〜銅ランククエスト・街道のモンスター討伐〜
〜銅ランククエスト・街道のモンスター討伐〜
「うわ〜ん! セリナにまたあんな偉そうな事を言ってしまったわ! きっとまた嫌われてしまったに違いないわ、今から謝りに行って許してくれるかしら? どうしていつもあんな態度しか取れないの! バカっ! あたしのバカっ!」
私は今、トイレの前で頭を抱えている。
「セリナは頭もいいし、私なんかよりずっと頑張っているのよ? それなのに私は……ぐすっ、たまたま成績が良いだけのくせにイキがってしまって……プライドばっかり高いだけのへなちょこぴんだわ! ぐすっ」
調査依頼の報告が絶望的だったので現実逃避しているのだ。
「はぁ、あたし、セリナやレイトと仲良くしたいだけなのに。 なんでセリナとレイトはあんなに仲がいいのかしら? ぐすっ、あたしもみんなと仲良くなって……ひっく、仕事の情報とか上手なアドバイスの仕方とか教えてもらいたいわ……」
嫌な案件を抱えてしまった憂さ晴らしに、愛しの聖女キャリーム先輩のほっこり現場に来ていたのだが聞き捨てならない事を聞いた。
私とレイトが仲良しだと? なんて言う勘違いなんだ! 私はレイトをこんなにも苦手としているのに!
っと言うか、そろそろ現実逃避はやめてまじめに対策を考えよう。 私は名残惜しくもあったがトイレの前からそそくさと立ち去った。
☆
私がトイレの前から資料室に移動して、両断蟷螂【コプマット】対策を立てていると、資料室にオカリナのキレイな音が響き渡る。
「今日も忙しいみたいだねぇ? 君はまるで、デスマーチを奏でているようだよ?♪」
いつも急に現れて意味不明な事を言うこの人はレイト、一応先輩の受付嬢。
紫紺色のサラサラロングヘアーで前髪はキレイに切り揃えられたぱっつん。 そしていつも眠っているかのように瞳を閉じている。
一言で言えば不思議ちゃんだが、こんな人でも成績は毎月私より上の第二位。 不思議な言動を繰り返しているにも関わらず成績がかなりいいのだ。
私はその好成績の理由を探ろうと仕事終わりとか仕事の暇な時間帯に彼女の跡をつけたのだが、ふと姿を見失うといつの間にか背後を取られていて、耳元でオカリナを響かせながらこう囁かれる。
『私に〜♫ 何か〜♪ 用事かな〜?♫』無駄にリズミカルに、歌うように、だ。 ぶっちゃけ結構イラッとくる。
「レイトさんですか? なんか用ですか?」
なので私はいつも冷たく当たってしまうのだが、なぜかこの人は朝の忙しい時間帯は私の隣のカウンターに来たがるし、暇な時間もこうしてストーキング気味に絡んでくる。
ストーカーされてると通報しようかな? あ、この世界にはまだストーカーの概念ないんだった。
「君が思い詰めた顔をしていたから声をかけただけさ、何か困り事でもあったのかな?♪」
「七日前に出した調査任務で両断蟷螂の卵が数個発見されたみたいです。 調査に向かったのは鋼ランクと銀ランクの五人パーティーだったのですが、銀ランクの二人は遠距離攻撃と潜伏能力が高いので森林に残り、卵の捜索と破壊を続けてくれている様です」
そう、ぺんぺんさんは起点を効かせ、五人の内隠密能力と遠距離攻撃が得意な銀ランクの二人【レミス】さんと【
お陰で冒険者を集めるのに時間の余裕ができる事が唯一の救いである。
「さすがはぺんぺんさんのパーティーだ♬ 素晴らしい判断力には私も毎回驚かされるよ♪」
「ちなみに大規模な蹂躙クエストを多数担当してて『蹂躙する受付嬢』の異名を持つレイトさんは、この案件どう見ます?」
蹂躙クエストとは、対称地域に大量発生したモンスターを全滅させるクエスト。
