第8話 逆だね
俺と夢は本当に昔から一緒に居る。
生まれた時から一緒だった筈だ。
俺が失恋した時も一緒だった。
のだが.....その夢の様子が何かおかしいんだが。
何というか動きがぎこちない。
不良に絡まれた昨日からだけど。
そんな夢と疑問ばかり湧きながらも別れて俺はいつも通りに登校した。
教室が何かしら俺をチラチラ見てからザワザワある中。
鳴が教室にやって来て声を掛けてくる。
「志布」
「うん?.....よお。絵はどうだった」
「.....うん。絵は上手く描けたよ」
教室で鳴に話し掛けられた。
俺はその姿を見ながら鳴を見る。
実は鳴は美術部に所属しているのだが。
その為に何時も絵を描いたりする。
そんな中で今日は絵画を作り上げたいと。
朝早くに学校に来てから今回は俺1人で登校して来たのだが。
まあでも.....考えを纏める事が出来たな。
思いながら俺は鳴を見る。
鳴は、今日は志布。君のお陰で描けた、と赤くなって笑顔になる。
俺は赤くなってしまい俯いた。
そういう事を言うなって、と思ってから俺は顔に熱を帯びた。
するとその事で何か周りの女子がワイワイ言い始める。
んで.....その。
女子の1人からいきなり爆弾を投下された。
「元就くん。遠野さんと付き合っているの?」
「.....が!?」
「その。何か2人一緒に帰っていたから」
「そうそう!何だか仲が良さげだったし.....何よりも手を繋いでいたしね!」
きゃー!、と言いながら教室は歓喜に包まれる。
そして男子達は絶望する。
まあその.....長谷川以外が、だ。
俺は、いや。それは.....、と慌てながら居ると。
意外な事に鳴が口を挟んだ。
「私は志布と付き合ってないよ」
「.....え?」
「え.....?」
教室.....が。
ピタリと静かに歓喜が止まる。
俺は?!と思いながら鳴を見る。
鳴は、でもね、と言葉を発してから。
俺の腕に絡ませてくる。
「.....私は好きな事は間違いない。.....志布が世界の誰よりも」
「ちょ!?オイ!?」
何を否定してから高らかな感じで宣言しているんだ!??!!
俺は慌てながら鳴を見る。
鳴は俺を見上げてから女子達を見る。
そしてこう言った。
私は志布が好きだけど.....でも。
「.....私は世界で誰よりも好きだけど.....この想いはまだ早いって思っている」
「.....早いって?」
「.....失恋しているの。彼は。だからこそ今は今の距離を保ちたい」
「.....そうなんだ.....」
女子達はワイワイ言う。
俺はその姿を見ながら苦笑いをしながら。
そのまま椅子に崩れ落ちる。
すると長谷川が、良かったじゃないか、と言葉を発してくる。
でも先は長いかもね、と言いながら.....うん?
先は長いって何がだ、俺か?、と聞くと。
長谷川は首を振った。
「.....君自身じゃないよ。.....まあでもそのうちに知る事になるだろうから。.....僕の口からは何も言えないな」
「.....???.....お前の言葉は意味深すぎて訳が分からん事がある」
「僕は意味深に言っているつもりはないな。.....でも、意味深、という言葉は合っているかもしれない。.....でもそれを僕の口から言わないよ」
「???」
駄目だな全く分からん。
俺は考えながら?を浮かべてから。
そのまま目の前の鳴を見る。
鳴は俺の視線に手を振ってから答えた。
やれやれ、だな。
☆
放課後になった。
外は相変わらず雨が降っている。
俺と長谷川達は、うーん。やれやれだね、と会話をしながら外に出て来る。
すると目の前に.....何故か夢が立っていた。
俺は?!と思いながら夢を見る。
「なあ。おい。スッゲェ美少女.....」
「確かにな。.....マジかよ」
「女神」
とか言われている夢を見る。
傘を差して誰かを待っている様だ。
俺はその姿を苦笑して見ながら、夢、と声を掛けると。
夢がゆっくり顔を上げて俺に笑んだ。
「お兄ちゃん」
「.....どうしたんだ。ここから1キロぐらい距離があるぞ」
「.....うん。今日は来てみたかった。お兄ちゃんの高校に」
「そうなのか.....それは結構だが.....?」
何故に今日?
俺は首を傾げながら見る。
まあ良いじゃない、と言葉を発する夢。
そして、長谷川さん。それから鳴さん。行きましょう、と促す。
「.....うん」
「そうだね」
それから俺達はそのまま帰宅を始める。
その途中で番地が違う長谷川と別れ。
そして夢と鳴と俺となる。
何というか.....3人で歩くが.....その。
3人で歩きながら違和感を感じた。
何を感じたかといえば。
「.....」
「.....」
「.....?!」
目の前の2人。
物凄いチラチラと俺に対して視線を感じる。
特に鳴が夢を見ながら何かを考えていた。
その姿を見つつ俺は考える。
うーぬ?、と。
「.....夢ちゃん」
「.....はい?何でしょうか.....?」
「.....私は志布に告白しているんだ」
「.....」
「.....?」
唐突に何を言っているのだ。
それは既に分かっているのでは?
俺はその言葉に夢を見る。
夢は、はい、と答えた。
そして、でもそれが?、という感じに聞き返す。
「.....うん。だよ」
「.....はい」
「.....???」
ちっとも分からずその。
疑問ばかりだが。
何かがそこには固い決意として秘められている様な気がした。
2人は分かっている様なので、まあ良いか、と思う。
俺はちょっと理解が及ばないのだが。
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