第24話 なんかわからないけど友達確保!
本来なら今の時間帯は無人である教室に一気に二人の生徒が登校してきた。
それもこれまでは友達であったが、今回は完全新規の男二人である。
名前は確か.....【
そんな二人のうち茶髪でツンツンした髪型の薊さんが朝からテンション高く声をかけてきた。
朝から声デカいな~。
「えーっと、確か......なんとかだったよね? 朝から何してんの?」
「早川です。まぁ、やってることは見ての通り掃除ですけど.....」
「あ、そりゃそうか。じゃ、なんでこんなことやってんの?」
くっ、会話のテンポが陽キャのそれだ!
会話のキャッチボールに対するレスポンスが早すぎる!
それにしても、なんでこんなことをか。
これまでは相手が玲子さんや玲子さんの友達であるゲンキングであったから素直に言っていたが今度はどうする?
イメージアップのためですって正直に言うべきか?
それともなんかごまかして言うべきか?
言うにしても冗談めかして言った方が空気も和らぐか?
くっ、対応の仕方がわからない!
ええい! こちとら精神年齢35ぞ!? 大人の対応力見せてやらぁ!
「そりゃ、もちろんイメージアップのためです!」
堂々と言ってやった。それも決め顔で。
やった後だからわかる。恥ずかしさで壁に頭叩きつけたい。
しかし、決して崩さない。例え相手が困惑していようとも?
「どういう意味?」
今度は日立さんが声をかけてきた。
女子からクール男子と名高い彼がだ。
「まぁ、ぶっちゃけ言うと俺のイメージってめっちゃ悪いじゃん?
ジャ〇アンのス〇夫ポジションなのよ。だから、そのイメージを変えるために毎朝こうやって美化活動に勤しんでる。
そしたら、誰かが気づいてアイツいい奴じゃんってなるかもじゃん?」
「まぁ、確かに前は結構ガラの悪い奴にかかわってたしな。
なんとなく好き好んでいるわけじゃないのはわかってたけど。
でも、急に
薊さんがそんなことを言ってきた。
やっぱり生の声ではそういう風に映ったのか。大方予想通りだな。
「だけど、その言い方的にやっぱり違うんだな。だって、その後はすっげー大人しいし」
「ん? そうなのか? 全然気が付かなかった......」
薊さんの言葉に日立さんが初耳って感じで驚いてる。
すると、薊さんは「だって、お前大体人の話聞いてねぇじゃん」と言い返していく。
二人で登校するぐらいだからやっぱり仲が良いんだな。
「それじゃ、休み時間に度々金城と勉強してんのもイメージアップか?
正直、最初めっちゃ違和感あったぞ」
「それも理由としてはあるけど、単純に俺の学力が激ヤバだったから見てもらっただけ。
言っておくけど、金城はそこまで悪い奴じゃないぞ?」
ま、今だから言える評価だけどな。過去のことは大人の俺が水に流してやるか。
そう言うと「そうらしいな」と薊さんが意外にも肯定的な返事をしてくれた。
へぇ~、俺への教師活動が図らずともアイツのイメージアップにも繋がっていたとは。
「にしても、そんなことを堂々と言える奴とは思わなかったぜ。お前、面白れぇー奴だな」
なんか少女漫画のイケメンかドラゴ〇ボールの悟〇のどちらかしか言わないような言葉を現実で言われる日が来るとは......ちょっと感激。
そんなこと思ってると薊さんが俺の方にやってくる。
そして、スッと手を出してきた。ん?
「せっかくだし友達になろうぜ。なんかお前といると面白いことになりそうだし」
まさかそっち側から申し出てくれるとは。よっしゃ! 隼人以外の男友達確保!
