第4話 改造計画スタート
俺、今とっても困惑してる。
だって、俺の横に学校の高嶺の花の一人である久川玲子が座っているのだから。
時間がある? とか聞かれたから断る理由もなくて、つい「ありますけど」とか答えちゃったけど、それを答えてから妙な間がある。
つーか、めっちゃ良い匂いが横からするんだが。
いや、嗅ぐな。息を止めろ。
今の俺の年齢は10代だとしても、精神年齢は30代だぞ?
それも子供部屋ニート
本来同じ空気を吸うのもおこがましいはずだ。
そういうわけで、俺としては一刻もこの場から抜け出したところなんだけど......久川はがっつりお弁当開いて長期戦モード。
不味いな......つーか、今更ながら心の中で苗字呼び捨てにしてるけどいいのかな?
「そ、その......一体何の用かな?」
その質問に久川はビクッと反応する。
あ、すまん! 別に圧をかけるつもりじゃ! あぁ、コミュニケーション不足の弊害が!
久川は俺をチラッと見てすぐに視線を外すと一つ深呼吸して質問してきた。
「私のこと......わかる?」
え、これはどういった質問? 確か、小学生の頃に少しだけ関りあったぐらいだけどそのこと?
それとも単純に久川という人物を認知してるかってこと?
突然昔のこと話し始めて知り合い面されても気持ち悪いだろうから後者でいこう。
「わかるよ。久川玲子さんでしょ?」
「......!」
僕が久川のフルネームを呼ぶとなぜか彼女は花を咲かせたようにパァと嬉しそうな顔をする。
え、なんか俺が知ってる久川とまるで違う。
俺の知ってる彼女はもっと寡黙で必要な時以外男子に話しかけないような存在だったはず。
「それで君は早川拓海君」
「う、うん......そうだけど」
「私、早川君の味方だから!」
「?」
突然の味方宣言。これは一体何事か? いや、普通に嬉しいんだけどね?
久川に限って裏で何かするようなタイプには見えないし。
しかし、俺が知ってる彼女と違い過ぎて今脳がバグってるんだよな。
「あ、ありがとう?」
俺がそう返答すれば久川は再びパァと笑みを見せる。
相変わらず表情の変化に乏しい彼女だが、その分体に現れるというか両手で拳を作って胸の前でガッツポーズしてる。え、可愛い......。
それから、特に会話もなく黙々とお昼の時間を過ごしていった。
最初の頃よりは緊張せずに済んで食事ものどを通るけど、相変わらず困惑した頭が解消されることはなかった。
―――自宅
家に帰ってお弁当のことを母さんに伝えれば、なぜか俺が怪我をして帰って来た時よりも心配された。
母さんが「変な病気になっちゃった!?」と言い始めた時はいよいよ不味いと思ったので、ちゃんとダイエットしたいからという事情を説明。
母さんは「育ち盛りだから食べなきゃダメだと思うんだけど」と渋っていたがなんとか説得した。
いいかい? 母さん。運動していない俺が育つのは横ばかりなんだ。
それにそれは世間一般的に“育つ”とは呼ばない。デブる、だ。
夜のプライベート時間では俺の俺による俺のための改造計画をスタートさせた。
というわけで、最初は俺からほとんど抜け落ちてしまった知識を取り戻すように勉強をし始める。
やり始めてわかるが、こんなのあったな~という懐かしさばかり感じて肝心の学力はゴミくそであった。
正直、中学レベルも怪しい。
幸いなのはまだ高校生活が始まったばかりという点だが、それは油断していい理由にはならないので考えないようにしよう
やばい、まじめにやって学年最下位取る気しかしねぇ。これは休み時間もやるっきゃない。
部屋中の娯楽という娯楽からの誘惑を断ち切りながら勉強すること数時間。
集中力が切れてきたところでもう一つの改造計画に移った。
それは当然ダイエットである。
このだるんだるんの体からおさらばしてモテボディへと生まれ変わるのだ! と、意気込みもほどほどに実際の理由としてはやはりこの腹の肉が邪魔なのだ。
それに俺にとってこの体形は負の象徴でしかない。
つまりこの肉体を脱却した時こそ俺は初めて生まれ変わる気がするのだ!