場合によっては指定エリア全体のモンスターを無差別討伐する場合もある。
こう言った案件は王城や貴族からの案件で、城を建てたり拠点を作る際に依頼されるのだ。
ちなみにレイトの『蹂躙する受付嬢』という異名は、自分でつけて自分で冒険者たちに言いふらしたらしい。
さすが第二世代の名付け受付嬢だ。 しーいずくれいじー。
「そうだね……私なら北東の森林エリア全体を蹂躙範囲とする、そして危険エリアと警戒エリア二段構えにして銀ランク冒険者や近い実力を持つ鋼ランク冒険者を危険エリアに集中させ、警戒エリアは銅ランクに任せて連絡役や補助役に鉄ランクも数名動員。 森林エリアだが念のため
流石にランク二位なだけはあるし、蹂躙する受付嬢の名前も伊達じゃあない。 判断が早く思い切りもいい上に両断蟷螂の繁殖力を熟知しているようだ。
「流石ですね、ご教授感謝します」
「別に構わないさ♪ 私も君からはたくさんの旋律を聞かされているからね♬ これも一種の等価交換っていうやつさ?♪」
等価交換の使い方が少々おかしいが、モタモタしているわけにはいかない。
ぺんぺんさんの起点のおかげで少し時間に余裕はあるかもしれないが、すぐに行動に移すとしよう。
☆
両断蟷螂、このモンスターは中級モンスターで、一対一の討伐なら鋼ランクでも出来ない事はない。
モンスターの危険ランクは下級→中級→上級→滅界級と分かれていて、中級からは鋼ランクや銀ランク冒険者が討伐に出向く案件だ。
両断蟷螂一体だけの討伐なら銅ランククエストで三〜五人がかりで取り掛かる程度だろう。
だが今回私が依頼した調査任務で、森林エリアに両断蟷螂の卵が数個確認されたと言う。
両断蟷螂の恐ろしいところは、上級モンスターをも上回る最高クラスの攻撃力や、近づくもの全てに攻撃を仕掛ける気性の荒さでもない。
確かに両腕の鎌は鉄すら紙のように切り裂くほど危険だが、動きはそんなに早いわけではない。
注意していればまず当たらないだろう、怖いのは奇襲を受けた時くらいだ。
最も恐るべき点は他にある。
………圧倒的な繁殖力だ。
以前、東の小国が近くの森に両断蟷螂の卵を発見したが、所詮両断蟷螂だと甘く見て発見した卵を数個破壊するだけで処理してしまった。
しかしその国はその後二週間で滅びた。
まず、卵発見後一週間で両断蟷螂の大量発生が確認され、そして大量発生した両断蟷螂は他のモンスターとの縄張り争いを続けて森を破壊し、森の奥深くに住む上級モンスターを怒らせてしまった。
卵の処理を怠った小国は大量の両断蟷螂と激怒した上級モンスターに蹂躙された。
かろうじで生き残った人々は近隣の国に難民として逃れ、最終的に近隣の三つの国から腕利きの冒険者と各国の騎士団を多数派遣して大規模な討伐隊を結成した。
その討伐クエストでの戦闘はまるで地獄絵図だったと伝わっている。
ぺんぺんさんたち五人が調査に行った時点で、すでに数個の卵を確認したらしい。
確認した卵は破壊して周囲にも卵がないかを確認してくれたみたいだが、卵を守るために両断蟷螂が凶暴化していたため、五人パーティーで深追いは危険と判断してランクの高い二人を残して退却してきたらしい。
実際に素晴らしい判断力だと私は思っている。
ぺんぺんさんたちの計らいを無駄に出来ないため、ここからは迅速に処理する事が求められるだろう。
私はすぐに本部に連絡して大規模蹂躙クエストの発注を依頼、同時に森林エリアまでの街道を主力部隊に迅速かつ安全に通過してもらうために街道のモンスター討伐クエストも発注しなければならない。
ぺんぺんさんたちが戻ってきたのが昼前、今冒険者協会にはお目当てのクエストが見つからずにカフェで情報交換やだべっている冒険者しかいない。
