第12話 神国は突然に
勇者火狩からの依頼で潜入している、この国の名は【リビアスター神国】。
国の周りが海に囲まれ、入国しようにも橋や船もない。そんな不思議な国。一歩国に入れば広大な土地があり、農業や畜産が盛んで、詳しくないがGDPがとてつもなく高いと思われる。
その理由、原因になっているのがこの国に独自としてある仕様【ジョブシステム】。
クラフター系ジョブの方々が国の土台を支え、一部のギフテッドジョブを冠する者達が物流効率化を限界まで引き上げている。
更に言うとジョブシステムにより、国民全員手に職持ちなのである。
実際に体験した時はまさに理想の国と勘違いしてしまった。ギルドカードの操作により液晶パネルが現れ、その場で購入、即時商品到着というまさに魔法の国。
だからといって店がないつまらない国?という事はない。ジョブの練度があるからこそ、店独自の色があり、味わいがある。そのあたりのバランスが素晴らしいと言わざるを得ない。ただ、店に行かなくても欲しい性能の物が手に入るとかいうチート国である。
そんな背景もあり、他国との交流を断絶しても問題ない為、この国に潜入は少々骨が折れたのだが、一度侵入し馴染む事に成功すると類似性バイアスというか身内びいきが凄まじく、国民皆兄弟的な国だ。
親世代はそんな気質が多いが、子供達はそうでもなさそうな気がする。
だが、それもジョブシステムによる洗礼の儀式により心持ちが変わるのであろう。
他国のスパイ達でも見抜けなかったジョブシステム。それを見て解明してくれ!そんな無茶ぶりを言われ今日に至るわけである。
十二分に馴染んだ俺とサトルなら洗礼の儀式に参加しても問題はないはずだ。
□
そして、洗礼の儀式当日を迎える。
憲兵であるダーウィンが今日は真面目に職務を全うしており、エータやミヤコも儀式に参加している。
サトルを膝に乗せ、登壇し洗礼を受ける子供達を見守る。
『にゃー、儀式って魂に魔力文字による神言を書き込むんだね。なるほどにゃー。』
へぇー。と流してしまったのだが、俺は時が停止した錯覚に陥り、つい儀式の中にも関わらず『は?』と何度も言いかけてしまいそうになる。
サトルくんさん、物知り過ぎて何者なのかふんわりとスルーして来たのだけど、この子計り知れないのでは?と動揺してしまう。
『あ、エータの番だにゃー。』
その俺にしか聞こえない声を聞いて壇上を見上げると、何やら違和感を感じる。
視界に魔力を纏わせ観察すると確かに、エータの魔力、魂に直接書き込まれる神言。
しかし、その神言は字体が変化し魂が纏う魔力の色が禍々しいものに変異した。それによりエータを包むような強大な魔力は鬼の顔を形造り悪意を持った産声をあげる。
その魔力の異様さに会場は騒然となり、エータがその場の空気を支配し始める。
その会場を守る憲兵達から魔力の鎖が延び、エータを縛り付けるのだが、エータは力任せに何本かの鎖を引きちぎる。
会場にいた法衣を纏う若い男性が立ち上がり、右手で印を結ぶと輝く魔力がエータを包み浄化し始めた。
『ダメにゃ!あれはまずいにゃ!』
飛び出そうとするサトルを抑え、立ち向かうは光の天使。守るは異形の悪魔。
何よりも悲痛な表情のミヤコの心を守る為、俺は立ち上がった。
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