第32話 控室
弟子の少年たちの控室。
子喬と一緒に私は座る。
「つまりは、仙力の性質を理解し、その使う幅を広げる……」
「そう。それが、仙力を高めることにも結局つながると思う」
子喬は熱心な子だ。
私の力を見て、そこからどうすることが自分の力を活かすことに繋がるかを学ぼうとする。
きっと将来は、すごい仙人に育つに違いない。
西王母桃華である私が保証しよう!
「なるほどね。木を育てる力なんて、戦闘でどう役に立つのか分からなかったけれども、要は能力を使う者も考えかた次第ってわけだ」
子喬少年は、一生懸命に考え込む。
「子喬!」
子喬が名を呼ばれて振り返れば、そこには水月。
え、水月ってこの国の王様のような存在でしょ? こんな弟子の休憩室まで自分で来るの?
私は慌てて身を縮める。
目立たないように……見つからないように……
だって、あの国境での蚩尤騒ぎが水月の耳に届いているとしたら、私の仙力の痕跡から正体がバレてしまう可能性がある。
「はい! 水月様!!」
水月の姿を見て、慌てて子喬が立ち上がる。
「怪我はなかったか?」
「いいえ。大丈夫です」
「お前の他にもう一人,、子どもがいたと聞いたが?」
「そ、それは……」
子喬が戸惑っている。
私のことを話していいのか迷っているようだ。
今までこの国で見てきた様子から考えて、子喬達のような小さな仙人の弟子たちと水月の関係は良い。
水月は、尊敬されている。
だから、尊敬する水月に嘘をつくことが、子喬には心苦しいのだろう。
だが、本当のことを言えば、私は水月の前に突き出され、下手をすれば正体がバレることとなる。
――子喬に嘘をつかせるのは可哀想だ。
「はい。私でございます」
私は正直に名乗り出て、ゆっくりと立ち上がった。
水月の鋭い目が、私に向けられる。
「お前は……あの時の……ふうん。蚩尤は忽然と姿を消したと聞いたが……」
水月がニヤリと笑う。
これ、バレている?
仕方なかったとはいえ、やっぱりやり過ぎだったのだろうか。
「怪我は?」
「ありません……」
水月の目を欺くなんて、やっぱり無理だった?
最初から、長牙が言っていたように無謀な作戦だったのだろうか。
前世では、西王母を殺した水月だ。このまま、私をひっ捕らえて、また殺してしまうということも考えられる。
何か考え込んでいる水月。
私は、緊張して黙って立ち尽くす。
それを、子喬がオロオロと不安そうに見ている。
「お前、ついて来い」
水月にそう言われて、私は従うしかなかった。
心配する子喬を残して、私は水月の後をついて部屋を出た。
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