第66話 相談する相手間違えたか? ってそもそも他に出来る人いねぇや
「皆さんに質問があります。女子と仲直りするにはどうしたらいいのでしょうか?」
昼休み、昼食を終えた俺は向かい合わせにした四つの机にいる友達を見る。
そして、碇ゲ〇ドウばりのポージングで大地、空太、隼人に対して質問した。
俺の真剣な表情からの若干フワ付いた内容に全員が黙って俺を見る。
大地は喰いかけの菓子パンを片手に、弁当を食べてる空太は箸を止め、左手でスマホを弄りながら隼人は咀嚼を止めた。
「どうした急に? 誰かとケンカでもしたのか?」
大地の言葉に俺は頷く。
「少し前にゲンキングと話をしててその流れで怒らせてしまって......もちろん、早めの鎮火をしようと思ったんだけど、どうにも避けられてるっぽい感じで」
「ふ~ん、アイツがな。そういや、久川の奴も機嫌悪そうだったな」
隼人は何となく察した様子で後ろを振り向く。
黒板側の近くの席には二つの机を向かい合わせにして食事をしている玲子さんとゲンキングが。
俺も動きに合わせてみれば、ふとゲンキングと目が合い、彼女はそっと目を逸らす。
「何したんだ?」
空太が食事を再開して聞いてくる。
まぁ、当然の質問だわな。なら、早速――と行きたいところだが、それはちょいと難しい。
というのも、白樺先輩からの指示で口止めされてるからだ。
俺が周知させていいのは玲子さんを除き信用できる一人までとされているのだ。
前提として、俺は今目の前にいる三人を信用していないわけじゃない。
しかし、隼人に知られて妙なちょっかいを出されたり、彼女を欲しがってる大地に血涙した目で見られたりするのを防ぎたかったからだ。
空太は二人よりはマシだけど、ふいにボロが出そうな気がして。
なにより、俺が先輩に「あなたの友達を教えて欲しい」と紹介した時に、三人とも審査に落とされたのだ。
唯一通過した人物がゲンキングで、彼女に話してみればプッ〇ンプリンよ。
泣けるぜ。
「俺も良く分かってない。ただ普通に話してただけなんだけど......地雷を踏んだっぽい。
ただ恋愛相談されたから返しただけなのに」
俺は事実を言うわけにもいかず、内容を捻じ曲げた。
ゲンキングが俺に恋愛相談したことになっちゃったけど許して!
さすがにこの三人がゲンキングに対して「拓海に恋愛相談したらしいな」みたいな話しかけ方はしないと思うから、今だけ隠れ蓑にさせて!
「「「いや、明らかにそれだろ」」」
三人からそうツッコみされた。
でも、この返しは想定してた。
俺だってそう聞いたならそう返すし。
これはあくまで早く本題に入るまでの過程。
「どんな内容で返し......あ~、さすがに本人がいない前で聞くのはあれか」
「本人がいても聞く内容じゃないだろ」
頭をかく大地に、スマホを飯を食い終わったのか弁当を片付ける隼人が指摘した。
「ともかく、どうやったら仲直りできるかって話」
「そういわれてもな~、内容を聞かにゃ答えようもないし」
だよな。うん、正しく大地の言う通りよ。
さすがに無茶な質問の仕方だったかな~、と思っていれば、意外性の空太が別解釈をしてくれた。
「まぁ、相手が怒ってる内容がわからなきゃどうしようもないが、俺の姉の話であれば彼氏とケンカした時一週間ぐらい怒りの熱は冷める様子は無かったぞ」
「つまり、いくら謝る内容が見つかっても相手が落ち着かなきゃ取り付く島もないってことか」
「あくまで、俺の姉がそういうタイプだって話だけどな」
空太は箸で摘まんだタコさんウインナーを口に入れる。
ちなみに、空太の弁当は姉の手作りらしい。
手作りでタコさんウインナーは気合入ってるよな。
「逆に俺の姉貴の話で言えば、その時点で捨ててる感じだったけどな」
空太の内容に同調するように隼人がしゃべりだす。
え、お前の姉ちゃん怖いな。
「まぁ、急に捨てる感じじゃなくて猶予を与えて謝罪に対する審査をする感じらしいけどな。
その謝罪の内容、態度、仕方と諸々含めて姉貴の中に存在する評価で基準点を満たせば復縁らしい」
「それで合格できた奴いるのか? 確か、お前の姉ちゃんって超がつくほどのハイスペックなんだろ?」
「続いた奴は一人だけいたな。つっても、1か月ぐらいだったけど。
どっちかって言うと、姉貴の場合は興味が失せるらしい。
自分が原石だと思った相手が勝手に薄汚れて」
まぁ、自分のパートナーとの開きがありすぎれば劣等感を感じるよな。
俺だって隼人とはこんな感じだが、今だって劣等感を感じないことはない。
玲子さんだって、ゲンキングだって自分に対して眩し過ぎる存在だ。
なんとなくその勝手に薄汚れていく人に同情出来てしまう。
「ってことでどうだ大地? お前彼女欲しがってただろ?
