第4話 私とライザについて


私とライザは幼馴染であり腐れ縁。

お父さんがまだ男爵令息だった頃によく商会が家にきており、当時は見習いだったライザのお父さんと交流があったらしい。

そのつながりもあり、お互いの両親が仲が良く、小さい頃からライザとは仲が良かった。

小さい頃から一緒にいるからか、周りの友達にはよくからかわれた。


「ねぇ、ライザ。私たちって恋人?」

「…はぁ!?なんだよいきなり!」

「みんなにね?いつも一緒にいるなんて恋人同士じゃんって言われたの。でも友達と恋人の違いが分からなくて。だからお母さんに聞いたの。そしたら恋人はお互いが好きな人同士のことよっていうから。私、ライザのこと大好きだもん。つまり恋人同士でしょ?」

「…そういうことはもっと大きくなってからだ!」


その時はライザが真っ赤になって怒っているのが不思議だったけど、当時の私はまだ7歳で幼かったから知らなかったんだもの。許してほしい。

16歳になった私はさすがにもう恋人がどんなものなのかわかるから、気安くライザに大好きだから恋人ね!なんて言えないけど。

それに貴族令嬢もたくさんいる学園に通うライザだから、周りにはきっと綺麗な人やかわいい人がたくさんいるだろうから私なんて…。と一人で落ち込んでしまう。


「ミモザ?溜息なんてついてどうした?悩み事か?」

「ううん。なんでもない。ちょっと考え事してただけ。」

「そうか?それならいいけど。…そうだ、今日うちにミモザが好きそうな綺麗なハンカチが入ったんだ。だからほら、あげる。」


そういっていつもライザは私の好きなものをくれる。


「いつも悪いよ。」

「いいんだよ。代わりにまたミモザが作ったパンとかクッキーを持ってきてよ。」

「わかった。ありがとうライザ。」


優しく頭を撫でてくれるライザが、この先もずっと私の頭だけを撫でていてくれたらいいなと思ってしまう私は傲慢だろうか。


__________



「あぁ、ライザ帰ってきたか。どうだ?ミモザちゃんに渡せたか?」


にやにやとしながら父さんは帳簿を整理していた。


「…渡せたよ。」

「その顔はまた自分がミモザちゃんのために用意したって言わなかったな?お前なぁ、そろそろ素直に言えばどうだ?」

「できたら苦労してない。」

「全く…そんなんだからいつまでたってもミモザちゃん誤解してるんだぞ?」

「わかってるよ。」

「いいや、わかってないね。俺なんてなぁ___」


父さんはこの手の話になると長い。17にもなって親の馴れ初めなんて聞き飽きたしもう聞きたくもないけど、これに横やりを入れると今度は俺のことにまで飛び火してもっと話が長くなるから黙って聞き手に回る。


「___まぁ、お前たちはずっとそんな感じだから、なにかきっかけでもないとむずかしいだろうけどなぁ。ただまぁ…お互いにもっと素直になればいいのになぁ。」

「わかってるよ。でもミモザも同じ気持ちとは限らないだろ。

俺のことをただの幼馴染の優しい兄ちゃんくらいにしか思ってなさそうだし。

…明日も学校だし、そろそろ休むよ。父さんもあんまり遅くまで仕事するとまた母さんに怒られるぞ。」



部屋を出る俺を見ていた父さんが小さな声で「あんなにもお互い好きあってるのによく気が付かないよなぁ。明らかにミモザちゃんもライザにべた惚れだろうに。」なんて言っていたのに俺は気が付かなかった。

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