読心術を手に入れた?
@mautora
プロローグ 読心術を手に入れた?
「やっぱ河合さん可愛いよな〜」
友人の
河合さんとはこの学園の四大美女とされている
「ま、まあ」
俺は人の容姿について言及するのが恥ずかしく曖昧な反応をとってしまう。
確かに可愛いと思ってはいるが自分の好みがバレるのには抵抗感があった。
ちらっとクラスの陽キャ男子たちと話している河合さんを見ると
「河合さんってさ付き合ってる人いるの?」
「それ気になる!」
「いや、いないよ〜」
(はあ〜男子と話すのきついな〜)
河合さんの不満の声が聞こえた。
「え?マジ?意外だな〜」
しかし話している男子たちは一切気にかけていない様子だ。
(可愛いな〜。絶対河合さんとはお付き合いしたい)
(明日にでも告白しようかな〜)
え?
河合さんと話している男子たちからもなんか声が聞こえてきた。
もう一度河合さんを見てみる。
「えへへ…」
河合さんは苦笑いをしていた。そして
(下心がスケスケなんだよなあ)
俺は確かに確認した。
河合さんの口が開いていないのにも関わらず、河合さんの声が聞こええたことを。
俺は手に入れてしまったんだろう。
読心術というものを。
体がソワソワしてきた。
これは好き放題できるチャンスだ。
念願の初彼女もこの能力さえあれば容易に作れるに違いない。
能力を確かめるため、まじまじと河合さんを見る。
「そういう二人は彼女いそうだけどね」
(さっさと退散してくれ)
いや〜これは男子に同情するわ〜
狙っている女子の内情がこの様子じゃな〜
河合さんと男子たちの会話はずっと男子の好意が一方的なまま終わった。
すると河合さんがこっちを振り返った?ため慌てて本を読んでるふりをする。
(今日も
ん?
今のは聞き間違いだろうか?
間違いじゃなかったら俺の名前を呼んだ気がする。
(本を読んでる姿もかっこいい♡いっぱいお話したいし付き合いたいしゆくゆくは…)
いやいや俺がこんなに想われている筈がない。
きっと勘違いだろう。
(結婚して
名字も一致してる〜!?
俺こと
まじかまじかまじかまじかまじかまじかあの河合さんが俺のことを
好きだなんて。
どうしよう、実際に話しかけて確認したい。
でも急に話しかけたら好感度が下がるかもしれない。
とりあえずは様子見してしっかりと話すタイミングを見計らおう。
授業が始まったが、集中できず、河合さんを眺める。
「ではこの問題を河合さん」
(河合さんはこの問題分からなそうね)
あ、河合さんが当たった。
「…わからないです。」
(ちょうどわからないところで当ててくるのやめてよ)
河合さんは不貞腐れる。
「えーと、じゃあ正木くん」
(この子なら確実に分かってるでしょう)
次俺?
いま教科書のどこだ…?
三角関数か。
えーと、問題は三角形の面積か。内接円の面積が8πで三辺の長さが9,10,11だから…
ヘロンの公式使ったほうが早いな。
「30√2平方センチメートルです」
「はい正解」
(流石ね)
なんか人の間違えた問題を正解するのちょっと嫌だな。
河合さんはどう思ったんだろう。
(さすが学年1位だな〜。一緒に勉強会したいな)
大丈夫そうだな。
放課後になった。
今日は河合さんしか見ていない気がする。
でもしょうがない。
自分を好いてくれる女の子はそりゃあ気になるじゃん!
河合さんをまた見る。
「中西さん、一緒に帰ろう。」
(はあ〜最近ストーカーにつけられてる気がするな〜。今日は友だちと一緒に
帰ろう)
「もち!」
(やった〜!美樹っちと帰れる!)
まじか。
やっぱストーカーって存在するのか。
河合さんはその解決策としてノリが軽い
しかしストーカーか。
ん?待てよ?この能力を得た俺ならストーカー撃退できるんじゃないか?
