第5話

 津成の入部が正式に決まったのは、見学に行った次の日だった。

 顧問と津成の担任が一緒だったのが大きいだろう。

 お昼休み、津成は部室に顔を出していた。

 「失礼します」

 扉を開けると、そこには並木がいた。

 「あ!津成ちゃん!いらっしゃい、どうかしたの?活動は放課後からだよ」

 並木は、机を用意してた。

 「並木先輩と、ご飯食べたくて。教室行ったら、部室にいるって」

 津成は、お弁当袋を前に出し見せた。

 並木は目を輝かせながら。

 「う~う。食べよ。後輩って初めてだから嬉しい」

 並木は、持っていた机を置き津成に抱きつく。

 「先輩ご飯食べよ」

 津成はお腹を鳴らし言った。


 机を2つ向かい合わせるように置き、向かい合って食べ始めた。

 「そう言えば、黒瀬くんとは中学からの知り合いなの?」

 「ううん、高校で。隣の席なんです」

 「そうなの!仲がいいよね」

 「そうですかね?」

 津成は黒瀬を浮かべた。

 「黒瀬君・・・・・か」

 津成は名前を呟いていた。

 「なにか言った?」

 津成は首を横に振る。

 「先輩の玉子焼き美味しそうですね」

 きれいに巻かれた、並木の玉子焼きを見つめる津成。

 「食べる?」

 「はい」

 並木の箸を津成は口に入れた。

 「うまぁぁぁ」

 津成はほっぺを押さえ、顔をとろけさせる。

 「美味しいです〜」

 「えへへ、よかった。実はこれ私が作ったんだ」

 津成は、目を見開く。

 「先輩、料理上手なんですね」

 「そうかな」

 並木は頭をかき、頬を赤く染める。

 「これ、もう一つ食べて」

 「いいんですか?ありがとうございます」


 ご飯を食べ終わり、雑談をしばらくした時。

 「失礼します〜」

 ノックもせずに、二人の男子生徒が入ってきた。

 いかにもガラの悪そうな二人。

 一人は、耳のピアスを空けていて。

 一人は、背の高い短い黒髪の男子生徒だ。

 「あずまくん、いらっしゃい。また洗濯?」

 「ああ、今日は違う。って、誰これ?」

 東と呼ばれた、ピアスを開けた男子生徒は津成を睨む。

 「彼女は、新入部員の津成奈津ちゃん」

 津成は紹介されると、ペコッとその場でお辞儀した。

 「ふ~ん。こんな部活に、入るもの好きいるんだな」

 東は顔を津成に顔を近づけると。

 「意外と、かわいいじゃん。なあ、あき」

 東は後ろに立っていた、あきという男子生徒に言った。

 あきは、何も言わずに津成を見る。

 「ごめんね。後輩をいじめないでね。ほら、津成ちゃんこっちおいで」

 並木の手招きに、応じるように津成は小走りで並木の後ろに隠れるようにくっついた。

 「おいおい、イジメてないんだが。言いがかりはやめてくれ」

 東は茶化すように言った。

 「今日は何?冷やかしに来ただけなら、帰ってくれる?」

 ムッとした、顔をする並木。

 「違う、違う。今日もちゃんと依頼があって来たんだよ」

 「私あの人嫌い」

 津成が呟くが、誰も気に留めない。

 「そうなら、早く言ってくれる?」

 はぁ。と、ため息をつき。話を聞いた。

 「中庭にピアス落としちゃってさ、探してくれよ。俺ら、サッカー部の練習で探す時間なくてさ」

 並木は面倒くさそうに、紙とペンを取り出し。

 「じゃあ、どんなピアスか詳しく教えて。じゃないとーーー」

 「頼んだぞ」

 東は並木の話を、最後まで聞くことなく部室を出ていった。

 「ちょ、ちょっと。はぁぁ。行っちゃった。津成ちゃん大丈夫?」

 並木は津成の頭を撫でる。

 「はい。でも、あいつ嫌いです」

 津成は、敵意むき出しに東の背中を睨む。

 「あはは、私も嫌い。自分勝手だし。さっきもピアスがどんなのか、わからないし」

 「そんなの、探す必要ないです」

 「それはだめだよ。いくら嫌なやつでも依頼されたたら、探すの」

 並木は、笑ってみせた。

 「は、はい」

 津成は納得こそしていないが、並木の言う事を聞いた。

 「うん、ありがとう。じゃあ、放課後中庭集合ね体操服でお願い」

 「わかりました」



 放課後中庭にて、津成たちは合流して。

 並木が持ってきた、軍手を付け捜索を始めた。

 お互い、反対側からうちに行くように探す。

 ピアスなので、多分小さいだろうと予想して。雑草を掻き分けながらの作業は困難を極めた。

 中庭は運動部が偶に練習で使ったるするので人の出入りが激しく。ずっと探すの無理だ。

 さらに、中庭の面積は大きく。

 二人だけで、全てを見るのには放課後だけでは3日ほどかかるだろう。

 「津成ちゃん、ちょっと休憩しよっか」

 いくら4月の後半だと言っても、太陽からの日は強く休憩を細かく挟まないと倒れてしまう危険があった。

 「はい、スポドリ。しっかり飲んでね」

 「ああ、ありがとうございます」

 津成は受け取るとすぐに、半分まで飲んだ。

 「ぷはぁ~。美味しい」

 「うん、それなら良かった。疲れたら言ってね。そしたら、今日はそこまでにするから」

 そう言うと、並木は額や首元についた汗を拭き取る。

 「よし。私は先に戻るけど、津成ちゃんはもう少し休憩しててもいいよ」

 「ううん。私もやります」

 「わかった、じゃああと30分探したら。終わろっか」

 津成たちは、捜索を再開した。

 この日の成果はなかった。



おまけ

津成「先輩、連絡先交換しましょう」

並木「あ!まだしてなかったけ?」

津成「はい」

並木「じゃあ、ライムでいいかな?」

津成「わかりました。はい」

並木「うん・・・・・。よし来たよ。スタンプを」

津成「あ!かわいいうさぎのスタンプ。じゃあ私も」

並木「あ!きた、これはハンバーガー?」

津成「はい!!」

並木「これもかわいいね」

津成「はい。じゃあ・・・・・」

しばらく、ライムの履歴はスタンプで埋まったそうです。

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天然、津成さんは今日も呟く あすペン @Asuppen

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