第6話 伯爵の供述6

 


 はっとした。思わず目を見開いて顔を向けると、目の前ではにかんだ笑みを浮かべる女神がいた。天使と女神のハーフ。いや、キューピッドって女神の息子だったような。目を泳がせていると、ルナさんは口を小さく動かした。


「ひさしぶり……」


 息を、呑んだ。


 嬉しかった。悲しかった。その一言だけで思い知らされた。俺、全然ちゃんとできてない。身なりがとか、能力がとかじゃない。気持ちの問題、覚悟の問題だ。


 ……諦めきれない。彼女が幸せになれば良いなんて大嘘で、どのような理由であれ彼女と結婚できるなら願ったり叶ったりで、この期に及んで彼女に振り向いて欲しいなんて。


 罰当たりで、下心しかなくて、諦め悪くて、俺は何も変わってない。彼女はこの結婚で華やかな首都を離れることになって、今もしかしたら首都でやりたいこともあるかもしれないのに、俺のそばを離れられない、離れたら魔力を抑えられないから。


 彼女の方がもっと辛いはずだ。それを覚悟して自分の気持ちは置いておいて、彼女のために夫になろうと、そう決めたんじゃなかったか。


 ああ、こんな結婚上手くいくはずない。ようやく現実になった誓いのキスの感想も何もかも、絶望に塗りつぶされて消えていった。


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