つまり受付嬢にとって暇な時間帯……このままではこの街道モンスター討伐クエストすら受注されるのは明日の朝になってしまう。
それでは遅すぎる、先遣隊として街道のモンスター退治に向かう冒険者は今すぐに集めなければならない。
私はすぐに資料室を飛び出してカフェエリアに向かう。
幸いカフェエリアには数名の冒険者がいた、見た感じ鉄ランクや銅ランクが多い。
街道のモンスター討伐だけならどうにかなるはずだ。
その後は蹂躙戦のサポートに回ってもらう事になると思うが、主力冒険者が夕方に帰ってくる。
主力部隊を明日の朝イチで迅速に森林エリアに送らなければ取り返しのつかない事になる。
ということは先遣隊に今すぐ出発してもらう必要がある。 私はカフェエリアの冒険者たちに必死に呼びかけた。
「皆さん! 急な話で申し訳ないですが冒険者協会から緊急クエスト依頼です! 東の森林で両断蟷螂の卵が発見されました! 発見された卵は破壊しましたが、規模的に他にも卵がある可能性があります! 現在銀ランク冒険者二名が森林に残り、卵の捜索と破壊を続けて時間を稼いでくれています!」
私の呼びかけに、耳は傾けているようだが冒険者たちはあまりいい反応を示さない。
森林エリアは見通しが悪いため鋼ランク同伴でしか入れない危険エリア、その上相手は超凶暴な両断蟷螂、喜んで参加する命知らずはそうそういないだろう。
気を取り直してもう一度声をかける。
「コ、
ふと、カフェエリアを見回して見たが、皆私の呼びかけに対して聞こえないふりをしていた。
「い、一刻も早く森林エリアに向かわなければいけません! 街道のモンスター討伐後は、残って戦っている銀ランク冒険者二名のサポートや蹂躙戦の援護もお願いすることになるとは思いますが……どうか、どうかお願いします」
冒険者達の反応は
ここまで親身にお願いしているのだ、きっと二〜三人くらいは参加してくれるはず!
きっと大丈夫さ、私は今までこう言うピンチをなんとか乗り越えてきたのだから……大丈夫だ!
☆
……そう思っていた時期もありました。
私はカフェエリアで声を大きくできる魔道具、いわゆる拡声器も使い、あの後も必死に呼びかけたが……
今日一日お休みムードだった冒険者達は全く動いてくれなかった。
それもそのはずだ、両断蟷螂なんて超攻撃的なモンスターの大量発生など危険すぎる。
攻撃特化で奴らの鎌の切れ味は凄まじく、鉄すらも紙のように切り裂くのだ。
動きはそんなに早くないし単調な動きしかしてこないが油断して奇襲でも受ければ命を落としかねない、その上今回相手をするのは小国さえ滅ぼした事があるモンスターの群れだ。
お願いしているのは街道のモンスター退治とはいえ、その後は森林エリアで蹂躙戦のサポートをさせられるなんて、言わなくても分かっているのだろう。
準備もまともにできていない今の状態でいきなり蹂躙戦のサポートなんて、鉄ランクや銅ランクの冒険者はそんな無茶をするはずがない。
ここにいるのは話したこともない冒険者たちばかり。
よく知らない受付嬢が発注するクエストで、命の危険が付きまとう案件に関わりたくないのは当然だ。
だから私の呼びかけになにも反応してくれないのは仕方がない。
……だが、なんとも言えない無力感を感じてしまう。
とは言っても、もたもたしていられない。
こうなったらカフェエリアでしゃべっている冒険者一人一人に頭を下げて回るしかない。
そう思った時だった。
