第5話 才能は突然に
もぐもぐ。
俺は日本食マスターと心の中で呼ぶ料理長の昼食をいただいていた。
鯖っぽい魚の塩焼きと白米最強。
そうそう、午前はレオハルド氏とかぜのね氏の闘いを第三者視点で経験した。
とても有意義な時間を過ごせたと思う。(二人の模擬戦が長引き、見学で午前が終わった。やったぜ!)
鯖っぽい魚は脂がノッていて物凄い旨味があり、その脂っぼさをけんちん汁で胃に流し込む。
というか、けんちん汁まで異世界進出とは、ヒカリくん本当に凄すぎる。
里芋ほっくりとしてて美味。
この世界でも里芋は里芋と呼ぶらしい。里芋は異世界転生したのかもしれないな。
「おい、何を馬鹿な事考えてそうな顔しながらメシ食ってんだよ。」
この子、一言多いが食卓は共にする。
つまりはツンである。もしくは寂しんボーイ、いやガール?まぁそれはどっちでも良い。従兄弟の姪っ子を思い出し、ついつい優しい視線で見てしまうのだった。
「おじさん、そんなじっと見るんじゃねぇよ!」
そんな事言いつつ、席を立つ素振りがさっぱりないかぜのね氏。愛いやつなのである。
生温かい視線を維持したまま、鯖っぽい魚を紅葉おろしでいただく。
んまい!
あ、説明を省いたが、ヒカリくんは醤油の製造にも関わっているらしい。
もう俺には真似出来ない高位知識チートを発揮しているよね。
おかげで俺は寝食を満足に受けられてると考えられ、頭が上がらないのである。
「あ、タダノ殿、午後はクリア師団長がお話があるとの事でした。食事休憩後、研究所に向かって下さい!」
すかさず魚の竜田揚げを頬張るレオハルド氏。あまりの旨さに頬が緩んでいる。
この少年らしさが微笑ましいが、それを見てかぜのね氏の頬が紅くなってるような?なってないような?
不純異性交遊はおじさ、コホン、お兄さん許しませんよ?もう少し大人になったらね!
え?お兄さんは?お兄さんはね、心が少年なので、まだまだ早いんですよ。大人になるって難しいんです。
さてさて、とても美味しゅう御座いました。
研究所に向かいましょう。
□
コンコンコン、「タダノです」そう呼びかけるとぎいっとドアが勝手に開く。
魔力の動力と思うが、魔力による自動化って良いのか悪いのかわからないね。
結局、使用者が疲れちゃうもんね。
「タダノさん、お待ちしておりました。どうぞ、おかけ下さい。」
「はい、それでお話とは?」
「はい、実は。転移、転生者は何かしらの能力を持つ。そういったルールがこの世界には存在しています。ヒカリさん、かぜのねさんがそうなように、タダノさんもそれは間違いないのです。」
そうこの国の魔法師団のお偉いさんが言うなら間違いがない。そんな前進的な発言に引き篭もりでも心が踊る。
「そこで、ここ数日、模擬戦を試していただきました。そこで判明した事をお伝えします。」
ドキドキ。
一息ついて言葉を待つ。
「タダノさん、貴方に武器によるスキルが、熟練度的なものがない。そう、【一切ない】のです。」
ドキドキ。
って、一切ないとこをめっちゃ強調されました。あれ、それってヒカリくんの魔力による模擬戦とか必要なかったのでは??
顔にそれが出てしまったのか、クリアさんが補足する。
「えっと、恐らく考えてる事と逆で、本来、魔力でもあそこまで身体の操作は出来ません。ヒカリさんが特殊なのは間違いがありませんが、タダノさんもそれに関しては特殊なのです。」
「本来、魔力は自身の物だからこそ【馴染み】ます。仮に僅かでも反発した力が発生すれば、疲労だけに留まりません。」
というと?
「身体がバラバラになります。何故なら魔力は光の勇者の力。底知れぬ光の魔力を受けきれるのが【異常】。そう私は結論付けました。」
と、いうと???
「はぁ、つまりは雀の涙程度の水の魔力をどうにかこうにかしてみましょうって事です!」
なるほど、ファンタジーは魔法。
魔法こそファンタジーって事ですね!
盛り上がってきた感があるので、投げ槍かつサゲる発言は目を瞑って聞かなかった事にしましょう!
俺の心を守る為に!!!
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