第9話 乱入者は突然に

現れた筐体。椅子に座り、画面を覗き込む。


何処かで見たような見た事ないようなキャラクター達の、格闘ゲームかな?これ。


先程(前話)、曲がりなりにも大活躍したアレと別にこの異世界生活に娯楽そのニが現れた訳である。


『ねぇ、これって遊べるの?』

サトルくんが興味深そうに筐体を覗き込む。

「遊んで?みますか?お相手しましょう。」

仲良く隣り合って筐体を覗き込む俺とサトルくん。

レバーとボタンをガチャガチャと操作し、男のプライドによる激しい闘いが繰り広げられる。


が、俺の操作するキャラクター。ザ・格闘家っぽいのが勝ち名乗りをあげる。

『えぇー。よくわからないまま負けた。』

ふふ。初見のゲームであるが、今まで遊んで鍛えた戦術が功を奏した。3Dゲームなのに2Dっぽいレトロなゲームだ。


「おじさん。急に格闘技なんてどういう風のふき回し?しかも、割と強いんじゃない?」

え?サトルくんと遊んでいたのに、何故?かぜのね氏が?


『あ、僕達は画面を見ていたけど、君の身体は君の操作に併せて実際に闘っていたんだよ。あ、相手はさっきの彼だね。』

あー、なる程、黒火狩氏と俺が実際に闘ってるという事か。いやいや、それだと罷り也とも火狩氏(偽物)に勝ったという事実が残る?それでかぜのね氏が食い付いた?

『うん。そんな感じで?』

そんな話と認識をしていると、木剣を片手に獲物を見つけた剣士がワクワクした表情でこちらを覗いている。

レオハルド氏も興味深そうに審判的立ち位置に移動し始めている。


このレベルアップ中毒者と騎士団の方々は俺の洗練された?テクニックに見惚れたのか、逃げ出せそうにない。


こちらは素手だが、対戦相手は剣士。とんだ異種格闘技戦である。

まぁ受け流しや当て身技もあるしなんとでもなろう。ただ、消えたり、ワープして背後取られたらなんとも出来ないかなぁ。


さっきの闘い(ゲーム)の感じで痛みも無さそうだし、お相手してみますか。

それに大人気なく倒してしまうのも、なかなか一興である。くくく。


「では、模擬戦開始!」

レオハルド氏が大きな声で手を下に振り下ろし闘いの幕が上がる。


「おじさん、さっきのがマグレじゃないか、見極める!」

一足飛びで距離を詰めるかぜのね氏。しかし、摺り足による立体的な回避行動によりかぜのね氏の一撃が空を切る。


『あ、体力バーが減っても痛みとかないから、思う存分、怪しい動きをすれば良いと思うよ。さっきみたいにね。』


回避に特化した初手により背後を奪う俺は、背面を掴み後ろから足を掛け体勢を崩し、腰を落としたかぜのね氏の顎を両手による掌打で意識を刈り取る。

バランスを崩したままのかぜのね氏が木剣を横凪に払うも、その一撃に鋭さはなく離脱し立ち上がれないでいるかぜのね氏の側面に移動。


木剣を振るった手を取り回転させつつ、放り投げ、かぜのね氏は転がる。


顎の一撃が効果ありか立ち上がれないまま、勝負ありとなった。


手も足も出ないまま敗れてしまったかぜのね氏は一瞬呆けた顔を見せたが、負けた事を実感すると悔しそうに大地に拳をぶつける。


少し大人気なかった気がしたのだが、レオハルド氏曰く、レベルアップという魔性に抗えなくなる前に挫折を味わえたのは今後を鑑みても意味があると力説していた。


火狩氏とかではなく、下と思っていた相手に負けたと言う事に意味があるというやつである。


確言う、俺がゲームの強さ的な狡い勝ち方なのだが、それは良いのだろうか?


まぁ、どうせその内負けが込むと思われるので、今に関しては新しい能力と言うなの娯楽を楽しまさせてもらうとしよう。

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