「冒険車の方々! 受付嬢、セリナの発注しているクエストは火急を要します。 このクエストはギルドからの依頼です、申し訳ない話ですが、報酬は少ないかもしれません。 なんせ特産品も出ないですし、王城からのクエストのように魅力的な報酬金も出ないのですから……出るとすれば両断蟷螂の素材を、安く買い取る権利を与えられるくらいでしょう」
力なく立ち尽くしていた私の隣に突然やって来たキャリーム先輩は、拡声器も使わずに透き通ったキレイな声をカフェエリアに響かせた。
「それに相手は両断蟷螂の群れ、小国すら滅ぼしてしまうほどのモンスターです。 運が悪ければ森林エリアにいる上級モンスターすら出てくる可能性もあります。 そうなってしまえば実力の伴わない冒険者はタダではすまないでしょう」
カフェエリアにいる冒険者全員が、私語をやめてキャリーム先輩の言葉を静かに聞いていた。
「ですが、このクエストを放置すれば、この王都も危険にさらされる事になります。 あなた方の友人や家族、恋人も全員両断蟷螂の群れに無惨に殺されてしまい、この王都も滅ぶ可能性が捨てきれないのです」
冒険者協会全体にキャリーム先輩の声だけが響く、そして話を聞いている冒険者全員が
「何の準備も心構えもなく両断蟷螂の群れに立ち向かうのは無謀かもしれません。 ですが今からこのクエストを指揮するのはセリナです。 たった一年半で受付嬢ランキング三位にまで上り詰める優秀な受付嬢です。 セリナが指揮を取るこの戦いを無謀だと思いますか? 私はそうは思いません! 私は彼女が上げた数々の功績も、彼女が指揮した蹂躙戦の、圧倒的な勝利の数々を全て把握しています。 たとえ何の準備もしていなかったとしても……彼女の指揮なら心配無用だと思いませんか?」
そう言った直後、キャリーム先輩は私の方に視線を向けて可愛くウインクをして見せる。
「セリナだけではありません、私はここにいる冒険者の方々の実績も把握しています!
私は知っています、あなた方のこれまでの勇敢な戦いを!
私は知っています、あなた方がこれまでにして来た華やかな冒険譚を!
私は知っています! ここにいる方々はたとえどんな困難を目の前にしても、乗り越える事ができる強者である事を!」
………キャリーム先輩の言葉を聞いているだけで、目頭が焼けるように熱くなるのを感じた。
数秒間の沈黙が、カフェエリアに訪れ。
不安に駆られる私をよそに、キャリーム先輩は堂々と立ち尽くし、このなんとも言えない沈黙にも微動だにしない。
しばらくすると、一人の冒険者が立ち上がった。
「……俺は行く! ここで立たなきゃ男ではない! 死ぬことが怖くて冒険者がやってられるか!」
「ガルシアさん、勇敢な判断に感謝いたします。 他に、参加していただける勇敢な冒険者様はいらっしゃいますか?」
キャリーム先輩の声は恐ろしい程に協会内に響いた。
俯いていた冒険者達は全員立ち上がり、尊敬の眼差しでキャリーム先輩に視線を集める。
無論私もその中の一人。
圧倒的な存在感、恐ろしいまでのカリスマ性。
彼女の声を聞いているだけで心の底から力が湧いてくるような不思議な感じに襲われる。
「……しょーがねーなぁー! キャリームちゃんのお願いだったらやるしかねぇだろ!」
「キャリームさんの言う通り、セリナさんはこう言った蹂躙クエストでは作戦の立て方がが物凄いと聞いている、勉強のためにも参加するか!」
キャリーム先輩の言葉に心を動かされた冒険者たちが次々と私の元へとやって来る。
「そう言うわけだ、頼むぜセリナさん!」
「今回のクエストも驚くような作戦、期待してますよ!」
先程までの無力感は消え失せ、心が軽くなったような感覚になる。
次の瞬間、私の隣からオカリナの綺麗な音色が響いてきた。
