〜受付嬢ランキング〜

 〜受付嬢ランキング〜

 

「セリナさん、今日は仕事終わり暇ですか?」

 

「今日受けつけたクエストに、両断蟷螂コプマットがいたので今日の夜は予習するつもりです」

 

「そうですか、でしたら休みの日はいつなんですか?」

 

「わかりません!」

 

「………」

 

 昼食休憩から戻ってきた昼下がり、私はいつも通り笑顔の対応でナンパしてくる冒険者を撃退していた。

 

 つい最近、黒狼【ルノワル】十体討伐任務中に鬼人【ガルユーマ】に遭遇してしまったまじめな駆け出し冒険者たちが、かなりの快進撃を続けているおかげで私の評価はうなぎ登りである。

 

 なぜならクエストから帰る度に「お礼をさせて下さい!」とか言ってくるので、徐々に難しいクエストを提示して「クエストをクリアしていただけることが私にとっては一番のお礼です!」と笑顔で答えているからだ。

 

 無論、彼等の実力やコンディションを加味した上でクエストを提示している。

 

 私は先程撃退した冒険者のしょぼくれた背中を見送った後、受付カウンターを離れ入り口近くの掲示板の前にやってきていた。

 

 その掲示板には受付嬢ランキングや冒険者新聞というものが貼り出されている。

 

 冒険者新聞とは、凄い冒険者の快挙を特集した記事などが貼られている。

 

 例えば、『またも快挙!勇者と呼ばれる星ランク冒険者【紅焔べにほむら】がたった一人で帝王烏賊グランカルマルを丸焼きに!』だとか

 

 『不穏な気配、森林エリアに相次ぐ両断蟷螂討伐依頼とモンスターたちの縄張り争いの激化、その真相は?』とか

 

 『第五世代にまた優秀冒険者出現か? 初の討伐依頼で鬼人を倒した駆け出し鉄ランク二人組に迫る!』とか………

 

 この前初めての討伐クエストで鬼人を倒したという、優秀な冒険者候補の二人もインタビューを受けていた。

 

 その記事の最後の方にはアドバイスした鋼ランク冒険者『パイナポ』の一言! と言う記事がある。

 

 気になって見てみると、『俺様が駆けつけたときには、もう鬼人は両膝の裏をパックリ切られててよぉ、俺様が手ぇ出すまでも無かった訳よ! けっして森林調査依頼の前だから体力温存したかったとかそんな下らない理由じゃねぇからな。 そう! これは後輩育成のためなんだ!』

 

 この記事を読んで、彼が帰ってきたら鉄拳制裁を喰らわせてやろうと思ったりもしたが………

 

 まぁ私の担当する冒険者が活躍する記事を見るのは少し嬉しいものだ。

 

 ちなみに冒険者のランクは八段階で、岩→鉄→銅→鋼→銀→金→宝石→星となっている。

 

 岩ランクは雑用が多いので討伐クエストは鉄ランクから。

 

 一人前と呼ばれるのは鋼ランクからで、ここまでランクを上げるのに平均三〜五年かかる。

 

 まあランクアップはすごい人なら条件を満たしてすぐに上がるし、すごいのに条件をなかなか満たせないから実力と不釣り合いな低ランク冒険者もいる。

 

 最速ランクアップは私の担当する第二世代の銀ランク冒険者で、数ヶ月で銅から銀に上がった人だろうか。

 

 話が少し脱線したが、今掲示板に来てるのは冒険者新聞を見るためではない。

 

 受付嬢ランキングを確認しに来たのだ。

 

「おお? セリナ! もうすぐ今月も半分過ぎるからランキング確認?」

 

 声をかけてきたのはクエスト依頼の紙束を持っていた友人のククルちゃん。

 

 明るいキャメル色の髪をお団子に括ってる、活発系の女性。

 

 こんな見た目でも受付嬢九年目のベテランで、五年前この王都にできた冒険者協会の初期メンバー。

 

 間違えてはいけないが、彼女は二十代。 少し若作りしてるけど二十代だ。

 

 そして命が惜しければ年齢のことを聞いたり、ベテランだとか口走ってはいけない。 とんでもないことになる。

 

