揺蕩うⅡ

 ナズナは唐突に呟く。「私、血は繋がってないし戸籍こせき上も繋がってないけど、一応兄がいてさ」と頬をかきながら呟く。「なんか、頼りたいんだけどあんまり頼れなくてさ。嫌ってわけじゃなくて……一歩が踏み出せないんだ。みくりとひなの関係性を見てると、みくりが私みたいに見えてきて。あはは、何いってんだか」

 みくりはなるほど、と言った顔をする。似通っている点、頼りたい人に頼れないという点では確かに似通っているだろう。みくりはひなに縋るように生きてきて、それでいて頼ろうとするも重荷になるのが良くないと思いここ一年をずっと過ごしてきた。「私は――ひなを頼っていいのかな」とみくりがこぼすと、ナズナは笑いながら「もちろんだよ、それをひなも望んでるのはいつものやり取りを見ればわかるよ」とナズナは語りかける。みくりは呆気にとられた。この少女はどこまで観察眼が鋭いのだろうか、私達の関係は見破られていないだろうかと。

「もちろん」とナズナが一言起き「どのような関係だろうと、信頼できる人は信頼して頼るべきなんだと私は思う。って、私が実践じっせんできてないんだけどね」と。

 さて。みくりとナズナの共通点についてお互いがうっすらと気付いて来たあたりでようやくお互いのスマートフォンにメッセージが届いた。そのメッセージを読むと二人はそれぞれホッとした顔をし、その後顔を見合わせやれやれと言った表情を浮かべた。「モモのことが大切なんだね」とみくりが笑うと「やっぱりみくりもひなのことが相当大切なんだなって思ったよ」とナズナは返す。そうだとも、とみくりは思う。大切な恋人の事を心配しない人など居るものかと。

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