「セリナの頼みだ♩ 私も協力しよう♬ ……そこで冒険者新聞を見ている
いつの間にか隣にいたレイトも自分が担当している冒険者に声をかけてくれる。
しかもその冒険者は銀ランクの中でもかなりの手練れだ。
さっきは苦手とか言ってごめんなさい、いつも冷たく接してごめんなさい。
ちょうど冒険者協会が活気づき始めた頃、クエストの準備をするため買い物に行っていたぺんぺんさんたちも戻ってくる。
「おうおう! 俺様が準備してる間に面白ぇ事になってんじゃん! 遅れて悪かったなぁセリ嬢、俺らはすでに準備整ってるぜ?」
「キャリームさん、相変わらず超半端ないですね……」
「こりゃあ俄然やる気が出てくるな。 とっととあの虫どもを討伐に行くしかないな! そうだよね? キャステリーゼちゃん?」
ぺんぺんさんたちも戻ってきたことで、先程まで静まり返っていたのが嘘のように協会内は活気付いていく。
それに続くように協会の外から猛スピードでかけてくる冒険者がいた。
「セリナさん! そのクエスト……僕たちにも参加させて下さい! 今こそ恩返しをする時だと思うんです!」
そう叫びながら協会の入口を、蹴破るように入って来たのは先日
朝一に受注して行った鉱石亀【ミネルトルシュ】討伐からたった今、戻ってきたらしい。
「ちょっと! とーてむくん! 入口蹴っ飛ばしちゃダメだよ!」
遅れて入って来た仲間のよりどりどり〜みんさんも、とーてむすっぽーんさんを注意しながら入ってくる。
そんな冒険者さんたちを前に、私は制服の袖で目元を擦りながら頭を下げ続けた。
すると、隣でみんなの様子を見ていたキャリーム先輩がチラリと私に視線を送る。
「……な、なに泣いてんのよ。 両断蟷螂大量発生なんて案件、大ごとにされたら困るから手伝っただけよ? こう見えてもあたしはナンバーワン受付嬢なんだからね! 感謝なさ……って! ちょちょちょ! ちょっと! なんで余計泣いちゃうのよ! こここ、怖かったかしら? あたしこわかったかしら? ねぇレイト! あたし、今怖かった?」
「清らかな旋律が聞こえるよ?♬ 安心して! 夜明けはすぐそこまで来ているさ!♪」
「…あり、がとぅごじゃいましゅぅぅぅ!」
私はキャリーム先輩に声をかけられて……とうとう涙腺が崩壊してしまったのだった。
☆
目元を真っ赤に腫らした私は、クエストを受注してくれた冒険者たちを奥にある作戦室に案内する。
遅れて走って来た銅ランク冒険者さんも一人いて、思ったより大所帯になった。
集まった冒険者は私が初めて一緒に仕事する人がほとんどだ。
まずレイトが声をかけてくれた銀ランク冒険者、
襟足を肩甲骨にかかるくらい伸ばしたウルフカットで、全体的に髪の毛がふわふわしている銀髪の男性。
間違えてはいけないがこの人は第二世代、レイト名付けの第二世代冒険者で読み方は『ギャラクシー』だ。
「おい貴様、私のニックネームは(ぎんが)じゃない! (ギャラクシー)だ! おいそこ! 笑うな!」
すでに銅ランク冒険者たちにニックネームをいじらていた。 腕はたつがかなりのいじられキャラなのだ。
そしてぺんぺんさんたちの鋼ランク三人と、この前鬼人を倒した鉄ランクのとーてむすっぽーんさんたち二人。
クルルちゃんが担当している銅ランク二人と鉄ランク一人の三人パーティーや、メル先輩と言う受付嬢が担当している銅ランク三人と鉄ランク一人。
こうして鉄ランク四人、銅ランク五人、鋼ランク三人と銀ランク一人が集まっている。
予想していたよりも豪華なメンバーになったのもキャリーム先輩やレイトのおかげだ、感謝してもしきれない。