 さらに呼ぶ時は絶対にクルルちゃんとか、クルルさんと呼ばなければならない。

 

「まぁそんなところですね! 私の担当冒険者たちが頑張ってくれてるし、そろそろ順位上がったかな〜? なんて期待しちゃってるんです」

 

 冗談めかしてそんな風に答えたが、ククルちゃんは真剣な表情でランキングを見ていた。

 

「不動の一位はキャリームちゃんだねぇ、それにレイトさんもなんであんな不思議な人なのに成績がかなりいいんだろ?」

 

「今の私じゃあ、まだキャリーム先輩には勝てないですよ〜? レイトさんに関しては私もよくわからないんですよね、話した事はあるけど……話し方が面倒臭いとゆうか不思議ちゃんとゆうか」

 

 そんな世間話をしながら二人で掲示板を覗く。

 

「セリナ命名の第五世代……最近ノリに乗ってるね! 元々快進撃続きだったぺろぺろめろんさんのパーティーといい、この前の鬼人討伐騒ぎと言い、今冒険者たちの中でも話題になってるよ!」

 

 ぺろぺろめろんさん……私がネーミングを担当する第五世代が、ふざけた名前になってしまった原因である。

 

 忌々しい思い出の残る冒険者たちだ。

 

 ぺろぺろめろんさんの名前を聞き、ついつい笑顔が引きる。

 

 私が元いた世界で最も相容れなかった人種、いわゆるギャルっぽいテンションな人たちだったため、ほんの出来心でふざけた名前をつけてしまった。

 

 今では会う度に心の中で謝っている。

 

「たった一月ちょっとで岩ランクから鋼ランクになった、冒険者協会始まって以来の逸材でしょ? この前沼地で双頭蛇【ペルセルパ】三体倒したらしいじゃん、そんなの銀ランクでも尻込みする案件なのに。 ベテランさんたちもすごく驚いてた」

 

 正確に言えば、銅ランクから金ランクに上がる話も出たのだが、それはここだけの話だから今はいい。

 

 ちなみにこの世界での一月は九十日近くある、私が元いた世界で言うところの約三ヶ月だ。

 

「あぁ、双頭蛇の倒し方とか特徴とかすごく聞かれましたからね。 一応私が策を用意したんですけど、私の予想以上に効果的面だったみたいで……」

 

 そう、今となってはあの命名にかなり後悔している、初めて命名した冒険者がこんな凄い人たちになるなんて思わなかった。

 

 口調もギャルっぽかったから意地悪したくなってしまったが、話してみるとすごくいい人たちだったのだ。

 

 そんな有名な新星冒険者であるぺろぺろめろんさんたちのおかげで、私はこんな好成績を維持していると言っても過言ではない。

 

 本当にすみません、彼女たちには足を向けて眠れません

 

 私が昔の後悔を振り返っているとククルちゃんは仕事があると言って去ってしまった。

 

 ちなみに冒険者のニックネームは受付嬢が決める、一年周期で交代してニックネームをつけるため受付嬢によってニックネームの傾向に違いが出る。

 

 王都の冒険者協会ではニックネーム傾向に従い第一世代〜第五世代と呼び方が変わり、私が命名してる世代は第五世代。

 

 ククルちゃんが命名してるのが第一世代である。 それぞれの世代で冒険者たちに特長がある。

 

 第一世代はとあるクエストのせいで数が少なく、かなり腕の立つ冒険者しか残っていない。

 

 第二世代は見た目や言動はかっこいいのだが、なんと言うか残念な人が多い。

 

 第三世代は……特に何もなし。大事なことなので二回言うが、特に何もなし。

 

 第四世代はかなり腕が立つ冒険者ばかり揃っていて、黄金世代と言われているのだが変人が多い。

 

 私の命名した第五世代はぺろぺろめろんさんたちが、快進撃を続けかなり有名になったせいで、『新たなネーミングで素晴らしい』だとか『この一度聞いたら忘れられない名前、たまりませんなぁ』とか『僕たちも快進撃を続けたいので是非ご利益を!』とかそんな理由で似たような名前を懇願されてしまった結果、ふざけた名前ばかりの第五世代になってしまった。 とほほ………

 

