第3話 知識チートは突然に

「タダノくん、喉が渇いたよね?彼の為に例のドリンクを持ってきてくれないかな?」

ヒカリくんがそう言うと、俺の近くにテーブルとイスが凄い速さで設置され、乳白色なドリンクがグラスに注がれる。


「ヒカリくん?これは?」

グラスを手に取り下から覗きあげる。


「運動した後はやっぱりこれだよね?糖質とタンパク質、豊富なビタミンを含んだ、元気が出る水だよ!」

ヒカリくんがぐいっと飲み、ぷはーっと良い顔を見せる。


「ぷ、プロテイン??」


「うん、ミルクで飲みやすくしても良いけど、脂質は少な目のが飲みやすくて良いよね!」

ヒカリくんの輝く笑顔は何度目になるだろう。


そうだ、彼が転移しているってなると、知識チートはどうしても二番煎じになってしまう。


人生の世知辛さを味わった俺は、力なくその場に倒れ込む。


のだが、何やら光り輝く何かが俺を包む。


「よし!栄養補給したし、フォローするから頑張ろう!ねっ!タダノくん!」

光り輝く何かの元となるヒカリくん。これはどうやら俺の身体をフォローして更に運動させる。なんとも笑顔が眩しく(実際、視覚的にも)やけに腹立たしい。


その後、数時間俺の悲鳴が響き、その所業から目を背けるように王女達は階段に向かって行った。



俺が開放されたのはそれから数時間後。

半ば意識が朦朧としつつ、ヒカリの力にて剣や槍など様々な武具を扱った。



それが数日続くと人間とは凄いもので、少しずつ慣れが生まれる。


しかしながら、二日目には力を抜くという裏技、いや、むしろ身を任せるという方法を見つけてしまったのだが、それが自身の身になるかはさっぱりわからない。


俺の才能がないからこそ、勇者のフォローこそ至高!


なんと、勇者パワーでレオハルド氏から一本取ってしまう大金星を手にした。



つまりは、勇者スゲー!


そして、俺いる?


という感情が生まれる。



いや、考えるのはよそう。視界が滲んでしまう。



そうだ。楽しい事を思い出そう。

この世界の食事はとても美味しかった。


というか、もろ和食である。


ヒカリくんが知識チートでやっちゃいましたを何回言ったのかわからないレベルである。


まぁ現実には俺、ニートだし、料理してないからレシピとか知らないし。なので、食に困らないヒカリくんチート最高!


と思う事で全て解決なのである。


というか、切り干し大根とか、煮魚とか、おでんとかおひたしとか水炊きなど、ヒカリくんがただの勇者ではなく母の味系勇者な事にそれはもう驚いたものである。


昨晩は肉じゃがであった。


きっと俺の母さんより料理上手いと思う。


味が染みてて心にも沁みる。





俺、ニートやってる場合じゃないね。


そんな気持ちになった。

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