第11話 町娘の新たな…?
あの学園祭から早数日。
私の日常はあまり変わらない。
ただ一つ、大きく変わったことと言えばランマント侯爵令嬢がこの町に来なくなったことだ。
「まぁ、普通は王子妃である侯爵令嬢がこんな下町に日常的にいることのほうがおかしいんだけどな。」
ライザはそんな素っ気ないことをいう。
確かにいないほうが普通だけど、これまで当たり前のようにいたからなんだか少し寂しくもある。
「なんだよ、俺と二人じゃ不満か?」
「そんなことないよ!ただ少し寂しいなと思っただけで。ライザと一緒にいられるのが一番に決まってるでしょ。」
あの告白からライザは少し甘くなった。
なんというか態度が。
分かりやすい好意を向けてくれるから私もうれしい。
デートを終え、
するとそこになんとも見覚えのある後ろ姿が窓からお店の中をのぞいていた。
「…ランマント侯爵令嬢?」
「!?ミモたん!?」
「え…。えっと、いかがなさいましたか?」
「ミモた…いえ、ミモザさん。これまであなた方には幾度と迷惑をお掛けしましたわね。そのことを謝りたくて。」
聞けば、あの学園祭の後王子殿下並びに王妃殿下より貴族令嬢として自覚ある行動を、とかなりこってりと絞られたらしい。
「私、以前もお話しした通り、前世の記憶があります。俄かに信じがたいことだと思うのですが、真実なのです。
その以前の記憶では、貴族社会というものがありませんでした。だから私自身が貴族として生を受けながらも、実感がありませんでしたの。
これまで王子妃教育も受けておりましたが、どこか他人事で。
だから殿下に”君は平民を不敬だからと首をはねても咎められない身分なんだ”と言われて目が覚めましたの。
侯爵令嬢として頭を下げることはできないのですが、私個人として、謝りますわ。ごめんなさい。」
「頭を上げてください。…私はあまり詳しく貴族社会のことはわかりません。でも確かに私たちのような身分の者の命はとても軽いです。
…うまく言えないんですが、ランマント侯爵令嬢が私たちのような身分の者を気に掛けてくださってとても嬉しかったです。
それに、ランマント侯爵令嬢が個人として接してくださるなら、ぜひお友達になりたいです。」
「いいんですの?」
「もちろんです。ランマント侯爵令嬢は私たちのことを知りたいと思ってくださっているのと同じように私たちも貴族社会のことをお聞きしたいです。」
「えぇ!えぇ!もちろんですわ!…ミモたん、いえミモザさんとお呼びしてもよろしくて?私のことはローリー…いえローザリーンと呼んでくださいませ。」
「あはは!わかりました。他の方がいらっしゃらないときにはローリー様とお呼びします。さすがに普段はローザリーン様とお呼びいたします。」
「ありがとうございます!!!」
地面に頭をこすりつけるような不思議な大勢でひれ伏すローリー様をなんとか宥めて、私は初めて貴族令嬢の友人ができたことにどこか浮かれてしまった。
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