彼女たちの帰り道をつけていった。
「で、あそこのフルーツパフェめっっっっっっちゃ安いのにまじ美味しい。
美樹っちにも食べてほしい。」
(美樹っちと寄り道したいなー)
「機会があったら食べたいね。」
(太りそうだからあんまり食べたくないな…)
今は平和な様子。
俺は彼女たちの周りを見る。
(あー晩ごはん何にしようかしら)
(はあ〜絶対俺この営業向いてない)
(野球の試合もうすぐだ!やべえ!)
(美樹たんかわいいかわいいかわいい)
(コンサート早く行きたいな〜)
ん?今はっきり居たな、ストーカーが。
周りにしっかりと目を凝らす。
(そもそも何なん水素水なんて詐欺まがいなもの売れるわけ無いやん)
(無難にカレーにしましょう)
(美樹たんんんんんんんんんんんんんんんんんん)
こいつだああああああ!
どう見ても河合さんたちにスマホを向けている男がいた。
俺はすぐさまそいつの元へ向かう。
「あの、ストーカー中すいません。」
「はい?」
(やばい、何でバレた!?)
男は表情こそ動いてないものの内心はビビり散らかしているようだ。
「あの、それ以上ストーカー行為を続けると警察を呼びますよ。」
「どういうことですか?」
(とぼければなんとかならないか?)
クッソちょっと分が悪いな。
「ほら、スマホであの女の子たちを撮っていたじゃないですか。」
「いやほんとにわからないんですって!」
(クソ!ガキのくせに前出てくんな…)
次第に周りもざわつき始めついに本人たちも登場する。
「何の騒ぎなんだろう。」
(騒がしいな、って柊くん!?)
「ねー。って、正木じゃん。」
(ストーカーってこいつかな)
二人に気づかれたので事情を話す。
「聞いてほしいんだけどこの人が河合さんたちのストーカーをしてたん。だ」
「えっ!?」
(柊くん私達を助けてくれたんだ…かっこいい…♡)
「それは許せないね。」
(柊ってこんな奴なんだ。見直したかも。)
「ちょっと待ってよ。スマホ確認していいから!俺はストーカーしてない!」
(こうやってカマかければ良いんじゃないか?)
「カマかけてんのお見通しなんだよ。」
そして俺は男のスマホの写真フォルダを見る。
するとそこには確かに一枚も彼女たちの写真がなかった。
そこで男を見る。
「ほら、確かにないだろ。」
(プライベートフォルダに入れてて良かった〜)
「いや、プライベートフォルダに有るんだろ。」
「そんなとこに写真保存したことないよ。」
(6桁のパスワードだから無理だねw勝ったw433891とか当てれるわけないよw)
433891か。
俺はすぐさま433891と入力したがパスワードが違っていた。
この時点で気づくべきだったかもしれない。
俺が証拠探しにモタモタしているうちに周りには次第に男の味方が増える。
「クソッ!なんでプライベートフォルダが開かないんだ!」
「もうやめてよ正木くん!そこまで探してないんだったら流石にマサキくんの勘違いだって。」
(これ以上私のために正木くんの評判が落ちるのイヤ!)
「てゆーかさーあんたこの人が私達のストーカーしてるって思ったの何で?」
(正木っちはなるべく信用したいけどなー)
「いや…それは…」
読心術です、なんてことは到底言えない。
「根拠ないの?それはあんた人としてどうなの?てゆーかじゃあ今日わたしたちをつけてたワケ?」
(正木っちには一旦今日諦めてもらおう)
「ま、まあ一応そうなるね…」
「じゃああんたがストーカーじゃん。おっさんもこいつが迷惑かけてごめん。」
(このおっさんからボロが出るまでは大人しくしといたほうが得策かな)
「まあ、若いと色々勘違いもあるからね。」
(危ねええええええええ。セーーーーーーーフ)
「いこ。美樹っち。こんなストーカーとは距離おいたほうが良いよ。」
(正木っち、次はもっと証拠を集めてほしいな)
「うん…」
(柊くんといる時間が減るうううううう)
今日はもうこいつを撃退できないのか?