「是非よろしくお願いします」
「固ってぇな~、俺のことは大地でいいぜ。俺もお前のことは拓海って呼ばせてもらうから」
「それじゃ、よろしく大地」
「おう!」
わぁ、距離の詰め方がザ・陽キャって感じだ。
しかし、男っておかげか別にどうって感じもしないな。
それよりも友達が出来たことによる嬉しさの方が大きい。
「それじゃ、俺も大地が認めたなら認めよう。空太でいい」
「あ、うん、よろしく」
日立さん改め空太は相変わらずクールだな。玲子さんとはまた違うクールさだ。
まぁ、最近俺の中で玲子さんがクールっていうイメージが崩れてるだけだけど。
そんなことを想ってると大地が空太の肩を組んで彼に関することを教えてくれた。
「こんなクールぶってるが実はコイツめっちゃバカだから。
後、人の話聞かないことも多いけど気にしないでくれ」
「バカ?」
その言葉に疑問に思うと
「クールキャラってかっこいいだろ? だから、意図的に口数減らしてる。
さっきイメージアップって言ってたけど、実は俺もクールキャラを定着させようとしてるところだったからすごく共感した。一緒に頑張ろう」
「あー、なるほどね」
コイツは確かにクールキャラではないな。
抑揚無く淡々としゃべってるけど、言ってる内容は結構アホっぽいし。
もしかしたらしゃべり方からしてそうなのかも。
だとしたら、ある意味スゲーな。
「よっしゃ、せっかく友達になったんだからレイソ交換するべ」
「そうだな。同士交換しよう」
「あ、うん、オッケー」
勢いに若干コミュ障が発生しながらも三人でレイソを交換していく。
はわわわ、俺の友達一覧にさらに二人の友達が! それも男友達が二人も!
それにそれに空太の奴、アイコンが中学二年生が好きそうなロザリオだ~!
絶対患ってる奴だこれ~!
それから、二人にも協力してもらいながら朝掃除を済ませた。
同年代の男友達と他愛もない会話が出来たのは久々だったので時間があっという間に過ぎた気がした。
―――昼休み
「―――ってことで友達出来たんだよ。凄いだろ?」
「なるほど、手駒増やしたってわけか。上々だな」
「言い方がひねくれすぎだろ」
昼食の時間になって大地と空太から誘われたが、申し訳なく断らせてもらい今は隼人と一緒に食ってる。
そして、今日の朝の出来事を話してみればこの反応よ。
「お前も少しは友達作れよ。俺以外にもさ」
「余計なお世話だ。それに前も聞いてただろ? 価値もねぇ奴とつるんだって意味ねぇ」
「俺をイジメてた連中とはつるんでたのにか?」
「ありゃ、ただの暇つぶしだ。行動がバカすぎて一周回って笑えてただけだ」
相変わらずプライドがベ〇ータのせいか周りを見下し過ぎている。
正直、コイツが一人孤立しようが俺には関係ない......とイジメられていた頃の俺ならそう思っていただろうが、友達の今は気になって仕方ない。
まぁ、それが余計なお世話って感じなんだろうけど。
でもな? 一匹オオカミ気取ってたっていずれは限界来るぞ?
それに孤独ってのは本当に辛いものだ。
それは俺が身に染みてわかっている。
俺のような人間が周りに世話を焼いている暇があるのか? と思うかもしれない。
だけど、自分がよくて周りを蔑ろにしてるようじゃ結局
だから、お節介と言われようともここは行動すべきかもしれない―――金城隼人のお友達作ろう大作戦を!
具体的なことは後からで。
「ハァ、サ〇ヤ人の誇りもほどほどにしておけよ? 変わるのは早い方が楽だぞ?」
「お前が何を言いたいのかはわかんねぇが、とりあえずベジ〇タをバカにすんなよ。俺、意外と嫌いじゃねぇからな?」
「なるほど、シンパシーってやつか」
「てめぇこの、言うようになったじゃねぇか。五月の定期試験楽しみにしてるからな。
一桁いけるんだよな? その余裕があって言ってるんだよな?」
「俺はウー〇ンだ。ギャルのパンツを所望している」
「違う、お前はニコチ〇ン大魔王だ」
「なんでだ! せめてグ〇ドだろ!」
「どっちにしろ体色緑で小せぇな」
割と踏み込んで小馬鹿にしてみたが思ったよりも怒られず穏やかな時間を過ごした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます