花を羨む


 玄関の萩の花はまだ咲かない

 もう一方は夏の盛りに咲いていた

 人目につかない庭の隅で

 同じ花といえど

 それぞれ咲く時期が異なるらしい

 人間ばかり相手にしていると

 花の物言わなさに驚くことがある

 口に身を葬るというわたしたち

 口をもたないおまえたち

 違う生き物でありながら

 同じ季節をともに生きている

 不思議だ

 会ったことがあるひとも

 会ったことがないひとも

 同じ季節をともに生きている

 不思議だ

 そんなふうに思いを馳せて

 クッキーの生地をこねている

 今だけは花のように

 黙々と

 

 

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