「あら、セリナじゃない、この前担当冒険者が快挙を上げたらしいわね。 ま、この私にかかればあの程度の事は日常茶飯事だけどね!」

 

 一人物思いに耽る中、突然憎まれ口を叩いてきたのはこの冒険者協会で最も優秀だと言われるナンバーワン受付嬢のキャリーム先輩。

 

 細い絹のようなエメラルドグリーンの髪ををハーフツインに纏めた童顔で背の低いロリっ子(二才年上)

 

「キャリーム先輩、お疲れ様です! 先輩もランキング確認に来たのですか?」

 

「違うわよ、その、なんと言うか………あれよ! 私はあなたに忠告しに来たのよ!」

 

 私は知っている、この可愛らしい二才上のロリっ子先輩がどういう人なのかを。

 

「この前の駆け出し二人組、結果的には快挙を上げたみたいだけど、格上相手に無謀に勝負を仕掛けたなんて……危ないことをしたのは事実よ! だから褒めてあげるのもいいけど、ちゃんと釘を刺しておかなきゃダメなんだからね!」

 

 そう、この先輩はかなり不器用なのだ。

 

 おそらく本心では、おめでとう、と言って後輩である私を労おうとしていたのだが、土壇場で照れてしまったのだろう。

 

 そんな不器用でツンデレな可愛いロリっ子受付嬢(二才年上)。

 

「忠告ありがとうございます! 先輩から直々に助言いただけて私、光栄です!」

 

 私はそんな不器用度と親切度がかなり比例してしまっている先輩に笑顔でお礼を言う。

 

 この人の本質を知っているからこそ気にかけてもらえるのはかなり嬉しい。

 

「そう! まあ、あなたならこんなこと言うまでもなかったわね。 ま、念のため忠告したまでの事よ、いつも忙しいこの私が貴重な時間を使って助言してあげたんだから……か、感謝なさい!」

 

 ツンと顎を上げ、ふんっ! と鼻を鳴らしながら去って行くキャリーム先輩の背中を微笑みながら眺める。

 

 きっとこの後トイレに入り、一人で『なんであんな偉そうな事しか言えないの! バカ! 私のバカ! きっとまたセリナに嫌われてしまったわ!』とか言ってしまうのだろう。

 

 なぜそんな事を予想できるのかと不思議に思うだろうか?

 

 ここだけの話だが、トイレの前を通った時同じようなセリフを何度も聞いているからだ。

 

 実は優しい先輩の一面を私だけが……いや多分みんな知ってる気がする。

 

 みんなにバレてないと思っているのはキャリーム先輩だけだろうな。

 

 そんなことを思いながら気を取り直して掲示板を見る。

 

「私は今月も安定の三位止まりか………」

 

 毎月私は上から三番目、先ほども言ったが毎月と言ってもこの世界の暦は四つしかない。

 

 桜花おうかの月、蒼海そうかいの月、木枯こがらしの月、積雪せきせつの月と春夏秋冬で綺麗に分かれた四つの季節で一年。

 

 現在は蒼海月の半ば、七月後半あたりだろうか?

 

 四つそれぞれ九十日近くあり、受付嬢ランキングはひと月の依頼達成率などを集計して何位かを掲示板に張り出し、月が変わると零からスタートするのだ。

 

 評価点としては担当したクエストの成功報告と報酬の金額、討伐したモンスターの種類などで決まる。

 

 これには討伐したモンスターの素材買取単価も加算されるため、討伐する際にできるだけ傷を少なくすれば報酬の金額が上がるのだ。

 

 ランクをつける理由としてはクエストを持ってくる依頼者が、どの受付嬢にクエストを発注するかを考えるために必要だからだ。

 

 困難なクエストや、討伐されたモンスターが強ければ強いほど評価点が上がり順位に作用する。

 

 つまり困難な討伐クエストや何が起こるかわからない調査クエストなど、重要度が高く失敗はできないクエストほど上位の受付嬢にお願いした方が達成率も上がる。

 

 しかし手続きに時間もかかるし難しいクエスト程人気が出ないので達成まで時間がかかりやすい。

 

 より緊急性の高いクエストほどランキングには影響があるが、冒険者たちの命も危険になりやすい。

 

