花吹雪 - ひなxモモ

花吹雪Ⅰ

 三月ひなは内心焦っていた。今日の桜に合わせた髪留めが非常に傷んでおり外れかけていたからである。ひなにとって髪留めはお守りの類でもあるし、アイデンティティの一つでもあった。そんな最中、ふと違和感に気付く。髪留めが緩み、そして――外れた。

 その瞬間ひなは言葉を出せなくなり、必死に地面を探った。まるでコンタクトレンズを失くしたかのように、地面を這うようにピンを探し、ようやくギリギリ人に踏まれる手前で回収した時にはひなの隣にはモモしか居なかった。「ひなちゃん大丈夫?」とモモが声をかける。この時自覚症状は無かったものの、ひなは重度のパニックを起こしており、言葉を発することが出来なかった。モモはそれを察すると自分の肩を貸し、半ば強引に人が居ない方向へと歩き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る