚ましたミヤコは自身の魔力を握るとその魔力を剣に見立てエータに斬りかかる。

「『な、なにー!』」

エータを辛うじて守った漆黒の騎士は浄化され、向き合う二人は正に天使と悪魔である。


「なんで、コウナッタ。」

『にゃー、痣が治るまでは完璧だったにゃ。』

エータとミヤコの立合いは徐々に激しさを増す。

その迫力に会場の憲兵や騎士たちは手が出せなくなっていた。


「サトル、これ以上もう悪くならないだろうし、俺、ジョブやっとくわ。」

『に、にゃー。』

サトルは俺の希望を叶える為、魔力の元となる器官に印を結ぶ。


『成功?にゃー!』

置いてけぼりなサトルと俺は新たな力に未来をかける。


【タダノトモナリは"遊び人"になりました】

それを聞いた俺は酷く後悔したのだが、


【この状況を遊びますか?】


その選択肢の表示に心が昂ぶるのであった。

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