立候補するなら姉貴に取り付いてやってもいいぜ?
多少の年齢差なら気にしないようだからな」
その言葉に大地は腕を組み、少し考えれば答えた。
「それ絶対息苦しいだろ?」
「そうだな。根気がねぇと無理だな。大抵の奴らは一日で悲壮感漂わせてたから」
「却下でお願いします」
大地の回答を予想していたのか「だろうな」と隼人は笑う。
もうここ最近は自然と笑ってる。
その笑みには小学生みたいなイタズラっぽさがある。
「ただ、一目見てみたいな。どうせお前の姉ちゃんのことだから美人なんだろ?」
「そうだな。通りを歩けば周囲の男どもは揃って目線を送るほどには」
「マジか、いいな~。俺、弟しかいないからよ。羨ましいぜ」
「俺は一人っ子だよ。んで、俺も見てみたい」
「お前はダメだ」
大地の話に乗っかって言ってみれば、速攻で却下された。何故?
「俺如きが会えると思うなよ的な?」
「俺はシスコンじゃない。むしろ、姉貴には苦手意識を持っているぐらいだ。
だが、それはそれとしてお前を合わせるわけにはいかない。絶対にだ」
隼人が俺の目を見て凄んでくる。
これはなんか別の理由で合わせたくないって感じだな。
あれか? 学校で孤高の狼気取ってるから友達がいることをバレたくない感じか?
つーか、思いっきり話が脱線してるな。
「ごほん、ともかく、俺はしばらくゲンキングと距離を取ればいいわけだな?」
「しばらくっつーか、相手が落ち着くまでな。ま、逆効果の場合もあるが」
「ちょい待たれよ、その言葉のせいで不安が残るじゃねぇか」
隼人の奴、ハッキリしてくれよ。こちとらそんな人生経験してねぇんだよ。
俺がそう言えば「相手を見極めろ」と言葉を返された。
そんな一見バトルシーンにありそうなカッコいい言葉言われてもなぁ。
*****
―――ガールズサイド
「......ハァ~、また目を逸らしちゃった......」
「そんなにため息を吐いては幸せが逃げるわよ」
頬杖をついて重たいため息を漏らす唯華に対し、玲子は本を読みながら答える。
ちなみに、玲子が読んでる本のタイトルは「
「ほら、前に言ったじゃん? 拓ちゃんから疑似恋人の話を聞いたって。
わかってるんだよ? 別に付き合ってるわけでもないのに、怒るのは筋違いだって。
でも、あの時はあまりの衝撃についカッとなっちゃって......それからなんとなく、顔を合わせづらくて......」
「そう」
「って、レイちゃんはどうしてそんなに落ち着いてるの?
むしろ、レイちゃんこそ怒るべき内容なんじゃないかって思うけど」
感情の起伏が乏しい玲子だが、感情を見せることはある。
故に、唯華からすればわかる。
今の玲子があまりにも普通過ぎることぐらい。
それが唯華からすれば若干恐怖感を抱かせていた。
玲子はペラッとページをめくれば、淡々と返した。
「大丈夫よ、どれだけ色恋で騒ごうとも所詮は法に基づかないただのお遊び。
法を制したものが勝ちよ。それがこの世界の事実」
「時々、レイちゃんの発想の広がり方が怖いよ。間違っちゃいないと思うけどさ」
「ふふっ、半分冗談よ。ただ拓海君はヒーローだから。
彼が行動する時はいつだって誰かを助けたい時。
私はその邪魔をしたくないの」
「レイちゃん......」
「それにどうせ今の彼には何したってまともに響くことはないわ」
玲子は本に栞を挟めば、立ちあがる。
そんな彼女の行動に目線を合わせながら、唯華が首を傾ける。
「どういう意味?」
「そればっかりは唯華にも教えられないわ」
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