伯爵夫人の独白

第13話 伯爵夫人の独白1



 私、ルナ・フローリアン・ラングランは、ずっとずっと、イザーク・ラングランに恋をしていた。


「よかったな」


 振り向くと、ここ数年ずっと私のカウンセラーもどきをしていた男が仏頂面でこちらを見ていた。


 にっこり極上の笑みを浮かべて応えると、王太子殿下の眉間の皺がますます深くなる。


「おかげさまでね。ありがとう」

「ほんとにな、ラングラン伯爵夫人」


 着席を雑に許可する手を見て、私は一礼してから席に着いた。どうにも笑みを抑えきれなくてにこにこしてしまっていると、王太子殿下の眉間も和らいで、いくらか呆れたような気遣うような、優しい目を向けてくる。


「どうなることかと思った。お前もお前の旦那も肝心な所がヘタレで困る」

「ヘタレじゃないわよ。ザックは確かに物事を考えすぎてるけど……私は、ほら、恋に盲目な乙女だったから?」

「どの口が。……そうやって茶化せてんならずっとマシだな」


 今日は砂糖対応だ。常日頃からそうなら良いのにと思うけど、この男がデフォルトで砂糖なのは私の妹に対してだけだった。


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