第3話 式神現る
『おい、なんで俺達ァこんなことになってるんだァ?』
『……知らぬ。とにかく危険がないか警戒しておけ。我らはどこに居ようと主をお守りする他ない』
若干ガラの悪そうな低い声の男性と、涼しげな声音の男性とが私の首元で、話しをしている。
かなり奇妙な状況だけれど、とりあえず首元を確認してみる。すると、ペンダントが下がっていることに気がついた。
「あれ? これ、ここに来る前にしてたペンダント……」
転生前の私がお祖母ちゃんからお守りとして貰った、木製の小さい筒が下がったペンダントだ。なぜオリヴィアがしているんだろう。外してまじまじと観察する。やはりあのペンダントだ。そして、間違いなくここから声がしている。
「あの……だ、誰かいますか……?」
『…………』
しばらく待ってみても返答はない。
「うーん、そうだよね。きっと病み上がりで幻聴が聞こえたのね」
うんうん、そうでしかない。と、自分に言い聞かせていると、またしても声が響いてきた。
『主、我らの声が聞こえているのですか?』
「え? は、はい! 聞こえてます!!」
(やっぱり幻聴じゃなかった!)
相手の出方を待ちペンダントをじっと眺めていると、筒の中から何やら白い煙が二つ、するすると外に流れ出てきた。
「えっ。な、なになになに!?」
白い煙はもくもくと大きくなっていき、見上げるほどまで高く立ち昇る。天井に届きそうになったところで、煙ははっきりと形をとって私の前に現れた。
「えっと……白い大蛇? いや、きつね?」
目の前には、見たことのない謎の生命体が二体。身体はにょろにょろとしていて蛇のようだけれど、獣のもふもふ感がしっかりある。顔は狐で、一方は顔に青い模様があり、もう一方は赤色の模様が入っている。
眩しいほどに白く輝く毛並みがもふもふととても綺麗で、明らかにおかしな状況ではあるけれど怖さよりも美しいが勝つ。
『ククッ、蛇だってさ。あんなスカした奴らと一緒にしてほしくはないなァ、なぁ相棒?』
顔に赤い模様が入った方の謎の生命体が吐き捨てるように言うと、もう一方はそれを叱りつける。
『コウ、口の利き方に気をなさい。……主、驚かせてしまい誠に申し訳ございません。我らは管狐(クダギツネ)と申します』
「管狐? 妖怪ってこと!?」
こんな西洋風の異世界に妖怪!? それってなんだかミスマッチではないですか!? と、どうでもいいツッコミが頭の中に浮かんでしまうほどには混乱している。
『確かに元は妖怪なのですが、現在は主の守護神になっておりますので厳密には式神のようなものかと』
「式神」
いや、どちらにしても何で私にそんな大層なものが憑いてるんだ。転生したり式神がいたり、頭の整理が全然追いつかない。それなのに、追い討ちをかけるように今度は足元から声が響いてくる。
『まったく、本当よ。まあアンタらは良いとして、なんで私までここに居るのよ』
その声の主は、布団の中で私の足元から、どんどんどんどん上へと登って来ている。ひんやりとした何者かが身体を這う感覚が恐ろしすぎて、視線をそらしたいのに身体が強張ってしまって動かない。
声の主は私の腹部までくると、布団からひょっこりと顔を出した。
『ばあ!!!!!!』
「――――――っ!!」
『……るじ!? ……あ………!』
なんだか人のような何かが見えた気がしたけれど、驚きの連続に耐えきれなかったオリヴィアの身体が意識を手放す方が早かった。
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