作戦の概要はこうだ、まず今回集まってもらった冒険者達で街道のモンスターを狩りながら森林へ向かう。
森林までの距離は馬車で十六時間程度、モンスターを討伐しながら向かえばもっとかかるだろう。
両断蟷螂の群れに備えて鋼ランク三人と銀ランクの冒険者は温存したいため、馬車内部で待機してもらい、銅ランク冒険者達のパーティー中心で街道のモンスター退治。
銅ランクパーティーの皆さんは負担をかけてしまうが、これから戻ってくるであろう主力冒険者たちを最速で森林に向かわせるための最善だと考えている。
幸い銅ランク冒険者たちは快く引き受けてくれた。
鉄ランクの四人には銅ランクの皆さんのサポートをお願いする事にした。
馬車の手配をした私は正門で皆さんをお見送りしに行く。
「私はこの後帰ってくるであろう高ランク冒険者の方々に声をかけて、腕利きの冒険者数名を連れて援軍に向かいます! 先に向かってもらうガルシアさんのパーティーや
私は援軍を連れて後から向かう事になる、集まってくれた方々の期待に応えるためにかなりの腕利き冒険者を連れていかなければ!
「セリナさん! 私の担当であるクルルさんから、あなたが必死にクエスト募集を呼びかけていたと聞いています! その時、私がそこにいれば……セリナさんに協力できたはずなのに! その場にいなくて申し訳ありません。 困っている方を助けることができなかったなんて……一生の不覚!」
無駄に正義感が強いことで有名な
第二世代で銅ランクだ。 短い青髪でとても真面目そうな好青年。
私が呼びかけた時にその場にいなかったらしく、武器の調整やモンスター用の罠を買いに行っていて、協会に戻って来たら待ち合わせしていたはずの仲間二人がいなくなってたらしい。
困りながら立ち尽くしていたところにクルルちゃんが事情を説明して、ダッシュで駆けつけてくれたとか。
どうやら私はクルルちゃんにも助けられてしまったようだ。
ちなみにその仲間二人であるリックさんとベイルさんは、キャリーム先輩の呼びかけに心動かされて香芳美若さんに何も言わず勝手にクエスト参加したらしい。
一応、香芳美若さんは三人パーティーのリーダーで、構成は銅ランクのリックさんと鉄ランクのベイルさん。
もう一つのパーティーのリーダーはガルシアさんという若草色の髪をしたエルフの少年。
遠距離攻撃主体のパーティーで銅ランク三人に鉄ランク一人。
現在メル先輩が担当する冒険者は、一部を除き慎重な人たちが多い。
この銅ランクパーティー二組と、とーてむすっぽーんさんたちの鉄ランク二人パーティーで森林エリアに向かってもらう。
ここからは時間との勝負になる、私は協会に戻って彼らのためにできることを……
「セリ嬢! 顔……超怖いぜ?」
急に肩をポンと叩かれ、私は驚いてそちらを向くとほっぺに指が突き刺さる。
「ぎゃっはっはっはっはっは! セリ嬢久々に引っかかったなぁ! 気負いすぎだっつーの! カマキリどもの群れは確かにやばいかも知んないけど、考えすぎないで笑っとけよ! お前が怖い顔してっと周りの奴らも緊張しちまうぜ?」
そう言って私のほっぺを指でむにむにしながらニカっと歯を見せて笑うパイナポ……
こいつとは長い付き合いだ、いつもおちゃらけてるくせにこう言う時ばっか無駄にかっこよく……
「って! いつまで私のほっぺむにむにしてんだこの変態がぁ!」
「ギャァァァァァァァ!」
そして、このクエストのために集まった寄せ集めの冒険者たちから——
——初めて笑い声が溢れ、その笑い声は日が暮れ始めた空に響いた。
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