第19話 伯爵夫人の独白7
でも、ザックと親しくする幸せはそう長くは続かなかった。
ザックは頻繁に屋敷を訪れてくれて、彼と本の話をしたり、軟禁生活や刺繡の先生がいかに理不尽かという愚痴を話したりするのは次第に私の癒し、というか精神の安定に不可欠になっていった。
私は生きていていいんだ、と思うようになったのだ。彼が私の美しさに負の感情を向けず、他愛もない話をする相手として私を求めてくれる限り。
そう思っていたけど、中等部2年生になった彼は学校運営の仕事を手伝うようになり(ユーリを手伝っているらしい)、段々と訪れが減っていった。
羨ましいなあと、日々ぼんやり本を読むしかない生活の私は思った。私だって学校に通えていれば、もしかしたら彼と仕事ができたかもしれない。
ザックはどんな学生生活を送っているのだろう。ガリ勉だし地味だし北方訛りはあるし、とか自己評価していたが、私にはそうは思えない。ザックはもう首都に6、7年いるわけで十分標準的な発音をしていると思うし、ガリ勉ということは成績優秀なのだろうし(私の家に遊びに来る暇があるくらい要領もいいのだろう)、確かに鈍い銀色の髪も青い目も特段珍しいわけではないかもしれないけど、名家の子息らしくお手入れされているし。
何も悪いところないじゃない。気にしてるみたいだった目つきの悪さも、私は可愛いと思うし。
……私、ザックに甘すぎるのかなあ。身内贔屓するタイプなのかも。
いや、そんなことない。サニーだってこの前、「ザックは女子にも男子にも一目置かれてるよ!もっと自信持てばいいのに~」って言ってたんだから。
そこまで考えて、嫌だなあと胸の奥がどんよりしだす。
女子にも、って。モテてたりするのかな。嫌だな。絶対私の方が綺麗で、ザックを理解してるのに。
私はザックと疎遠になる中、どんどん自分が抱いている気持ちを自覚するようになっていった。
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