第3話 現代―日本

 私は死んだ侍に擬態し、各地を放浪した。頭が朦朧としており、辿り着いた森の中で倒れるように眠った。私は物にも擬態できるので、何年でも何十年でも、また何百年でも眠り続けることができた。私は目を覚まし、久しぶりに立ち上がり、森の外に向かい歩いた。そこには同じ場所とは思えないほど発展した街があった。高い建築物の群れに見とれていると、何かにぶつかった。前を見ると、通行人の女性が倒れていた。幾つかの卵が割れていた。

「すみません・・・」

「きゃあ!見た目が変、それに、この人、血の匂いがするわ!」

女性が騒ぐので近くにいた男性が来た。話を聞いた男性は、折り畳み式の機種を取り、話した。

「今連絡しました」

「ありがとうございます。最近あまり見ない機種ですね」

「はい。使いやすいので使い続けているんです」

「分かります。私も最近スマホに変えたんです。それより、パトカーが来るまでその人見張るの手伝ってくれますか?」

「いいですよ」

私が困っていると、すぐに高い音を出しながら、赤いランプの車が到着し、二人の男性が降りた。

「この人です!」

「わかりました」

一人が私の前に、もう一人が私の背後に立った。私は危機を感じ、近くにいた四足歩行の動物に擬態した。そして、一目散に逃げた。

「どういうことだ!?猫に化けた。いや、逆に化け猫が元に戻ったのか!」

「どっちにしても未確認生命体だ。とりあえず追うぞ」

二人の警官はパトカーに乗り込み、連絡した。

「ただ今、宣託町内に、血の匂いを発する男性がいると連絡を受けた現場に到着。その後、男性に近づいたところ、猫に姿を変え逃走」

「ね、猫!?」

「もう一度お願いします」

「男性は猫に姿を変え逃走。信じがたいですが、未確認生命体として追跡中」

「ね、猫の特徴は」

「体長30㎝ほど、色は茶色、頭に三本の濃い茶色の模様がある」

「了解」

私の行く手を阻むように、あちこちで赤いランプの車が走っている。私は狭い路地に隠れたが、何故かすぐに見つかった。必死に壁を登り、建物の屋根に上がった。そして、屋根から屋根へ飛び移りながら、逃げた。下を見ると、赤いランプが群れを成して迫るのが見えた。私は眩暈がして、足を踏み外し、溝に落っこちた。町中の人が私の落ちた溝を見ていた。私は流されたが、なんとかしようと痛みを堪え、流れに逆らった。その時、溝の穴から声が聞こえた。

「はあ・・・なんで僕がエレクトをやらなきゃいけないんだ。ゴウキとかトクノスケとか相応しい人は沢山いるのに・・・逃げちゃいたい」

私は少年の独り言を聞き、親近感を感じた。その時、ふと力が抜け、私は流されてしまった。

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