 冒険者たちの実力やコンディション、性格などをよく考慮して、いかに難しいクエストを受注させられるかは受付嬢の腕の見せ所だ。

 

 対して緊急性の低いクエストは、下位の受付嬢にお願いした方がすぐに受注されるし手続きに時間もかからない。

 

 簡単なクエストは駆け出しでも手が出しやすいため、人気もあるのだがランキングには少ししか影響も出ない。

 

 上位の受付嬢ほど難しいクエストを多々抱えているため知識量が多いし判断力も優れているのだ。

 

 なぜなら冒険者の命を守るためにも討伐対象のモンスターの特徴を入念に予習し、クエストを受注した冒険者たちと共に念入りに作戦を立てたりする必要がある。

 

 中でもキャリーム先輩が抱えているクエストはかなり高難易度な物が多い。

 

 噂では放っておけば世界の危機にも直面しかねないものもあったりするらしい。

 

 だからこそ私はキャリーム先輩を心から尊敬している。

 

 キャリーム先輩は勘違いされがちだがかなりの努力家だ、天才なんて言葉で片付けるなど言語道断!

 

 私と違って転生特典も無ければこの世界の一般家庭で生まれ育った一般人。

 

 普通に受付嬢育成学校で教育を受け、断トツの主席で卒業した彼女はすぐに王都の冒険者協会受付嬢としてデビューして、たった一年でトップの座を取ったのだ。

 

 毎日仕事が終わると協会の資料室に篭り、夜遅くまでモンスターの特性を予習したりクエスト現場の情報や周辺でのモンスター目撃情報を整理し、そして受注に来た冒険者の特徴も入念に調べる。

 

 みんなが帰ってぐうたらしてる時間もキャリーム先輩は努力を欠かさない。

 

 毎日冒険者協会から帰るのは日付が変わる頃。

 

 そんなに努力をしてるのにも関わらず、担当冒険者が大怪我して帰ってきた時は陰で一人、涙をこぼしながら自分の勉強不足を悔やみ、『自分の勉強不足のせいで怪我をさせてしまったのよ』と言って目を真っ赤にしながらもまた資料室にこもるのだ。

 

 彼女の努力は恐らく冒険者たち全員が分かってる。

 

 だからこそクエスト中の異常事態が発生して大怪我をしてしまったとしても、彼女に苦情の話は全く上がらない。

 

 誰も怪我をしたのはキャリーム先輩のせいだなんて思う訳もないのだから。

 

 ———彼女以外は。

 

 誰よりも冒険者の身をうやまい、誰よりも王都の平和を願い、そして誰よりも優しい受付嬢。

 

 だからこそ私は憎まれ口を叩かれようと先輩を尊敬してる、って言うかキャリーム先輩の素晴らしさを思い出していたら涙が滲んできてしまった。

 

 あの子は聖女だ、聖女キャリームちゃんだ。

 

 ちなみに私がなぜこんなに聖女キャリーム先輩のことに詳しいか疑問でしょうか?

 

 安心して下さい、まだこの異世界はストーカーという概念がないので法律にも引っかからないのです。※絶対に真似しないで下さい

 

「おーい、セリナさん? なんで掲示板の前でお祈りしてるんだ?」

 

 わたしはキャリーム先輩の事を考えていたらいつのまにか祈りを捧げてしまっていたらしい。 あらやだ恥ずかしい。

 

「あ、すいません、なんかこう……キャリーム先輩に声をかけていただいて感極まってました」

 

「あぁ、なるほど、セリナさんもキャリームさんの信者だったのか。 俺もキャリームさんの助言で命拾いした事があるからな。 ねぇ〜? キャステリーゼちゃん!」

 

 この人はぺんぺんさん、鋼ランク冒険者で三人パーティーのリーダー。 本名はスペンサー。 第四世代。

 

 魔道士で雷と地属性の魔法を操り、砂鉄で戦う超武闘派魔道士。

 

 私はこの人の戦い方かっこいいから超好き。 戦い方だけだけどね。

 

 だがしかし、人形愛好家で暇さえあれば腰につけたぬいぐるみと喋っている変人。

 

 ぬいぐるみの名前はキャステリーゼらしい。

 