というわけで、痩せて同時に細マッチョを目指すならばやはり筋トレは必要不可欠。
ダイエットに筋トレは辛そうとすぐに思ったが、こんなやり直すチャンスをもらっておいて今更弱音はなしだろう。
なによりマザーテレサのあの格言がある。
俺の思考が弱気であるうちは俺は一生変われない。
故に、俺が生まれ変わるには弱音なんて吐いてられないのだ!
諦めて気合入れろ! 俺!
そう思うようにしてもやはり俺のモチベ維持のために筋トレをするだけの理由を見つけてきた。
筋トレして良いことその1“基礎代謝が上がる”こと。
調べたことをそのまま言うと、筋トレをすることで筋肉量を増やし、その分基礎代謝を上げることができるので結果的にカロリーを多く消費できるということらしい。
ちなみに、基礎代謝は“生きてるだけで消費するカロリー”だと。
筋トレして良いことその2“カロリーを消費できる”と。
これはまさに読んで字のごとくだ。
そして、筋トレで気を付けるべきことは有酸素運動を取り入れる、アンダーカロリーを厳守、ストレッチをする、無理をしないの4つ。
アンダーカロリーとは“1日当たりの消費カロリーが摂取カロリーを下回る状態”らしい。
また、急激に痩せようとすると体が勝手に体が壊れないように守る機能があるらしく、その期間に入ると痩せにくくなりリバウンドしやすいとのこと。
というわけで、1か月での減量目安は体重×0.05。
俺は現在83キロなので原料目安は4.15キロ。
この目安まで痩せていいというわけだ。
普通にやってても1か月で4キロ痩せれるかこれ?
まぁいい、もともとこっちは長期戦モードなのだ。
例えなんであっても俺はやると決めた!
「目指せ細マッチョ!」
そして、俺はダイエットに効果的な筋トレをスマホで探すと早速実践し始めた。
筋トレを始めたその日、筋トレ後は汗を流してまた勉強するつもりだったがへとへとになってしまい泥のように眠ってしまった。
翌朝、体が筋肉痛で鉛のように重く痛いがそれでも俺が動く。
無理をしないこととは言っていたが、多少無理せんと俺の場合すぐに怠ける。
というわけで、現在朝の6時。
玄関前で軽く体を動かすと日課にしようと思っている朝のランニングを始めた。
走るたびに腹が躍るのをひしひしと感じながら30分かけて家まで帰ってくるルートを模索。
途中、体重で膝が悲鳴を上げたので呼吸を整えながら歩き、少し楽になったところで再び走り始める。
うん、最初はこれぐらいにしよう。そうじゃなきゃ続ける前に膝が壊れかねない。
俺が家に帰ってくる頃にはまるでサウナに入った後かのように全身から汗が噴き出していた。
足はとっくに棒のような状態になり、壁を伝って何とか歩きながらシャワーへ。
走ってる最中、何度この体が雑巾のように絞られて全身から汗が噴き出せば痩せれるんじゃないかと思ったことか。
正直、早くも心折れそうである。だけど、このままじゃ俺は昔のクズのままだ。
「よし、俺でもやればできる」
思考で弱気になりそうなら言葉で変えて出してしまえばいい。
どちらにしろ、思考で言葉が変わるのなら言葉そのものを変えたっていいだろう。
逆に思考もそっち寄りになるんじゃね? 知らんけど。
とはいえ、まるで一日分の体力を使い果たしたような感じだけど、むしろこっから本番なんだよな~。
俺は昔の自分が如何にだらしない恰好をしていたせいで今苦労しているかをスーッと涙を流しながら後悔を噛みしめると、朝食を食べて学校に向かった。
その後、教室にて机の上で白い灰のような俺を隼人が「何してんの?」と声をかけるのは言うまでもない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます