第5話 貴族令嬢に後をつけられる平民って


普通であれば、平民と貴族なんて出会うことはない。

そもそも生活区域がちがうし、貴族はわざわざ下町で買い物もしない。

商人を家に呼びつければいいだけだから。

強いて言えば領地を持つ家なら視察とかはあるかもしれないけれど。


だから私たちはランマント侯爵令嬢とはもう会わないものだと思っていたのに。


「ねえライザ。もしかしてなんだけど。」

「そうだな…。多分ランマント侯爵令嬢で間違いないと思う。」


あの日、不思議な出会いを果たしたランマント公爵令嬢がなぜか最近下町によく現れるようになった。

自意識過剰でなければ、私たちの行動に合わせている来ている気がする。


「大丈夫か?ミモザ」


優しく頭を撫でてくれるライザ

あ、こんな事をされると…。


「こんなっ町中で急にっ!ありがとうございます!」


あぁ、まただ。

ランマント侯爵令嬢は私たちのところによく現れ、こうして私たちがなにかをする度に大きな声を上げる。でもそれだけで、大きな声を発する以外は何もしてこない。そう、何も。

なにもされないからまぁ、私たちは気にしないことにした。それになんだかランマント侯爵令嬢の反応が面白いからいいかなとも思っている。


「まぁ、大丈夫だよ。最初こそ驚いたけど。こう何度もあるとさすがに慣れてくるっていうか。」

「あんまり慣れていいものじゃないと思うけど、まぁミモザがそういうならいいか。」


確かによくあらわれるけど大概執事や護衛のような人に途中で連れられてかえっていく。

みていてそんなに楽しいものなのかと不思議な気持ちになる。


「そういえば、今度学園祭があるんだけど、ミモザ来るだろう?」

「え、いいの?確か以前は貴族や身内のみだけだったじゃない?」

「あぁ、なんでも今年からは一般の参加が許されるらしい。貴族だけじゃなくで学園には一般生徒もいるし、貴族と違って俺たち平民は恋人はいても婚約者ではないことが多いだろ?でもそれだと家族以外は学園祭には呼べないし…って。」

「そうなのね。行きたいけど、いいの?」

「ミモザに来てほしいんだよ。案内したい。」

「…ありがとう。」


私は学園に通っていないから他の人がどうとかわからないけど、家族ではない私を誘ってくれるのはライザにとって少なからず他の人よりも親しいと思ってもらえている証拠なのかな?と少し期待してしまう。


「はっ!もしかしてライミモ学園祭編!?…あの神エピを…あれを生で!?無理!そこまで考えていませんでしたわ!」


…相変わらず侯爵令嬢が不思議なことを言っている。

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