脱却


 くだらないことを考えて

 生きているとおもう

 なにも考えずとも

 ほんとは生きていけるのに


 白い光が射している

 誰もいないリビングで

 ひどく静かなキッチンで

 料理をつくる

 そんな時間が幸福だ

 無心で手を動かしていると

 なにかに通ずる気がしてくる

 ひどく神聖な気持ちになる


 今日読んだ短編が好みだった

 話しの最後で

 柩に放たれた菫の花束が

 映像として残る午後

 キーホルダーのように

 あたまの片隅で揺れている

 

 今決める

 明日は朝から明るく生きる

 湧き出でた憂鬱を腹に仕舞う

 明日は絶対何にも負けない

 明日は朝から明るく生きる


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