 それはさておき、この人がいると言う事は……


 次の瞬間、予想通り協会の入り口が勢いよく開けられた。

 

「自称勇者! パイナポ様の凱旋じゃい! ささ! 皆のもの歓喜に咽び泣いてもいいんだぜ! なーんてな!」

 

 私は即座に声の主に向けて全力ダッシュして、ダッシュの勢いを殺さずに右腕を垂直に上げた。

 

 そして、パイナポにラリアットをかました。

 

 

 ☆

 入り口で蜜柑頭(パイナポ)をとっちめた後、私たちは協会内のカフェエリアに座って調査クエストの報告を聞く事になった。

 

 このクエストは私が抱えているクエストで、森林エリアの討伐クエストが不自然に多くなり始めたため、私が協会に申請して調査クエストを発注してもらったのだ。

 

 参加してもらったのは鋼ランクパーティーのぺんぺんさん率いる三人に、銀ランクが二人。

 

 銀ランクの方はソロ冒険者が一人ずつ、合計五人の即席パーティー。

 

 この五人は六日前に北東の森林エリアへ調査クエストに出発してもらった。

 

 ちなみにぺんぺんさんたち鋼ランク三人はかなりの実力者揃いで、階級にこだわらないいわゆる戦闘狂のため単純な強さは銀ランクの実力者とも五分五分とか言う話もある。

 

「調査クエストから帰ってきたのにいきなりラリアットはないですわ〜。 セリ嬢鬼だねぇ、あっ! 俺分かった、分かっちゃった! この前あの鉄ランク二人が鬼人に襲われたのはセリ嬢が鬼だから……」

 

「それ以上口を開くと、この前とーてむすっぽーんさんたちが持ってきた鬼人の棍棒でその口を塞ぎますよ?」

 

 私は失礼なことを口走る蜜柑頭、改めパイナポに笑顔で忠告しながら、テーブル下に用意した棍棒をちらつかせる。 記念にもらっていた例の鬼人が使ってた棍棒だ。

 

「セリナさん……怖いです」

 

 パイナポの隣で震えているのは夢時雨さん、本名はジルゥ。第一世代。

 

 鋼ランクの前衛で猫科の獣人である。

 

 かなり臆病で人見知りも激しいが、討伐任務になると人格が変わったかのようにモンスターをなぶり殺すらしい。

 

 ちなみに武器は籠手と脛当て、という名目でほぼ素手。 というか、本人には言いづらいのだが、籠手も脛当ても本当は武器じゃないからね。

 

「そんなくだらない事よりセリナさん、申し訳ないが悪い知らせを持ってきてしまった」

 

 パイナポと夢時雨さんが所属する三人パーティーで、リーダーをしているぺんぺんさんが真剣な顔で告げた。

 

「悪い知らせですか………森林エリアは問題ばかり発生しますね」

 

 先日、とーてむすっぽーんさんたちを助けたパイナポは平原エリアにある拠点を中継して森林エリアに向かう途中だったのだ。

 

 おかげでとーてむすっぽーんさんたちは事なきを得た、なにせパイナポの話では到着が一瞬でも遅れていたら鬼人の投げた棍棒でとーてむすっぽーんさんの脳天は潰れかけていたらしい。

 

 パイナポたちが北東にある森林エリアの調査に向かってもらって本当に良かった。

 

 調査クエストをお願いする前に、森林エリアから帰ってきた冒険者に軽く聞いた説明だと、ここ最近モンスターの活動が活発化していてそれぞれのナワバリを無視したモンスターたちが争っているらしい。

 

 中には危険な上級モンスターも混ざってるとか不穏な噂もある。

 

 上級モンスターは個体によっては国一つ滅ぼす恐れがある。 討伐ランクは最低でも金ランクだ。

 

 原因を調べるためぺんぺんさんたちを含む五人の即席パーティーに調査任務をお願いした訳だが……帰ってきているのはなぜか三人だけだった。 

 

「まぁ調査結果を率直に言うと、両断蟷螂の卵を数個確認した」

 

 その一言で頭がくらりとする。

 

 あぁ、森林エリアの討伐クエストが不自然に増えた理由が一瞬でわかってしまった。

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