第2話 過去ー日本

 私は港に着いた。そこに、一隻の船があり、貨物が積まれていた。私は貨物に擬態した。作業する人間に持ち運ばれ、船に乗り込んだ。私は疲労から眠っていた。目を覚ました時、既に船から運び出された後だった。私は擬態を解こうとした時、何者かの悲鳴が聞こえた。

「誰かー!お助け!」

「女!命が欲しくば黙って持ち金を寄越しな!」

「これは赤ん坊を養うため主人が働いて集めたお金でございます。渡すわけには参りませぬ!」

「ならばその命頂戴いたす!」

私は居てもたってもいられず、ピザ職人の男の姿になり棒立ちで見ていた。

「誰だ、お前は!見るんじゃねえ!」

「・・・」

「目障りなお前から斬る!」

頭にちょんまげを持つ男が私に向かい、斬りかかる。その瞬間、私は擬態した。

「なんでい!この刀は!」

男は女が逃げるのに気づき、刀を蹴り飛ばし、追いかける。その時、一人の侍が女を庇い、男に対峙する。

「女を狙うとは、見過ごせないな」

「お前が主人か!俺にはもう何もないってえのに・・・ええい!こうなったらやけくそだ!」

男がなりふり構わず斬りかかる。侍は男の太刀筋を見切り、躱す。男が外した反動で転げまわる。落とした刀を取ろうとした男の首筋に私が命中し、男は気絶する。

「やけくそになる気持ちも分かるが、超えちゃならない一線は超えちゃならない。それにしてもこの刀、誰の業物だ?試してみたいものだ」

私は侍の腰に差され、しばらく行動を共にした。峠を越えた侍が一休みするため茶屋に立ち寄った。複数人の侍が茶屋を通り過ぎる。その時、茶屋にいた先客を見つけると、刀を抜き、斬りかかる。その先客も刀を抜き、応戦する。侍は食べかけの串団子を置く。

「いい機会だ。お前の切れ味試させてもらうぞ」

侍は私を抜き、複数人の侍を次々に斬った。最後に残った先客は侍を見て驚く。

「貴方はかの有名な侍、シンメンタケゾウ殿か?」

「如何にも」

「拙者は貴方と戦う日を夢見ていた。是非手合わせ願いたい」

「ここは相応しくない。場を改めよう」

二人の侍は草の生い茂った場に移った。

「恐れながら、タケゾウ殿の刀は存じませぬ。一体誰の業物でございましょうや?」

「分からぬ」

「左様ですか。拙者は、代々受け継がれてきた名刀ムラサメで参りまする。今まで戦った相手の刀を折ったこと数知れませぬ。タケゾウ殿、ご覚悟なされよ!」

二人の侍の刀が猛烈にぶつかり合った。私は体から火花が散ったように感じた。次の瞬間、私の全身を生温かいものが覆った。

「ぐっ・・・ムラサメを折るとは・・・お見事」

「すまない。これはせめてもの礼だ」

侍は私を地面に突きさし、その場を去った。その場は静まり返っていた。その後、雨が降り出し、私は擬態を解いた。

「・・・ひどい目に遭った。というよりもひどい目に遭わせてしまった。こんなことをするつもりはなかった。許してほしい」

私は侍に謝り続けた。激しく降る雨で血を洗い流そうとしたが、完全には流せなかった。

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