男を見ると…
(よし、今日はもうやめてまた今度するか)
反省の色がない。
やっぱり今すぐに撃退しておきたい。
「あのさ、河合さん。後で言いたいことがあるんだけど…」
「ごめんなさい…」
(なんで断っちゃうのー!私のバカ!折角あとで二人っきりになれるチャンスだった
のに!)
これは…極度の恥ずかしがり屋だな。
今俺がここでガッと行かないと俺と話してくれない気がする。
そこで俺は河合さんに近づき河合さんの手首を掴む。
「キャッッッ!」
(はわわわわわわわわわ柊くんの手手手手手手手手)
「ちょっと!正体表したわねあんた」
(何やってんの!?正木っち!?)
俺はすぐに中西さんによってはがされて、周りにいる人に取り押さえられた。
やばい、このままじゃ河合さんが!
「河合さん!!信じてるから!!」
「……………」
(分かったよ。私の大好きな柊くん。)
河合さんは周りから見ると中西さんに手を引かれて俺から逃げているように
見えるが、俺の意思は伝わっているようだった。
後日の放課後、彼女たちの元へ向かう。
ストーカーから守るための会議をするために。
「もう近づかないでって言ったはずなんだけど。」
(正木っちと一旦距離おいてストーカー調査したいんだけどな)
開口一番中西さんがそう言う。
河合さんは恥ずかしがって中西さんの後ろに隠れている。
「ストーカー調査なら、3人でやったほうが効率的だと思うんだ!」
「あっそ。じゃ、警察呼んどいたから。」
(もう警察で解決するから大丈夫って伝わったかな)
「なるほどね。」
「は?何がなるほどなの?あんた警察にお世話になるのよ。」
(警察と聞いても動じないか)
そして警察が来た。
そして俺だけ連行された。
ここで手錠をかけられたことで気づいた。
俺が逮捕されていることに。
「何で!?」
中西さんの方を見る。
(やばい、早く警察の誤解を解かないと)
無表情ながらも焦っている様子が見られる。
「ちょっと!河合さん!何とか言ってよ!」
すると中西さんは河合さんの背中をぽんと叩く。
それに河合さんは勇気づけられている様子だった。
そして河合さんが口を開く。
「あなたのことは好きでもありませんし…つけられても迷惑です」
(なんで私柊くんにそんなこと言っちゃうのよ−!!もっと素直になりたかった…)
ええ…?なんで…?意味不明なんだけど…?
俺じゃなかったらすごい嫌われてるって思われてもおかしくないよ。
そして俺は警察から事情聴取をされた。
「実は…人の心が読めるようになったんです。」
「は?」
(何言ってるんだこいつ)
「今何言ってるんだこいつって思ってましたね」
「そりゃ思ったよ。」
(ほんとに心読まれてる!?)
「ほら、いま心読まれて焦った。」
「これはやばいな」
(すごい能力だな……こんな能力を持つ人って実在するのか…)
結局話が噛み合わず、なぜか精神病院に連れて行かれた。
精神病院にて…
「これは統合失調症の一種ですね。」
(心が読めるのは隠したほうが良いからこう言っとくか)
精神科の先生からそう言われる。
母は深刻そうな顔をしている。
まあ確かに読心術は隠したほうが良いよな。
母には悪いけどそういうことにしてもらおう。
しかしそこで疑問が浮かぶ。
なぜみんなの思考と言動があまりにも一致しないのか。
今まで心の声と思っていたのを無視してみんなの言動を振り返る。
急に自分の顔が青ざめていくのがわかる。
今までの心の声と認識していたものは自分が都合よく解釈していた声だったのだ。
「おれ、病気だ…」
読心術を手に入れた? @mautora
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。読心術を手に入れた?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます