第14話 伯爵夫人の独白2
私はこの国で、最も美しいらしい。
そう言ってきたのは家族、友人、家の使用人、王宮の人々、私を一目見た人達ほとんど全員。
妹のサニー、後にその婚約者となった同い年のユーリはからかい交じりだったけど、その他は全員、紛れもない憎悪や嫉妬、あるいは恍惚の表情で私の美しさを伝えてきた。
「貴女はこの世の誰よりも美しいわ」
「だからこそ、その責任を持たなくてはならない。わかったね」
齢12にして、両親にそんなことを言われた私の気持ちなど、誰にも理解できないだろう。
その言葉にはもう一つ、私の潜在的な魔力に対する心配もあったのだが、そのことが明らかになるのはもう少し後だった。
よって当時の私は、ただ「自分の見た目」だけのせいで行動を制限されるのだと思い込んでいた。
もちろん、両親がそう注意する理由も理解できた。学校では、男の子に意地悪されたり、女の子に「好きな人があんたのことを好きだから」と言われて悪意を向けられたり、ということばかりだった。話したこともない、名前も知らない人に体を触られたり、変な目で見られたり、更には婚約を申し込まれたりということもあった。
勉強に身など入りやしなかった。私の見た目が悪いものを引き寄せやすいということは、身をもって理解していた。
でも、一体どうしてだろう。
なぜ、私は生まれ持った体のせいで虐げられなければならないのか。
なぜ、行動を制限されなければならないのか。
非魔力者を虐げてはならない。体に障がいがある人を虐げてはならない。肌の色、国、性別で虐げてはならない。当たり前だ、生まれ持ったもの、自分より大きな何かによってもたらされたものを攻撃することは卑怯だと、皆知っている。
そう、皆知っていることのはずなのに、なぜその倫理は私には適用されないのか?
そして、私が美しいというだけで、なぜそれは私に好意を寄せる理由になるのか?私に求婚してきた人の中には、恐ろしいくらい年上の人もいた。普通、子どもに恋愛感情を抱くなど大きな声で言えないはずなのに、なぜ「美しいからだ」などと言えば正当化されると思うのか?
好きでない男に好意を寄せられ、赤の他人の女に悪意を向けられ、そうでない人にも何某かの先入観を持たれ。それのどこが幸せだというのだろう。
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