第23話 伯爵夫人の独白11



 両親がそろそろ私の婿探しをしようかと考え出す頃、ザックが北方へ向け旅立つ頃、私は一芝居打つことに決めた。


 このことは私とユーリしか知らない。サニーとザックにはほとぼりが冷めたら話すだろうが、サニーは怒るだろうし、ザックは……わからないけど。 


 舞台はドラティア宮殿。ザックはもう伯爵位と共に北にいる。これは事故であり、私は哀れな美しい悲劇のヒロイン。


 私の魔力が、容姿が、傍迷惑で美しいもので良かったなと思う。ザックの魔力があの魔力で良かったなと思う。


 ザック、怒るかな。そんな捨て身でいないでください、って言いそうだな。ザックのそんなところが大好き。ずっと好き。私と結婚することになっても、嫌がらないでほしいな。多分嫌がらないけど、それは優しいからであって、私のこと好きなわけじゃないんだろうなあ。


 大丈夫。きっとザックもすぐ私のことを好きになってくれる。結婚してから芽生える愛だってある。私がしっかり、ザックがちゃんと私を好きになって幸せに愛を育めるようにしてあげるから、まっとうな結婚にしてあげるから、ザックは何も心配いらないよ。


 そうしてその晩、私は少人数に――――騒ぎ立てないくらい信頼が置けて、上流階級の最上位に位置し、私がザックと結婚することを合理的として何も詮索しないような、たいへん都合の良い優しい人たち――――ルナ・フローリアンが魔力コントロールの訓練を受けてもなお制御が難しいような、それこそ魔力を打ち消す魔力の持ち主と結婚した方が良いのではと思わせるくらいの魅了の魔力保持者だと思わせることに成功したのである。



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