第5話 私は貴方が.....

俺、志布はあまり恋をしようと思わない。

まあ理由としては昔あったとある失恋の思い出のせいなのかもしれない。

だけどそれもそれでもう昔。

つまり俺は進化しないといけないと思う。

何か.....動物が進化するみたいな、そんな感じで。


「ふあ.....」


クッソ眠いもんだな。

俺は思いながら6時限目の終わりに伸びをした。

そして肩を回してからそのまま帰宅の準備をする。

何というか今日だけで色々あったな、と思う。

それから居ると鳴が声を掛けてきた。


「帰ろう。志布」


「そうだな。帰るか」


俺は立ち上がってから長谷川に声を掛ける。

だがその長谷川は、僕はちょっと用事がある。.....君達だけで帰ってくれないか、と柔和になる。

は!?、と思いつつ反応すると長谷川は、まあ頑張りたまえ、と言いながらそのまま鞄を持ってから去って行った。

オイ.....マジか。


「.....うーん。志布.....長谷川くんどうしたんだろう」


「いや。正直言って分からない。だけどまあ2人で帰れって話だから.....帰るか」


「そ、そうだね」


何故か俺がそう言って返事をした鳴の頬が赤くなってきた。

俺はその姿を見ながら、どうした?、と声を掛ける。

すると鳴は、何でもないよ、と笑みを浮かべた。

なら良いんだが.....?


「熱でもあるなら.....言ってくれよ?」


「.....何でもないよ!ご、御免なさい」


「謝る事は無いが.....」


「えへ、えへへ」


「.....?」


いや何でこんなに嬉しそうなんだ?

訳が分からず思いながらも俺は帰宅の準備を終えてそのまま帰宅する。

すると横を歩いていた鳴が、ね、ねえ、と尋ねてくる。


そして俺を潤んだ目で見上げてくる。

俺は?を浮かべて、どうした?、と優しく反応する。

すると鳴が、その。手、繋いでも良い?、と聞いてくる。

何!!!!?


「.....な、何でかな?逆に聞くけど」


「.....手を繋いでみたいから」


「ば、バカ言え!?そんな単純な理由で繋ぐなんて.....。それに俺と手を繋いだら付き合っている説が浮上する.....」


「ま、まあまあ。そ、そう。実験だから!付き合ったらどうなる実験!」


「.....実験って.....!?」


じっけ.....実験って何!?

まるで意味が分からないんだが!?

俺は考えながらもこっそりとゆっくり手を差し出してくる鳴。


それから俺をジーッと見てくる。

その姿に何というか静かに汗が噴き出す。

付き合う実験とか訳が分からないよ!

俺は考えながら.....その差し出された手を見てから鳴を見る。

そして額に手を添える。


「.....分かった。そこまで言うなら.....握らなくもない」


「.....そ、そう?ありが.....」


「しかーし!!!!!それには条件がある」


「.....な、何よ!!!!?条件って!!!!?」


身構えて胸を隠す仕草をする鳴。

何でそんな真似をするのか分からない!

だけど俺はこの事を聞かなければならない。

思いながらジッと鳴を見る。


「俺の質問に答えるんだ」


「.....ど、どんな質問.....!?」


「.....お前は.....」


ゴクリと生唾を飲む鳴。

それから俺は聞いた。


お前は俺とデートとか出来るのか、と。


何故俺はこんな事を聞いたかって?

辱めようとしているだけだ。

鳴を、だ。

だが鳴は、何だそんな事?、と苦笑い。

それから直ぐに答える。


「.....うん。.....私、出来るよ?デート」


「.....そうか.....は?」


「.....だから私、デート出来るよ?貴方と」


「.....これ全部、じょ、冗談で言ったんだが?」


「冗談でも私は冗談には聞こえない」


「.....な!?お前.....自分が何言っているのか分かって.....!?」


俺は真っ赤にして抵抗する。

そして路地裏まで追い詰められた。

何故か知らないが、だ。

鳴は段々近づいて来ながら俺の胸に額を添えて顔を添える。

な、何が.....!?


「.....私。.....貴方が好きなんだ」


「.....は!!!!?」


「言ったでしょ。私は.....君が本当に心から好きだって」


「.....そ、そんな馬鹿な!?」


「私は嘘は吐かないよ。.....だって.....この気持ちは嘘じゃないから。ずっとずっとずっと言いたかったけど言うタイミングがなかった」


「.....!?」


俺は愕然としながらそのままうっとりしている目の鳴を見る。

それに対して口を開こうとした、その時。

そうしていると、お兄ちゃん?鳴さん?、と横から声がした。


顔を上げると.....そこに何故か夢が。

って言うかそうか。

ここは中学校の近くか!?

しまった!


「.....今の聞いてしまったか?」


「.....え?何を?」


「.....あ.....聞いてないなら良いんだ。大丈夫だぞ。すまない」


「.....???」


夢はクエスチョンマークをそのまま頭に浮かべながら俺達を見ていた。

そして俺達は中途半端で帰る事になる。

でもちょっと待て。


間違いなく今、俺.....告白されたんだよな?

どうなっているんだ.....何故俺は.....鳴に好かれたんだ!?

意味が全く分からない!

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