第11話 お兄ちゃんを(お兄ちゃん)と思えなくなった
俺達はそのまま猫カフェに2時間ぐらい滞在してから外に出た。
沢山の猫と触れ合った気がする。
それからお見送りに出て来た姫路さんを見る。
そんな姫路さんは俺達を見ながら穏やかな顔になっていた。
そしてこんな事を言ってくる。
「.....今日は彼を連れて来てくれて有難う。.....そして君も有難うね」
「.....はい」
「ですね」
「鳴ちゃん。.....頑張ってね」
「.....が、頑張るって何をですか.....!」
「ひひひ」
姫路さんは口元に手を添える。
恥ずかしそうに反応する鳴に対して姫路さんは嬉しそうだ。
そんな感じで手を振る姫路さんと会話をしながら俺達は頭を下げて歩き出す。
そしてちょっとしてから、楽しかった?、と鳴が聞いてくる。
俺は横を見てから、ああ、と答える。
「とても楽しかった。.....お前さんは楽しかったかな?デッサンとかしていたけど」
「.....私?そうだね。.....とっても楽しかった」
「.....それは結構」
俺は笑みを浮かべる。
そしてスケッチブックを見る俺。
さっき持っていたバッグ以外の袋に入っていたのはこれだったんだな、と思う。
そう思いながら鳴に向く。
「画廊の絵。凄かったな」
「綺麗だね。あれがプロっていうものだろうけど」
「そうだなぁ.....」
「.....私はまだまだ未熟だね」
「.....いや。お前は十分凄いと思う。木炭で綺麗な絵を描いているしな。本格的だよ」
「うん。でも。まだまだ色々と鍛えないといけないね」
「.....そうか」
そんな会話をしてから。
無言になる俺達。
そして歩いていると.....目の前にみかんジュースの表記があった。
どうやら出店の様だが。
俺は鳴を見る。
「飲むか?オレンジジュース」
「.....そうだね。.....ちょっとこのもどかしい気持ちをチェンジしたいかも」
「え?まだ何か悩んでいるのか?」
「色々だよ。.....私は何せ女の子だからね」
「.....そうか」
そんな感じで俺達はジュースを買う。
そして俺達は店員さんからジュースを受け取ってから。
近くのベンチに腰掛けて飲み始める。
これは美味いな、と思うジュースだった。
「私ね」
「.....ああ」
「.....情けないよね。まだペットロスでクヨクヨしてるし」
「それは情けないんじゃないよ。.....至って普通の身体の防御反応だろ」
「君が側に居てくれたからそう思える」
そして上目遣いで俺を見てくる。
有難う、と言いながら。
俺はその姿を見ながら、お、おう、と赤くなって反応する。
これは参ったもんだな.....、と思う。
何故ならいちいち可愛いから。
「.....ねえ」
「.....何だ?」
「.....やっぱり良いかな。私がとても幸せって事を伝えたかったんだけど.....」
「.....いちいち恥ずかしいなお前」
それから俺に寄り添って来る鳴。
俺はその姿を見ながらまた赤くなってしまう。
そうして居ると鳴は、うん、と言いながら立ち上がった。
俺は?を浮かべてその姿を見る。
飲み物を一気に飲む。
「.....頑張ろう」
「.....お前.....?」
「.....何だか色々あるけど。頑張りたい」
「.....そうか」
そしてやる気に満ち満ちる鳴。
だけど何かが引っ掛かっている様な感じの様に見える。
俺は、うーむ?、と思いながらその姿を見る。
考えながらだったが。
俺たちはその日は帰る事になった。
☆
「うふふ。デートはどうだった?お兄ちゃん」
追い出した張本人を前に。
俺は苦笑い。
だが柔和に答えた。
「.....まあ.....そうだな。.....そこそこだ」
「?.....それは?.....そこそこって?」
「.....色々思う所があってな」
「.....そっか」
リビングで洗濯物を畳んでいた。
それから複雑になる夢。
俺はその姿を見つつ、夢、と聞く。
すると夢は、ん?、と優しげに向いてきた。
「お前もそうだが.....鳴も何か俺に話したいんじゃないか?」
「.....え?」
「.....何か隠し事してないか?」
「.....隠し事?.....それはどういうの?」
「大きな隠し事だよ。.....言い表せないけど。.....俺、失恋しているからそういうの分かるんだよ。まあそれは恋愛だけど」
「.....成程ね.....」
夢は歩いてゆっくりこっちに寄って来る。
それから俺を見上げる様に見てきた。
ねえ。お兄ちゃん。私は考える時間が欲しかった。.....この感情は何か、という感じでね、と言ってくる。
そして赤くなった。
「兄妹って思っていた」
「.....夢?」
「.....私はずっとこれからも。.....兄妹って思っていた。今までずっと。.....でも違うんだなって思った」
「.....それはどういう意味だ?」
「.....お兄ちゃん」
真剣な顔で見上げてくる夢。
俺は???を浮かべながら夢を見ていると。
夢は俺に寄り添って来た。
それから、お兄ちゃんが好き、と言ってくる。
ちょっと言っている意味が分からなかったが.....少しだけ冷静になり。
「ホァ!?」
と仰天の声が出てしまった。
そして離れる夢を見る。
夢はニコニコしながら、お兄ちゃんが異性として好きになった、と言葉を発した。
俺は、は.....!?、と反応する。
信じられないのだが。
「.....ど、どうなっている!!!!?」
「私ね。多分.....不良から助けられた時に好きになるきっかけになった、って思う。だからその為に冷静に考える為にお兄ちゃんを追い出しました」
「.....?!」
俺は真っ赤になりながら慌てる。
そして義妹は、それだけだから、と柔和になる。
よく見れば。
頬が朱に染まっており。
耳も赤かった。
「浅い回答だけど.....お兄ちゃん。返事は今は要らないから。片隅にでも私の感情を置いとってください」
「.....信じられない.....」
「まあムードもへったくれもない告白だけど.....至って平凡に過ごしたいから。好きであってもね。だからこういう告白です」
「.....」
そして俺から離れて洗濯物を畳んでから、じゃあ洗濯物を仕舞ってくる、と洗濯物を持ってからそそくさと去って行く.....夢。
俺はしばらく呆然として何も頭に入らなかった。
まさか義妹にまで告白されるとは思わなかったから、だ。
それもこんな簡単に。
「.....やれやれ」
そんな事を言いながら俺は天井を仰いでから。
そのまま鞄を置いた。
俺の人生って本当に色々だな、と。
そう思いながら。
アイツ本当にこんなスルー的な感じの告白って恥ずかしくないのか?
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