第6話 夢色、鳴色、世界色

鳴に何故か告白された。

何というかその瞬間に俺の中の世界が一変して変わった気がする。

この世界に色が付いた様に。

だけど俺の中ではもどかしい、複雑な思いばかりだった。

何が複雑かと言えば先ず俺に恋しても意味ないと思えるのだ。


こんな将来、役に立つか分からない鳴よりも劣っている様な人間が、だ。

少なくとも鳴はかなりの天才だ。

何が天才かといえば勉強とかそういうの。

全成績順で3位なのだアイツは。

優秀である。


それに比べ俺はどん底だ。

赤点ギリギリな感じ。

つまり勉強も体育も苦手である。

なのに鳴は俺を好いた。


どういう事なのだろうか。

まあ考えても答えは出ないだろう。

恋とは.....複雑だ。

それから割と苦かったり辛かったり甘かったりするのだ。


「お兄ちゃん」


「.....お。何だ?夢」


勉強していると部屋に夢が来た。

そして漫画本を手に取る。

それからまたベッドに移動してページを捲って読み始めた。

言い忘れていたかもだがコイツも心底な天才である。

総合得点マックス、順位1位のめちゃ天才と言えるかもしれない。


「え?何?ジロジロ私を見て」


「.....何でもない。.....すまん」


「.....ふーん。あ。お兄ちゃん。そういえば鳴さんに告白されたね」


「.....ああ。.....そう.....あ!!!!?」


あまりの衝撃に勢い良く前にのめり出した。

何で知ってんだよ!!!!!

俺は青ざめながら思いっきりバキッと折れたシャー芯を探して。

そしてゴミ箱に捨てながら聞く。

するとニヤニヤしながら夢はベッドの上で静かにあぐらをかく。


それから俺に向いてくる夢。

そして、さっき私は聞いてないって言ったけどゴメン。実際は聞いてたんだ、と答える。

俺は真っ赤になる。

嘘かよ!


「.....でも大胆だね。あんな真似をするなんて。鳴さんが」


「マジか。全て見られていたんだな.....」


まあそうだね、と答える夢。

コイツという野郎は。

思いながらも、まあそれなら仕方がないか、と思った。

それから、でも良いじゃない。応援するよ?、と言葉を発する夢。


「応援するって言ってもなぁ。.....俺は今は誰とも付き合う気は無いぞ」


「そうなの?」


「そうだな。.....俺は.....釣り合わないよ。アイツとは」


「.....そんなの関係ないよ。お兄ちゃん」


私達もメチャクチャ釣り合ってないけど.....でも今が成り立っているよね。

それと同じだよ、と話した夢。

俺は、そんなもんかね、と言いながらギシッと椅子を後ろに傾ける。

それから天井を見上げた。


「お兄ちゃんが思っている以上に良い人だよ。貴方は」


「.....成績が優秀じゃないからな。それに人柄とかもな」


「恋にそんな城壁みたいなのは必要ないよ。お兄ちゃん。女の子が告白するって結構勇気がいるんだよ?」


「.....!」


いつの間にか夢は俺の背後に回ってから。

後ろ側で椅子に座る俺の両頬を持って見下ろしていた。

何しているんだコイツは!、と思いながら赤くなりながら慌てる。

そうしていると、お兄ちゃん。私は思う。.....貴方は本気で恋に病弱だって、と。

俺は?を浮かべながら夢を見る。


「.....失恋の風邪をずっと患っている。そんな感じだね。お兄ちゃんは」


「.....」


「正直。もう良いんじゃないかな。昔の事は昔で。忘れてしまえば良いんだよ」


「.....そんなもんかね」


夢は、うん、と柔和に答えた。

俺はその言葉に、ふむ、と顎に手を添える。

っていうかいつまで掴んでいるのよ!、と思いながら夢を見る。

するとそう思った瞬間にいきなり椅子が倒れてバランスが崩れた。

夢がかなり驚く。


「きゃっ.....!」


「うわ!?」


それから俺達は倒れる。

何というか俺が夢を押し倒すような形で.....うぁ!?

目の前に夢が驚きながら目をパチクリしている。

し、しまった!

俺は赤くなりながら、す、すまん。直ぐに退くから!、と慌てる。


「お兄ちゃん。こういうのは義妹じゃない人にしてあげて?」


「いや!?俺だって態とじゃない。そもそもお前のせいだろ」


「.....む.....確かに私は半分。50%悪いかも」


「50パーかよ」


「そう。50パー。だってお兄ちゃんが崩れ落ちるのが悪い。バランス感覚ノー無しだよ」


「ひでぇな.....」


そんな感じで会話しながら起き上がる俺。

それから夢を見る。

鳴さんにしてあげなよ、とニコッとしながら。


それはまあかなり無理がある。

考えながら見ていると。

あ。そういえば、と夢が切り出した。


「お兄ちゃん。鳴さんに話したんだ。.....私達が血が繋がってない事」


「.....え?.....ああ。まあ鳴るなら良いかもな。.....話しても信頼度あるだろうし」


「結構ビックリされたけど。でも私達はどんな事があってもただの兄妹だから、って言ってる」


「.....そうか。有難うな。夢。そう言ってくれて」


「うん」


そんな感じの事を言われながら俺は夢を見る。

そして夢は何か閃いた様にハッとした。

俺にニヤッと向いてくる。

な、何だこの恐ろしい顔は、と思うのだが。

すると夢は、買い物に付き合って、と言ってくる。


「.....買い物って何の?」


「そりゃスーパーの買い物。.....でもそれだけじゃないけど」


「.....それだけじゃないってのは?」


「お兄ちゃんとデートの予行練習します」


「.....は?」


人差し指を天井に立てる様に宣言する夢。

いやちょ。

デートノヨコウレンシュウって何?

俺は眉を顰めながら赤くなる。


夢は、兄妹だから。せっかく血も繋がってない。だったら鳴さんとお兄ちゃんをくっ付ける予行練習に最適だよね、と笑顔になる。

いやまあそうだけど!?

確かに最適だけどな!


「.....でもお前.....血が繋がってないんだぞ。これではやはりお前を意識してしまう」


「.....私を意識しても義妹だよ?所詮は」


「まあそうだけどさ!?義妹だからだぞ!」


これ絶対に無理があるんだが!?

考えてから提案するが夢は、絶対にやる、と言って聞かなかった。

そして俺は夢の計画に巻き添えにされていく。

これで良いのか?、と思うが.....。

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