第3話 仲の良さの秘訣

妹を異性として見てしまう。

何言ってんのお前馬鹿?死ぬ?キモい、と思っているそこのお前さん。

妹と血がいきなり繋がって無かったんだ。

昔から仲良かったのに。

マジにビックリだわ。


「いやー。梅雨って嫌だね」


翌日の事。

俺と幼馴染と夢。

3人で学校に行く為に外を歩いていた。

雨が降っている。

傘がかなりの出番だ。


「鳴さんは梅雨はやっぱり嫌いなんですか?」


「それはまあ。だって梅雨って何だか気分が沈むよね。サイクリングも出来ないし」


「まあそうですね。確かに。ね?お兄ちゃん?」


「あ?あ、ああ」


「聞いてる?志布?」


「ああ。聞いてる.....」


すると肩を掴まれた。

それから小声で耳打ちしてくる夢。

何しているのお兄ちゃん。普段通りってそう決めたよね?、と。

俺は赤くなりながら、そうだな、と言う。

それから、何しているの?、と聞いてきた鳴に、な、何でも無い、と回答した。


「お、俺も梅雨は嫌いだからな」


動揺しながら話していると肘打ちされた。

何でや!完璧な演技やったろ!

俺はそう思いながら脇腹を摩る。


酷いな、と思いながら。

すると分かれ道に着いた。

中学校と高校の、だ。


俺達はそのまま夢と別れてから真新しい制服姿で昇降口に向かう。

それから中に入ってから行くと。

鳴が、土曜日晴れたら良いね、と笑みを浮かべて見てくる。

俺はその姿を見ながら、ああ、と柔和に返事をした。


「私ね。.....志布と一緒に外出るの好きなんだ」


「.....ほう。そりゃ何でだ?」


「.....それは一緒にサイクリングして居るのが楽しいって意味だよ」


「んな馬鹿な。冗談でもよせそんなの。俺なんかと一緒に居ても.....」


「自分はそんなにユーモアが無いって言うの?.....それは無いよ。志布。.....私は貴方の事.....」


そこまで言ってから鳴は頬を朱に染めて、教室に、い、行こうか、と切り出す。

何だ今の可愛いのは。

思いながら俺は熱を感じて目をパチクリしていたが。


頬を叩いて正常に戻した。

いかんいかん。

誤解されては困るしな。


「やあ」


「よう。長谷川」


「今日の調子はどうかな」


「.....微妙だな。.....まあ雨も降っているし鬱陶しい」


「そうかい」


教室に来るなり長谷川に話し掛けられた。

俺はそんな長谷川を見てからカバンを下ろす。

そして自分の席で項垂れた。

やれやれ、と思いながら。

お疲れの様だね、と長谷川は言ってくる。


「そりゃまあな。.....色々あってな」


「色々ってなんだい?」


「本当に色々だ。.....まあ.....それ言ってもしゃーねーし言わないけどな」


「ふむ。興味深いな」


「.....興味を持っても意味無いぞ」


長谷川は何時もこんな口調だ。

まあでも本当に接しやすい野郎だと思う。

思いながら俺は周りを見渡す。


幼馴染が女子と会話しながら談笑している。

そして窓から外を見る。

鬱陶しい天気だ。


「長谷川。あくまで仮の話だが」


「うん。何だい?」


小説を読んでいる長谷川がその手を止めて顔を上げる。

そして俺をニコニコしながら見てきた。

俺はその姿に、かなり仲良しの女性が俺に自然と好意を持つと思うか?、と聞く。

すると長谷川は、それは幼馴染の鳴さんの事かい?、と聞いてくる。

まあそれでもあれば.....だが。


「まあ女性というのは魅力たっぷりの生き物だからね」


「.....おう。お前だったら女性にマジに自然に好かれそうだな」


「.....そんな事はないな。.....現に今は恋なんてしてないだろう?恋というのはまだ理解が出来ないものだ」


「確かにな。.....お前まだ恋してないもんな」


「そうだね。だからこそ恋っていうのは不思議なんだよ」


でもそれは置いておいて。

鳴さんが君を好きになる可能性は否定出来ない。

何たって昔から一緒に居るんだからね、と柔和になる長谷川。

俺はその姿を見ながら顎に手を添える。

そして考えていると、ばあ!、と声がした。


「うわ!ビックリした!何だ!?」


「えへへ。何しているのかなって」


「このアホンダラ。マジにビビったわ」


いつの間にか鳴が後ろに居た。

そして俺に笑顔を振り撒いている。

俺はその姿に盛大に溜息を吐く。

長谷川め。黙っていたな?


俺は考えながら長谷川をジト目で見る。

長谷川は肩を竦めた。

それから、何しているって男同士の会話だ、と幼馴染に向く。


「.....そっか。それってエッチな会話?」


「お前な。長谷川がそういう性的なものに興味ないって知ってて言ってるだろ」


「まあ長谷川くんは真面目だしね」


「.....俺への皮肉かな?」


「さて?どうでしょう?」


すっとぼける鳴。

全くコイツは。

思いながら俺はまた溜息を吐く。


それから居ると長谷川が、鳴さん。本当に仲が良いよね。君達、と小説を机に置きながら話してきた。

鳴は、そうだね。幼稚園から一緒だしねぇ、とニコニコした。


「そうなんだね。それは初耳だ。.....何せ志布は話したりしないからねぇ」


「そうなの?」


「まあ.....そうだったな。あまりそういうの話したりしないもんな」


「うん。だからこそ今度聞かせてもらおうかな。お2人さんの昔話」


「うん!良いよ!」


嬉しそうに話す鳴。

何でそんなものを聞きたがるんだ?

思いながら俺は長谷川を見る。

長谷川は、興味があるからね、と笑みを浮かべた。

何か作戦がありそうだが.....?

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